トピックス

2023.06.23更新

(5)防衛費の使い道

2023年度の予算では、ミサイル防衛能力と装備品の維持整備費に多くの予算が割かれています。ミサイル防衛能力はすぐに新しい技術に代わり、今後、予算が拡大するおそれがあります。装備品も維持管理に費用がかかるため、一度装備を拡大してしまうと今後も膨大な維持整備費が発生し続けることになりかねません。
そもそも、ミサイル防衛能力を持てば本当に安全になるのでしょうか。かえって東アジアの中で警戒心を高め、軍拡競争につながってしまうことが危惧されます。
具体的な使い道は次のとおりです。
・スタンド・オフ防衛能力 約1兆4000億円(5年で約5兆円)
アメリカの巡航ミサイル「トマホーク」400発 2113億円
・統合防空ミサイル防衛能力 約1兆円(5年で約3兆円)
国産のミサイル「12式地対艦誘導弾」改良開発・量産 1277億円
・領域横断作戦能力  約1兆6000億円(5年で約8兆円)
・持続性・強靭性   約2.5兆円(5年で約15兆円)
装備品の維持整備費 2兆0355億円(前年度の1.8倍)
弾薬の取得     8283億円(前年度の3.3倍)

(6)防衛費で代わりに何ができるか?
トマホーク1発あたりの費用(5億2800万円)があれば、90人規模の保育園(約2億5650万円)を2箇所つくることができると言われています。
また、2022年度の防衛費5兆円を教育費に充てれば、次のことができると言われています(2022年5月19日しんぶん赤旗)。
・子ども・教育の分野
0~2歳の幼児教育無償化     4889億円
3~5歳の給食費無償化       884億円
小中学校給食費無償化       4451億円
私立高校の学費無償化       6500億円
大学・大学院の学費無償化   3兆3000億円
(7)最後に
防衛費を増やすことについて、専門的な話がわからないので何となく賛成している方が多いかもしれません。しかし、現政権がやろうとしていることは日本を守ることにつながるのか疑問ですし、途中で予算が増えたり、予算が確保できなくなる事態も予想されます。
現政権に任せきりにせず、疑問を投げかけ、おかしいと思ったら選挙などを通じてしっかりと意見を伝えるのが大切です。

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弁護士 緒方蘭

 

投稿者: 東京合同法律事務所

2023.06.19更新

(3)どうやって防衛費を確保するのか?

政府は、増額分の4分の3は決算剰余金の活用と税外収入(下記①)、歳出削減(下記②)で、4分の1は増税で賄う(下記③)と説明しています。
① 2023年度は税外収入として約4兆6000億円を確保し、この中から防衛力強化資金として3兆3806億円が計上されています(今、国会で審議されている財源確保法案はこの予算確保のためのものです)
4兆6000億円の内訳は次のとおりです。
・外国為替資金特別会計から3兆1000億円
・財政投融資特別会計から6000億円
・国立病院機構(NHO)の積立金422億円
地域医療機能推進機構(JCHO)の積立金324億円
本来は病院職員の賃上げなどに使われるはずの積立金が防衛費にまわされています。
・新型コロナウイルス対策費から国庫に返納約4000億円
・商業施設「大手町プレイス」の売却収入  約4000億円
これらの金銭は本来、一般会計で使うものであり、それが防衛費にまわることで他の経費の財源が減り、新規国債の発行へつながりかねません。
 また、不動産の売却収入など一回限りの財源も含まれ、また、決算剰余金は額が安定したものではないので、安定してこの金銭を確保し続けることができるのか不明です。安定して確保できなくなった時は、増税をして国民にしわ寄せがいく、などということもあるかもしれません。
② 歳出削減で1兆円を確保。
③ 増税で約1兆円を確保することになっていますが、時期は「2024(令和6)年以降の適切な時期」で、決まっていません。
・法人税で、4~4.5%の付加税 約6000~8000億円
・たばこ税(たばこ1本あたり3円) 約2000億円
・復興特別所得税の約半分を防衛費にまわす 約2000億円
毎年の確定申告で納める復興特別所得税の約半分が防衛費に使われることになりました。本来の復興に使える金銭が減ります。また、復興特別所得税の徴収を延長することが見込まれ、実質的に増税につながる可能性があります。
(4)国債を防衛費に流用せざるを得ない
今までは国債の中で公共事業などに使うための建設国債は防衛費に充てない運用になっていましたが、2023年は初めて建設国債から4343億円を施設整備費や艦船建造費に充てることにしました。
また、直接防衛費に充てるものではありませんが、2023年度の予算では、赤字国債29兆0650億円を新規に発行予定し、年末には国債発行残高が1068兆円になる見込みです。対GDP比では世界1位の借金になります。
財政状況が健全ではない中で、果たして防衛費を大幅に増やしてもいいのでしょうか。

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弁護士 緒方 蘭

 

投稿者: 東京合同法律事務所

2023.06.16更新

(1)2023年の防衛費

2022年12月に出されたいわゆる安保三文書により、2023年度の防衛費は、6兆7880億円(前年度比+1兆4192億円)になります。2012年に第二次安倍政権が始まってから防衛費が増え続け、過去最高額を更新し続けています。この防衛費とは別に、後払いローンである後年度負担が7兆0676億円、防衛力強化資金3兆3806億円が計上されており、実際はもっと多額になります。
さらに、自民党は2022年4月、「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」において、防衛費を「対GDP2%」に増やす方針を示しました。「対GDP2%」の防衛費になると、防衛費は従来の2倍になり、日本はアメリカと中国に次ぐ世界3位の軍事大国になります。
(2)安保三文書による変更
2022年12月の防衛力整備計画では、5年間で43兆円の防衛費を計上していますが、その間に新規契約する装備品購入費で、2028年度以降にローンで支払う額が約16兆5000億円もあり、これも合わせると60兆円近くにまで増えるという指摘があります(東京新聞2022年12月31日)。
2027年度には年間の防衛費が11兆円にまで増える計画です。これは従前の国家予算の規模では「対GDP2%」、国家予算の1割に相当します。
 予算の使い道について、国会で質問が行われましたが、防衛省はなかなか全容を明らかにしませんでした。
何をどうするかという議論よりも、とにかく防衛費を「対GDP2%」に増やすとし、金額ありきで決めているのではないかという疑問があります。私たちの税金が使われるのですから、無駄のない使い道であってほしいです。
 予算の確保や私たちの生活への影響については、次の稿で詳しくお伝えします。
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 弁護士 緒方 蘭

投稿者: 東京合同法律事務所

2023.04.15更新

 思いがけず手術することになり、4月初旬から一週間ほど入院した。コロナ禍が少し落ち着き病室も多少空きが出てきたらしく、個室も空いているということだったので、奮発して個室を予約した。大学生のときに扁桃炎をこじらせて以来の入院だったが、当時の病室(このときは4,5人部屋だったと思う)とは雲泥の差で、とても快適だった。
久しぶりの入院で感じたのは、やはり医療の現場で働いている人たちの私たち患者に対する献身さ、そしてそれと比例するであろう仕事の過酷さだった。深夜1時ころ、そうっと部屋に入ってきて小さな懐中電灯で点滴を確認している看護師さんの姿は、幼いころ、風邪を引いて寝込んでいる私の水枕を深夜に替えてくれた母の姿と重なった。仕事とはいえ、こんな真夜中に患者の様子をひとりひとり確認してゆくのは心身ともにきついだろうな、私なんかにはとてもできないだろうな、と独り言ちながら寝入った。
コロナ禍が猛威をふるってから、エッセンシャルワーカーという言葉が巷で流行り言葉のように広がった。厳密な定義はないらしいが、重要な社会インフラにかかわる仕事、つまり、「それがなくては社会が成り立たない仕事」を意味するらしい。コロナ禍において医療従事者は、自らもコロナ感染による生命の危機にさらされながらも、患者が生き延びるために必要不可欠な存在として日々職務を遂行していた。その仕事に従事する者がいなければ生命が危うくなり、社会も成り立たないという意味で、医療従事者は文字どおりのエッセンシャルワーカーである。私も含め、世間はコロナ禍が少しずつ落ち着いてくるとその価値を忘れがちだが、自分が自由のきかない患者という立場になって、あらためて医療に従事する方々がエッセンシャルワーカーであることを実感した。
医療従事者以外にエッセンシャルワーカーとしてあげられるのは、運送業従事者、スーパー等の日用品食料販売業者、清掃業者、農林業従事者、製造業従事者などである。仕事の内容を考えれば、確かに「それがなければ社会が成り立たない」仕事に従事する人たちといえる。さて、それでは私たち弁護士はどうか。コロナ禍でいっとき裁判のほとんどが休止したとき、多くの弁護士がそのことを考えたのではないかと思う。しかし、コロナ拡大による自粛の雰囲気も緩んで人の行き来が再開し、裁判も徐々に再開され始めると、自分の仕事の存在意義など考えている暇も無くなっていた。今回入院して時間ができ、エッセンシャルワーカーの仕事と接して、あらためて自分が従事する弁護士という仕事について考えてみた。
詩人宮沢賢治の代表作として良く知られた「雨ニモマケズ」に、「北ニケンクワヤソショウガアレバツマラナイカラヤメロトイヒ」(北にケンカや訴訟があればつまらないからやめろと言い)という一節がある。賢治から見れば、ケンカと訴訟は同じような「つまらない」もので、やめるべきものと映っていたようだ。賢治にすればそんな「つまらない」訴訟を生業とする弁護士の仕事は同じように「つまらない」ものだろうし、それがなければ社会が成り立たない仕事とは、到底思えなかったに違いない。平和主義者で宗教にも傾倒していた賢治だからそう考えていたと言えなくもないが、経験的にいえば、今もほとんどの人たちは「自分は訴訟などと一生無縁だ」と考えているように思われる。つまり、今も弁護士の生業の一つである訴訟は、ほとんどの人たちの人生に関係のない、「つまらない」ものであって、「それがなければ社会が成り立たない」仕事などではない。確かに、コロナで数カ月裁判などなくても社会は普通に成り立っていた。混乱はほぼ無かったと言っていい。飛行中の機内で急病人が出てCAが「お医者様はいらっしゃいませんか?!」と叫ぶことはあっても、どこかで何かが起きて「弁護士はいらっしゃいませんか?!」と叫ばれることはまず無い。
要するに、弁護士の扱う業務は社会の存立にとって必要不可欠なものとは言えず、弁護士はエッセンシャルワーカーではない。
もっとも、弁護士がエッセンシャルワーカーではないからといって、卑下すべき存在というわけではない。「つまらない」争いごとに介入してお金を得るだけではなく、ときにはその知恵を使うことによって、強い者から理不尽にやられている弱い者を助けることもできる。そのとき弁護士の存在は、社会の中で少しだけ輝きを見せるのではないだろうか。入院の直前、私が生まれた年(1966年)に発生した事件で逮捕起訴され死刑が確定した袴田巌さんについて、再審(やり直しの裁判)が開始されるというニュースに接した。数十年にわたって死刑の恐怖のもとで生きてきた袴田さんを、どうにかして救おうと知恵を絞ってきた同僚、先達たちの努力に感服した。こういう仕事も弁護士の生業の一つであることに誇りと希望を持ちたい。たとえエッセンシャルワーカーと呼ばれることはなくとも。
弁護士 泉澤 章

投稿者: 東京合同法律事務所

2021.05.31更新

東京弁護士会の会員誌「LIBRA」6月号の「私の修習時代」というコーナーに当事務所の泉澤章弁護士の寄稿文が掲載されました。

タイトルは『交渉事は,きちんと下調べして望むべし』。93年に司法試験に合格し司法修習生となった泉澤弁護士とダジャレで有名な司法研修所事務局長(裁判官でもある)との一幕で、同年代の弁護士やLIBRA編集部で好評なようです。

↓PDFでお読み頂けます。

【LIBRA6月号】私の修習時代(https://www.tokyo-godo.com/asset/20210531LIBRA-Vol21No6.pdf)

投稿者: 東京合同法律事務所

2021.03.22更新

弁護士 荒井新二

 今年は例年にない開花である。20年前の3月、妻の逝った日も列島に早めの開花宣言が出されていた。
 闘病10年間の苦しいけれど覚悟のうえの、ある意味充実した生活の末の死であったから、焼場の煙突からゆらゆら立ちのぼる白煙を見て、妻もやっと肉体の業苦から解放されよかったと感じ、そう参列者に挨拶した。遺族として穏やかに死を迎えられた(と思っていた)。
 4月になり仕事上何かの考え事をして自宅の仕事部屋でウロウロ歩きまわっていた。その時、本当にいきなりと言う感じで、大声で私の口から妻の名前が飛び出した。妻のことをそのとき考えていたのではない。体の奥から出てきた叫びが妻の名前であった。狼狽した私は、余りのことにその場にへたり込んでしまった。
 それから数月後。港区議さんの案内で法律相談の会に個人のアパート宅に赴いた。手持ち無沙汰で小さな本棚を眺めていた。不在であったが住み主の老女(と思われる)の詩集が目に入った。私製本であったろうか。パラパラ捲ると「起承転結」という短詩があった。配偶者を亡くした後の心境と暮らし、その後の立直りが綴られていた。その時はそれまでのことであったが、以後折につけ詩が気になった。弁護士業務のなかで人の死にしばしば触れる機会が多い。遺族など関係者の生の感情の吐露に遭う。そんな時にあの詩が頭をよぎる。そういうことが何回か続くうち、そうだ、あのとき私の身体が精神に反抗し、バランスをくずしていたのだと気づいた。それから喪のことを考えることが多くなった。
 この世の中、近親者の喪失に直面し転び、悩みごとを抱く人は意外に多い。基本的にそれは宗教の問題、役割だとは思う。が自分の経験を混えて依頼者の方に「起承転結」の詩を援用しつつ喪の作業についての持論を話すと共感されることが少なからずあった。あくまで通常死等の場合であるが、読者のなにかの役に立てばと思い服喪について私の思うところを書きとどめておきたい。門外漢の無礼で勝手な振る舞いをお許し願いたい。

…死を見つめること。死と対峙すると言ったらよいか。現実に起きたことを認めること。死は圧倒的な事実の力で迫ってくる。死を否認したり軽視したりすることも人間的な反応であるが、背を向けて正対しないと強いリバウンドがある。死という重い(言い換えれば、どうしようもない)事実に圧倒されることがあっていい。自然なことだし人間的なことだ。必須の憂悶の過程と心得るべきだろう。リスク回避のためと思い、これに最低でも一年以上をかける積りでいればよい。

…承認。死を受け入れること。その人の死をわが身におさめていく、かなり長いゆっくりした孤独な道程。死を想像すること、死の前後を含め想定することは人間を他の動物から区別できる徴しとも言われる。人間界にしかない宗教もそこに源泉があるらしい。亡き人を忍び記憶のなかで一緒の時間を過ごす、そのことは愛する人の死を穏やかに受け止めることに確実につながっていく。この受容の過程である承の期間を早めに打ち切ろうとする方も少なくない。が、できるだけ焦らずゆっくりとこのリハビリの期間を慈しんで過ごすことが肝心なこと。

…起と承の期間が過ぎ傷は癒えていけば人間、放っておいても勝手に何かを始める。立ち上がり自ずから行動する。他人と交差する。2足歩行で移動することは高次な人間の本能。犬だって歩けば棒にあたる。あたれば局面が変わる。転換の方法は自己に誠実であれば様々な試みがあっていい。失敗したって、一からやり直すことがあっても、すべて自分のことで、他人様からあれこれ言われる筋合いも義理もない。昔の生活にただ戻ったと思うかもしれない。それはそれで結構なこと、そういう思念は喪の作業がうまく行った証である。が実際はただの復帰、復元ではない。死の前と後では周りの景色が確実に変わる。新しい死生観が芽生える。自己を恃む力さえあれば転は向こうからやってくる。

…結は結果、結論。起・承・転をうまくくぐり抜ければ、薄着であれ死生観を、身に纏うことになるから新しい自分になれる。喪の期間が特別な人には立派な成果をもたらすことがある。偉人伝説はかくて出来上がる。凡人である我々は劇的な成功を目指す必要なぞ無い。素焼きが透明の上薬をかけられて焼成し丈夫で美しい陶器となるように、薄着の死生観はその人を美しく見せる。昔は、生きることは死ぬことと見つけたり、とかなんとか言ったそうだ。しかし古風なサムライの高望みではなく現代ではサヨナラだけが人生だ、と軽く明るく受け止める方がいい。亡き人を心に生かし対話しながら生きる。結は喪の期間が終わってから待っているながい期間のはじまりである。

投稿者: 東京合同法律事務所

2020.10.09更新

弁護士 松島暁

 コロナ禍のために放送が中断していたNHKの連続テレビ小説『エール』が再開されました。
 前回のオリンピックで入場行進曲を作曲した古関裕而をモデルに、2020東京オリンピックに合わせた企画でした。残念ながらコロナ禍で延期(中止?)となってしまいましたが。
 ドラマでは少しずつ名前は変えてあるものの、実在の歴史上の人物を想い描かせてくれます。作詞家の村野鉄男が野村俊夫、歌手佐藤久志が伊藤久男、作曲家木枯正人が古賀正男、そして故志村けんが演じた小山田耕三は日本作曲界の大御所山田耕筰、柴咲コウの双浦環は三浦環をモデルとしていると思われます。ただ、三浦環は山田耕筰より年上で、東京音楽学校(現東京芸大)では三浦が山田を教えた関係にありました。志村けんと柴咲コウでは逆となっていますが。
 ちょうど先週あたりから戦時期を扱いはじめました。これまでの連続テレビ小説が戦争期を否定的に描くことが多かったのと比べると、今回の「エール」は予科練の生徒を採り上げるなど、少し変化が見られるような気がします。
 今週、来週にかけてどう展開していくのか、注目したいと思います。

投稿者: 東京合同法律事務所

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