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2019.05.24更新

弁護士の市橋耕太です。
「働き方改革」が叫ばれて久しいですが、皆さんの職場では「働き方改革」は進んでいますか?
昨年成立したいわゆる「働き方改革関連法」によって、今年4月から色々な制度が変更されました。
重要なものとしては、「時間外労働の上限規制」と「有給休暇の取得義務」が創設されましたので、ご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf(時間外労働の上限規制)
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf(有給休暇の取得義務)
(いずれも厚労省HPより)

さて、2020年4月(中小企業は2021年4月)から施行される制度として、いわゆる「同一労働同一賃金」と呼ばれるものがあります。
これは、いわゆる非正規労働者と正規労働者の間に(賃金に限らず)不合理な待遇格差がある場合にこれを是正するものであり、「均等・均衡処遇」などと呼ぶのが正確です。
同様の規定としては、現在でも労働契約法20条というものが有期契約労働者と無期契約労働者との間の不合理な待遇格差を禁止しています。
均等・均衡処遇は、新しく創設されたいわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」に定められており、そのポイントは以下のとおりです。

① 基本給、手当、賞与、退職金等の賃金はもちろん、福利厚生などのあらゆる待遇が対象になります。

例えば、「食堂や保健室を使って良いのは正社員だけ」というようなルールがある場合には、不合理であると判断される可能性が高いです。

② 比較方法は、待遇全体を比較して不合理か否かを判断するのではなく、個々の待遇ごとに比較します。

例えば、パートのAさんは1日4時間勤務で、正社員のBさんは1日8時間勤務だとします。
勤務時間だけが異なり、職務の内容等は同じだと仮定します。
この場合に、Aさんは基本給10万円、職務手当5万円(合計15万円)で、Bさんは基本給25万円、職務手当5万円(合計30万円)だとします。
Aさんの勤務時間はBさんの1/2なので、賃金の総額も1/2ならしょうがないのでは、と感じてしまうかもしれません。
しかし、ここでは基本給と職務手当を別々に比較することになります。
そうすると、基本給を比較したときにはBさんはAさんの倍を超える基本給を受け取っているので、不合理な待遇差であると判断される可能性があるのです。
つまり、総額において均等・均衡がとれていればよい、ということにはならないのです。

③ それぞれの待遇の「性質や目的」に照らして、パートや有期の方の職務内容や異動の範囲、その他の事情と、正社員のそれらとの違いを比較して、不合理か否かを判断する。

ここでの待遇の「性質や目的」とはどういうことでしょうか。
例えば、現場作業員の方には「危険手当」が支払われていて、事務を行うパートの方には支払われていないとしましょう。危険手当はまさに危険な現場作業を行うからこそ支払われているのであり、勤務時間の違いによって区別しているわけではないでしょう。
そうすると、パートか否かではなく、実際に行っている業務の違いに着目した待遇差なので、必ずしも不合理とはいえないという方向に評価されることになります。

逆に、「皆勤手当」が有期・パートの方には支払われず、正社員の方のみに支払われている場合はどうでしょうか。
皆勤手当は、皆勤を奨励する趣旨で支払われるものですから、雇用期間の有無や勤務時間の違いによって支給の有無を区別する合理性があるとは基本的には考えられません。
このように、それぞれの待遇が、どのような性質を持ち、あるいはどのような目的で設定されているのか、ということに着目して不合理性を判断する必要があります。

以上のような均等・均衡処遇の規制は、派遣労働者の方にも適用されることになっており、派遣先の労働者との均等・均衡処遇が原則として求められることになります。

現在、労働契約法20条というものに基づいて、均等・均衡処遇を求める裁判が全国各地で行われています。
最近では、それまで有期の方には支払われていなかった退職金や賞与の支払いを命じる判決も出ており、非正規労働者の皆さんの待遇改善に光を与える成果が出てきているところです。
(退職金につき、東京高裁2019年2月20日判決、賞与につき、大阪高裁2019年2月15日判決)

自分の待遇が周りの社員と比べて低いのではないか、と感じた方は、ぜひお気軽にご相談ください。

以上

投稿者: 東京合同法律事務所

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