トピックス

2019.06.11更新

弁護士の緒方です。
最近、単身の70代の女性の方が長期間にわたって多額の現金をだまし取られた事件についてご相談を受けました。
この方は、信頼していた方から良い投資信託の商品があると持ち掛けられ、数年間にわたって定期的に金銭を渡していました。
遺言書を作ろうとしたときに、預けたお金が銀行口座に存在していないことがわかり、詐欺に気づいたそうです。

高齢の方を狙う詐欺事件が後を絶ちません。
不安を感じていらっしゃる方のために、今回は弁護士による見守り契約をご紹介したいと思います。

最近、見守り契約(ホームロイヤー契約)という契約が増えています。これは、主に高齢者や障がい者の方が感じている将来の生活や財産管理等に関する不安を解消するために、法律相談や財産管理などを通じて継続的な支援を行う弁護士を選任するものです。個人の顧問弁護士のようなものです。
見守り契約を結んでおくことで、弁護士が財産関係でおかしい点がないか確認することや、個人の方が弁護士に気軽に相談することができるようになります。

依頼者の方々の状況やニーズに応じて、①見守り、②財産管理、③任意後見契約の3つの契約を自由に選択できます。

まず、①の見守り契約は、1~3か月に一回など定期的にご自宅に伺って安否を確認し、必要な時(ご入院時など)に支払いを代行することができます。
②の財産管理契約では、①の見守りに加えて、通帳や印鑑をお預かりし、預金や年金の管理を行い、各種支払いを代行することをいたします。
③の任意後見契約は、将来、依頼者の方の判断能力が不十分になった場合に備えて契約し、判断能力が低下した段階で、予め指定した弁護士に任意後見人として財産管理を行ってもらうというものです。成年後見制度では、近親者や裁判所が指定した方が代理人になりますが、任意後見契約では判断能力が低下する前にご自身の意思で任意後見人や契約内容を決めておくことができます。なお、判断能力が低下した時点で別途、裁判所が任意後見監督人をつけることになります。

自分らしい老後を安心して過ごすために、見守り契約は有効だと思います。ご興味のある方はぜひ一度ご相談ください。

 

投稿者: 東京合同法律事務所

2019.06.06更新

弁護士 上原公太

 別居あるいは離婚によって、一旦、子どもと離れて暮らすと、離れて暮らしている親(非監護親)は、以後、子どもと会って親子として話をしたり、時にはキャンプや遊園地に出かけたりして交流すること(法律用語ではこれを「面会交流」といいます)ができなくなるのでしょうか。

 そうではありません。もし、子供をもつ夫婦が不仲となり、別れて暮らすことになったとしても、子供にとっては、それぞれが、父(親)、母(親)であることに変わりはありません。離れて暮らしている親(非監護親)と交流を持つことは、一般的には子の人格的成長にとって望ましいと考えられているため、離れて暮らしている親(非監護親)と子は面会交流という形で交流を持つことが予定されています。

 交流する方法としては、実際に直接面会して交流することが原則です(直接交流)が、電話やメールでのやりとり、手紙や写真を送る方法等、間接的な交流が行われる場合もあります。

 面会交流をいつ、どのように行うかは、父と母が二人で話し合って決めることができればよいのですが、必ずしもうまくいかないことがあります。特に、父と母の間で感情的な対立が激化している場合には大きな問題が発生します。
 子どもと一緒に暮らしている親(監護親)は離婚後の生活の立て直しに必死であることが多いですが、その際、離婚過程の心理的な傷つきが強いほど、監護親の方は、子と非監護親との接触により、非監護親が子を手なずけたり、監護親に逆らわせるのではないかといった不安、あるいは、ひょっとしたら監護権の変更すら目論んでいるのではないかと、猜疑的になったり、敵対的態度に陥ることがあります(子の面会交流を実施するにあたって、監護親が非常に強い精神的なストレスにさらされていることについては、弘前大学出版会「高葛藤紛争における子の監護権」に詳しく書かれています。)。
  両親の間で対立が生じている場合には、子供としてはどちらの親も好きなのに、対立する両親の間に挟まれて、つらい状況に陥ることがよくあるので、留意する必要があります。この点、ベテランの調停委員でも、人によっては、紛糾した調停の状態から何とか脱したいと考えて、「子に決めさせよう」という発言をされる方もいますが、成人に近い子であればともかく、そうではない場合に両親の感情的対立によるつけを子に負担させること、両親の対立の狭間に子を立たせることの是非をよくよく考える必要があると思われます。
 父母間の対立が激しくなるとふたりだけで決めることは難しくなるので、家庭裁判所の調停で、調停委員会(裁判官1名、調停委員2名)を介して、話し合って決めることになります。調停では通常、2名の調停委員がそれぞれの話を交互に聞く形で進められます。場合によっては裁判官が出席することもあります。
 調停でも話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所調査官による調査、当事者双方の主張、立証などを踏まえて、最終的には、裁判所が審判(裁判の一種です。)で決めることになります。

 面会交流を行うにあたって定める内容としては、次のようなものがあります。
   ・頻度、回数(例えば月1回など)
   ・日時(例えば、第2日曜日、10時から19時までなど)
   ・子の引き渡し方法
   ・面会以外の交流方法
   ・調整、連絡の方法
   ・条件(お互いに悪口を子に聞かせない等)、その他
 
 父と母の間で、感情的対立が生じている場合には、できるだけふたりの間でのその都度の調整、折衝の必要がないように、頻度や日時だけでなく、引き渡しの場所や方法なども含めできるだけ具体的に定めておく方がよいかもしれません(ただ、具体的に定めると、その分、もし修正、変更が必要になった場合に、前もって相手に変更をお願いしなければならなくなるので、それがデメリットになる場合もあります。)。

投稿者: 東京合同法律事務所

2019.05.24更新

弁護士の市橋耕太です。
「働き方改革」が叫ばれて久しいですが、皆さんの職場では「働き方改革」は進んでいますか?
昨年成立したいわゆる「働き方改革関連法」によって、今年4月から色々な制度が変更されました。
重要なものとしては、「時間外労働の上限規制」と「有給休暇の取得義務」が創設されましたので、ご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf(時間外労働の上限規制)
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf(有給休暇の取得義務)
(いずれも厚労省HPより)

さて、2020年4月(中小企業は2021年4月)から施行される制度として、いわゆる「同一労働同一賃金」と呼ばれるものがあります。
これは、いわゆる非正規労働者と正規労働者の間に(賃金に限らず)不合理な待遇格差がある場合にこれを是正するものであり、「均等・均衡処遇」などと呼ぶのが正確です。
同様の規定としては、現在でも労働契約法20条というものが有期契約労働者と無期契約労働者との間の不合理な待遇格差を禁止しています。
均等・均衡処遇は、新しく創設されたいわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」に定められており、そのポイントは以下のとおりです。

① 基本給、手当、賞与、退職金等の賃金はもちろん、福利厚生などのあらゆる待遇が対象になります。

例えば、「食堂や保健室を使って良いのは正社員だけ」というようなルールがある場合には、不合理であると判断される可能性が高いです。

② 比較方法は、待遇全体を比較して不合理か否かを判断するのではなく、個々の待遇ごとに比較します。

例えば、パートのAさんは1日4時間勤務で、正社員のBさんは1日8時間勤務だとします。
勤務時間だけが異なり、職務の内容等は同じだと仮定します。
この場合に、Aさんは基本給10万円、職務手当5万円(合計15万円)で、Bさんは基本給25万円、職務手当5万円(合計30万円)だとします。
Aさんの勤務時間はBさんの1/2なので、賃金の総額も1/2ならしょうがないのでは、と感じてしまうかもしれません。
しかし、ここでは基本給と職務手当を別々に比較することになります。
そうすると、基本給を比較したときにはBさんはAさんの倍を超える基本給を受け取っているので、不合理な待遇差であると判断される可能性があるのです。
つまり、総額において均等・均衡がとれていればよい、ということにはならないのです。

③ それぞれの待遇の「性質や目的」に照らして、パートや有期の方の職務内容や異動の範囲、その他の事情と、正社員のそれらとの違いを比較して、不合理か否かを判断する。

ここでの待遇の「性質や目的」とはどういうことでしょうか。
例えば、現場作業員の方には「危険手当」が支払われていて、事務を行うパートの方には支払われていないとしましょう。危険手当はまさに危険な現場作業を行うからこそ支払われているのであり、勤務時間の違いによって区別しているわけではないでしょう。
そうすると、パートか否かではなく、実際に行っている業務の違いに着目した待遇差なので、必ずしも不合理とはいえないという方向に評価されることになります。

逆に、「皆勤手当」が有期・パートの方には支払われず、正社員の方のみに支払われている場合はどうでしょうか。
皆勤手当は、皆勤を奨励する趣旨で支払われるものですから、雇用期間の有無や勤務時間の違いによって支給の有無を区別する合理性があるとは基本的には考えられません。
このように、それぞれの待遇が、どのような性質を持ち、あるいはどのような目的で設定されているのか、ということに着目して不合理性を判断する必要があります。

以上のような均等・均衡処遇の規制は、派遣労働者の方にも適用されることになっており、派遣先の労働者との均等・均衡処遇が原則として求められることになります。

現在、労働契約法20条というものに基づいて、均等・均衡処遇を求める裁判が全国各地で行われています。
最近では、それまで有期の方には支払われていなかった退職金や賞与の支払いを命じる判決も出ており、非正規労働者の皆さんの待遇改善に光を与える成果が出てきているところです。
(退職金につき、東京高裁2019年2月20日判決、賞与につき、大阪高裁2019年2月15日判決)

自分の待遇が周りの社員と比べて低いのではないか、と感じた方は、ぜひお気軽にご相談ください。

以上

投稿者: 東京合同法律事務所

2019.05.21更新

弁護士 泉澤章

日本版「司法取引」の施行開始から1年

 昨年(2018年)6月1日,可視化制度の導入や盗聴法の拡大などとともに,2016年改正刑訴法の“目玉”として新設された日本版「司法取引」が,いよいよ施行された。

 新たに導入されたこの日本版「司法取引」制度は,他人の犯罪事実を取引材料にして自らの不起訴や刑の減免を得るという「捜査公判協力型」の司法取引であり,「密告型」の司法取引というべきものである。他人を密告したことで利益を得られるということは,そのような利益にあずかるために無関係の他人を巻き込んでしまう危険性がある。日本でも,これまで捜査機関によって事実上行われてきた「闇取引」によって,数多くの冤罪が発生してきた(「日本版『司法取引』を問う」2015年旬報社刊参照)。

 日本版「司法取引」の施行開始から1年が経過した今,現実にどのような事件に「司法取引」が利用されているのだろうか。そして,導入にあたって懸念されてきた新たな冤罪の危険性は,完全に払拭されたのだろうか。

適用事例第1号-MHPS事件

 2018年7月20日,東京地検特捜部は,三菱日立パワーシステムズ(MHPS)によるタイでの火力発電所建設に絡み,同社元幹部3人を不正競争防止法違反(外国公務員に対する贈賄)で在宅起訴するとともに,同社については,東京地検特捜部に対して捜査協力をした見返りとして不起訴とした。このMHPS事件が,日本版「司法取引」適用事例の第1号とされている。

 しかし,そもそも「司法取引」を導入した目的は,法制審でもさんざん議論されたことだが,組織犯罪における黒幕処罰の必要性だったはずである。それゆえ,適用が想定される事例としてあげられていたのが,いわゆるオレオレ詐欺における末端の「受け子」「出し子」に恩典を与えて,実際に指令を下して多額の利益を貪っている黒幕を処罰するというものであった。ところが,MHPS事件は,要するに,現地の役人に賄賂を贈って事業継続をしようとした役員個人を法人自ら告発し,検察に捜査協力をすることで,法人そのものが恩典を得るというものである。法人処罰を逃れるため,その法人の事業遂行のため動いてきた個人の処罰に法人が協力するというのであるから,「トカゲの尻尾切りのために制度が利用された」との批判も,あながち嘘ではない。いずれにしても,当初の制度目的が黒幕処罰であったことからすれば,適用事例第1号がそれとはまったく違った目的のもとでの適用となったことは間違いない。

 なお,MHPS事件で起訴された3人のうち,2人は起訴内容を認め有罪判決が言い渡されたが(東京地裁2019年3月1日判決),もう1人は無罪を主張し分離公判で争っており,今後,「司法取引」における合意内容の信用性が,初めて公判で争われるものと思われる。

適用事例第2号-カルロス・ゴーン氏の事件

 そして,日本版「司法取引」適用事例第2号とされているのが,2018年11月以来,世間でも大きく注目されている日産元会長のカルロス・ゴーン氏の金融商品取引法違反・特別背任事件である。同氏の事件については,最初の起訴の後,なかなか保釈が通らず(その後弁護人の交代,保釈決定,保釈後の再逮捕),身柄拘束の長期化,人質司法の現状は国際的にも強く批判されているが,同氏の起訴内容を裏付ける証拠として,日産社員と検察との「司法取引」による合意があったことも注目されている。

 もっとも,カルロス・ゴーン氏の事例については,未だ公判の目処はたっておらず,誰とどのような「司法取引」がなされたのかなどの事実関係が明確になっていないことから,現時点でその内容を評価することは難しい。しかし,同氏も弁護人も起訴内容については全面的に否認しており,今後開かれる公判での攻防については,その進展を注視してゆく必要がある。

日本版「司法取引」の今後と批判的視点の必要性

 日本版「司法取引」が制度化されたとき,筆者は,「法務検察としては,制度の運用が現実化すれば,まずは財政経済事犯のなかでも,比較的件数の多い組織的詐欺や貸金業法違反などの一般事件から“成功例”を出して,根付かせて行くことを考えているのかもしれない」としていた。しかし,これまでに起訴された2つの適用事例を見る限り,検察(特に特捜部)が制度の定着を計ろうとしていることは間違いないものの,法制審などで典型例としてあがっていたオレオレ詐欺のような一般事件ではなく,大企業を舞台とした大規模事件に限定しているようにもみえる。

 もっとも,このような適用傾向が今後も継続するのかは定かでない。現時点では,世論の多くが「司法取引」の問題性を意識せず,大規模事件における検察側立証の要として用いられたことについて,むしろ好意的ですらある(元検察官の郷原信郎氏は自らのブログで,MHPS事件に「司法取引」が適用されたことに“違和感”があると述べつつも,法人処罰を従来のように個人処罰の副次的なものと捉える従来の考え方から,個別に捉える考え方へと変化する契機になるのではないかと述べ,一定評価しているようである。)。

 しかし,密告型「司法取引」による巻き込み型冤罪発生の危険性を完全に払拭する有効な手立ては存在しない。特に,司法取引によって「売られた」側の弁護人は,「売った」側の弁護人の同意というある種の“お墨付き”を得た供述を弾劾しなければならず,極めて困難なたたかいを強いられることになる。

 さらに,新たな制度の有用性は,簡単に危険性へと転嫁することを忘れてはならない。大規模な経済的事件への適用「成功例」の賞賛は,今後適用される可能性のある別種の事件への無批判な適用を許しかねない。その別種の事件が,市民として身近に感じられない大企業の事件などではなく,民主的な組織にまで対象を拡げることも十分ありうる。

 私たちは,今後も日本版「司法取引」が,新たな冤罪を生む危険性をはらんだ制度として存続していないか,常に批判的視点をもって,検証し続けてゆくことが必要であろう。

(2019年5月21日)

投稿者: 東京合同法律事務所

2019.04.08更新

2019年4月8日 弁護士 荒井新二

 「忖度発言」の塚田一郎国土交通副大臣が4月5日に辞任した。辞任理由を問われ「大きな会合のなかで雰囲気に呑まれ」「盛り上がるようなことを考えていた」と無内容な言い逃れにつとめたが、辞任に釈然としていないのは不満げなその顔貌からよく見てとれよう。安倍首相や麻生外相に「忖度」し、その地盤の「下関」「北九州」をつなぐ超大型道路プランを国の直轄調査事業に引き上げ4000万円の国家予算をつけさせたことを自画自讃したのに、頼みの綱の両人からも遂に見離されるなんてとても信じられない、という顔つきであった。腑に落ちないと言う内心が私には透けて見える。

 マスコミは茂木敏充経済再生相の「忖度という、今一番使ってはいけない言葉を使った」と穿った見方を伝えているが、そのような政治的言語エラーの問題ではなかろう。ことの核心は、ほぼ10年前に棚上げされた「下関北九州道路」計画が今回、新規に国の直轄事業にされ調査予算もつけられたこと、そのプラン再浮上が安倍総理と麻生副総理の存在を抜きに考えられないことにある。さらに言えば、地元で「安倍・麻生道路」とも言われるこの道路計画を所轄する国交省大臣が公明党の石井啓一氏という問題もある。副大臣は国家行政組織法上「閣僚の命を受けて」「政務を処理」し、「閣僚不在の場合その職務を代行する」と定められている。基本的に副大臣といえども大臣を補佐する権限しかない。国交省大臣の閣僚ポストはこの間、ながく公明党の指定席になってきた。副大臣が自分の頭越しに「忖度」を国政の表舞台にのせたと言うならば、一番怒るべきは石井啓一大臣や公明党ではないのか。しかし彼らから忖度発言問題を自分や自党との具体的な関係でとらえた発言は寡聞にして知らないが、考えてみればこれも奇妙である。

 だが私がもっとも驚いたのは安倍首相の国会答弁であった。

 4月4日風邪のため自宅で伏せっていたとき、たまたま自宅のテレビで旧知の仁比聡平議員(弁護士)の国会質問を見た。仁比質問は安倍首相に、この道路プランの早期実現に向けて地元等議員有志から出された要望書の筆頭に安倍氏の氏名が書かれていたことを問題にしていた。これに対し安倍首相は「今まで知らなかった」と答え、総理大臣として自分に陳情する立場にはないと平然と応じた。

 この弁明に心底、私は驚いたのである。後者の立場の問題は、そのとおりであろう。しかし、だからと言って前者の「知らなかった」とは必ずしも直結しない。たしかに自分が知らない間に、特定の集団に名前を勝手に使われることはあり得ることである(私だって過去にあった)。しかし、そのことを自分が知った時には、その経過と真意等を究明して所要の措置を講ずる、
-そうすることが普通であろう。

 安倍氏が実際に自己の氏名冒用を知らなかったとしても、その後の道路プランの現実化およびその進展について、客観的に責任を負わなくていいとは到底言えない。
 その氏名冒用は、第三者に当該人物が賛同していることを誤信させる行為である。本人の氏名を勝手に使うのは、その盛名を冒用することであって、第三者に誤信を植え付け、誤った(全部ないし一部の)判断を誘因するものと言える。その氏名が帯有する社会的な信用をそのように悪用されたことを知った者は、誤用をただちに告知し、第三者の誤信を払拭しなければならない。信用・信頼こそ社会の基礎であり、健全な相互の信頼は今日、社会の基本的なインフラとなっている。汚れなき相互信頼の構築をめざすことこそ重要な社会的な規範と言ってよい。

 安倍氏はこの要望書を目にした以上、ただちに陳情書作成の経緯と影響などを調べ、事実でなければただちに自分が賛同した事実のないことを内外に明らかにして要望書作成者に対し抗議し、訂正を求めてしかるべきである。そうしなけば要望書は一人歩きもするし、第三者の誤信と誤判断はそのまま残ってしまう。この種の誤用と誤信の経過があったうえで、この「下関北九州道路」プランが実現に向けて既に動き出したいうのであれば、とりあえず全面的な白紙にいったんは戻すのが当然であろう。この問題は、重要な論点を多く含んでおり、国会でおおいに論議してもらいたいし、我々も今後十分に注視していかなければならないと思う。

投稿者: 東京合同法律事務所

2019.02.26更新

弁護士 水口瑛葉

 『弁護士さんということは、裁判で「異議あり!」って言ったりしているんですか?』

これ、私の職業を知った方から、よく尋ねられる質問です。

皆さん、弁護士が「異議あり!」と法廷で述べている場面をどこで見かけるのでしょう。やはり、テレビドラマなどの影響でしょうか。最近も、弁護士をテーマにしたテレビドラマが多く放送されているのを目にしますね。過去にも多く製作されてきていますし、ドラマチックな展開にしやすく、人気が高いのかもしれません。

さて、実際の法廷がテレビドラマほどドラマチックか、と問われると、大変残念ながら、そうではありません、とお答えすることになります。

たとえば、テレビドラマなどでは、民事事件の期日においても、法廷で弁護士が長々と自身の考えを述べる場面が多くみられます。

しかし、実際の期日は、書面のやりとりが中心です。事前に主張を記載した書面を裁判所に提出しておき、当日の期日は当該書面について不明点があれば確認する程度で、基本的には、次回期日までに行うべき双方の宿題を確認し、次回期日の日程を調整して終わり、ということが多いのです。1時間近くかけて横浜や埼玉の裁判所に行くこともありますが、期日自体は数分で終わってしまうなどということもしょっちゅうです。

ときどき、事件の相手方ご本人が、弁護士をつけずに自身で裁判の対応をされる事件に出会うことがあります。相手方ご本人は、期日の場で、裁判官に口頭で自身の見解を初めから説明することができると思われて裁判所に来られるのですが、実際にはそのようなことは想定されていないため、裁判官から「あなたの見解を書面にして、証拠とともに提出してください」と言われてしまい、拍子抜けしてしまう、という場面を時々見かけます。実際の裁判の対応には慣れています、などという奇特な方はまずおられないので、ドラマなどでしか情報を得られませんから、無理もないことです。

一方で、証人尋問や本人尋問の期日では、証人や本人に対し、主尋問や、反対尋問が行われます。口頭で質問をして、証人や本人が答えるという一問一答形式で、実際の期日も、テレビドラマで行われる尋問場面に比較的近いと思います。

ただし、尋問期日当日に、相手方が全く想定していない決定的な証人が登場し、相手方弁護士及び相手方本人が驚愕し、法廷内がざわつく、という展開は、実際には起きません。実際の裁判手続では、尋問はあらかじめ証人として誰を呼ぶかを決めて証人尋問の申請をすることになっており、尋問期日の前に、尋問をする人数や尋問時間などを決めて尋問期日を迎えるためです。

また、テレビドラマのクライマックスで、弁護士が相手方本人に対して核心を突く質問をして、相手方本人が開き直って「そうです、そのとおりです・・・!」などと言って真実を話し始めるといった展開をよくみかけますが、現実ではあり得ません。(そのような展開があれば、反対尋問をしている弁護士はとても嬉しいでしょうが、現実はそう甘くはありません。)

ちなみに、刑事事件は、民事事件よりも、期日での口頭のやりとりが多いので、皆さんが傍聴に行かれる場合には刑事事件の方が見応えがあるかもしれません。

さて、冒頭の『「異議あり!」と実際に言うのか?』との質問に対しては、私は、『「異議あり!」とは通常言いません」とお答えしています。現在弁護士は4万人近くいるそうですから、そのように言う方がいらっしゃらないとは限りませんが、少なくとも、私は「異議あり!」と言っている方をお見かけしたことはありません。実際には、単に「異議。」と言ったり、「今の部分は~(異議の理由)」と特に「異議」という言葉を使わないで実質的に異議の理由を言って終わらせてしまう、ということが多いのではないかと思います。

そうそう、そういえば、他にも・・・・と続けたいところですが、そろそろ読者の方から、ごちゃごちゃ言うな、ドラマはドラマとして楽しく見ればいいんだ、これだから弁護士は理屈っぽくて困る・・・などという声が聞こえてきそうなので、今日はここまで。

投稿者: 東京合同法律事務所

2019.01.09更新

弁護士 馬奈木厳太郎

憲政史上初めて国民主権を謳った日本国憲法

 新年おめでとうございます。
 今年は、憲法が施行された1947年から72目の年となります。日本の憲政史上、初めて国民主権を謳った日本国憲法。私たちは、何のために主権者となったのか、年頭に際し、そのことを改めて確認したいと思います。

 日本国憲法の前文は、次の一文から始まります。
「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」

「主権が存することを宣言し、この憲法を確定する」とありますが、その前には「戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し」とあります。「決意」したのは、もちろん「日本国民」です。そして、注目すべきは「戦争の惨禍が」「政府の行為によつて」引き起こされたとの認識が示されていることです。
 つまり、アジア太平洋戦争という惨禍が政府の行為によって引き起こされ、その政府は天皇主権の下での政府であった、したがって戦争を二度と繰り返さないために、国民を主権者とした――この一文は、こうした歴史認識とその教訓を示しているのです。

戦争を起こす主体と平和を創る主体

 また、前文には、次のような一文もあります。
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」

 戦争を引き起こすのが政府であるとの認識を示したうえで、憲法は「われらの安全と生存」を「平和を愛する諸国民の公正と信義」に求めるとしています。重要なのは、平和を愛する「諸国」や「諸政府」ではなく「諸国民」、つまり世界の平和を愛する諸々の人々だとしている点です。政府ではなく、国境を超えた市民が平和の創り手だとの認識が示されています。

問われているのは戦後の原点であり、私たちの主権者らしさ

 日本国憲法が、国民主権を謳ったのは、戦争の惨禍を起こさないため。そして、国民は戦争を起こさないため平和を愛する諸国民との信頼関係を構築する―これが、私たちが主権者となった原点です。
 改憲論議も行われているところですが、その核心は立憲主義と平和主義をめぐる点にあります。戦争を起こさないために主権者となった私たちが、戦争をするために改憲するのか。私たちは何のために主権者となったのか、まさに主権者としての自覚が問われています。

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.12.13更新

 わたしたちの事務所では、年に2度ほど「事務所学習会」を開いていて、哲学や歴史、科学など法律書以外をテキストに使っておこないます。先日の学習会では宮本常一『忘れられた日本人』(岩波文庫)がテキストでした。
 そのなかに、「自分の持ち山が知らぬ間に官林になったり庄屋の山になったり、法律を知っていればどんなこともできる」であるとか「弁護士は三百代言といい法律をたてにとってウソばかり言ってみんなからお金をまきあげた」などというわたしたち弁護士にとって耳の痛い記述がでてきます。もちろん法律を知っていれば何でもできるわけではなく、多くの弁護士がウソをいってお金を巻き上げているものでもないのですが、人々の法律や弁護士に対するある種の感情を表現しているかと思います。法律や訴訟が巾をきかせていたり、弁護士の活躍する社会なんてとても幸せな世の中とは思われない、というのが弁護士であるわたしの個人的な思いではあります。
 かつて「司法『改革』」が声高に叫ばれた時期がありました。「社会のすみずみまで法の支配を」とか「司法の容量をもっともっと」などの掛け声のもと、法科大学院の新設や弁護士の大量増員が実行されました。法曹・弁護士に対する需要はもっともっと増えるに違いない、そうでなくてはならないとばかり、わたしが弁護士になった頃と比べ弁護士数は倍増しました。
 古典派経済学の用語に「セイの法則」というものがあります。供給は自ら需要を作りだすというもので、商品は作りさえすれば、価格調整機能がはたらき、売れ残りはいずれなくなる、供給はそれ自身の需要を創造するというものです。弁護士も大量に供給すれば、それに見あった法的な需要が生まれるといったおめでたい意見もありましたが、実際にはまったくそうはなりませんでした。
 わたしたちの住む社会は、ファーストフード店のコーヒーで火傷したのは、熱すぎるコーヒーを販売した店の責任だとして損害賠償請求訴訟を起こすような社会ではなかったということでしょう。この国の人々は、「弁護士を大量に必要とする不健全な社会はいらない」というまっとうな結論を出しました。その結果、わたしたち弁護士は激しい競争にさらされることになりました。

弁護士 松島暁

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.11.27更新

弁護士 前川雄司

 専門は何ですかと聞かれることがあります。なかなか答えにくい質問です。何が専門の基準かわからないからです。しかし、依頼するかどうか決めるうえで専門が何かを聞きたいのはわかります。そこで、私はこういう事件を担当してきましたとか、こういう事件を担当していますとお答えすることにしています。専門と言えるかどうかはわかりませんが。
 ちなみに、現在、私が担当している事件や業務は次のとおりです。
   再開発、不動産、借地借家、建物明渡、共有物分割、
   遺産分割、遺言作成、遺言執行、遺言無効確認、遺留分、
   財産管理、任意後見契約、民事信託、離婚、金銭債権、
   交通事故、固定資産税、マンション管理組合
   法律顧問業務(全国保険医団体連合会、東京歯科保険医協会、東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部、日本勤労者山岳連盟のほか、複数の会社や個人からご依頼いただいています。)
 弁護士になって今年で35年になりますが、その35年の積み重ねが現在の事件や業務になっています。

 六法や判例を暗記しているのですかと聞かれることもありますが、私は暗記していません。法律や判例は必要に応じて調べればいいからです。
 では、弁護士の仕事の中で重要なことは何でしょう。この質問に対する答えは弁護士によってかなり違うかもしれません。
 私は、一つはコミュニケーションが重要と思っています。依頼者とのコミュニケーション、相手方やその代理人弁護士とのコミュニケーション、裁判官とのコミュニケーション、関係者とのコミュニケーション、場合によっては、行政とのコミュニケーション、マスコミとのコミュニケーションなどです。
 そうしたコミュニケーションは、対話・電話・弁論や文書・ファックス・メールなどで日常的に行っていますが、言葉の正確で明確な使用はもちろん、言語表現の真実性・妥当性・誠実性といったものの積み重ねによって信頼関係や連帯を醸成することができれば、ともに問題の解決を目指す可能性を切り開くことができます。
 もう一つは、分析力です。必要な情報や資料を収集して分析し、正確な見通しを立てて説得力のある主張や解決策を組み立てる力です。有利なものだけでなく不利なものも含めて分析することが重要です。
 他にもいろいろあるとは思いますが、何を重視するかに弁護士の個性が現れるように思います。

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.11.27更新

2018年11月27日 弁護士 洪美絵

 日本では、1896年以来、成年年齢は20歳とされてきました。
 選挙権が18歳に引き下げられたことは報道等でご存じのことと思いますが、今年6月に民法も改正され、2022年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられることになりました。

 成年年齢が18歳に引き下げられると、どんなことが起きるのでしょう。

 未成年者(現在は20歳未満)には、「未成年取消権」が認められています。勧誘の方法がよくなかった、説明に間違いがあった、などの事情がなくとも、未成年者は契約を取り消すことができるのです。
 そのため、業者側も未成年者を勧誘のターゲットにはしません。苦労して勧誘しても、後で契約を取り消されてしまうリスクを嫌うからです。
 現在の統計では、成年(現在は20歳以上)になると、相談件数と被害金額が格段に大きくなっています。

 成年年齢が18歳に引き下げられると、この「未成年取消権」は18歳未満の場合しか行使できなくなります。18歳という年齢は多くの方はまだ高校3年生でしょう。成年年齢が18歳に引き下げられるのは4年後とはいえ、高校生でも勧誘のターゲットにされる可能性が高くなるのです。

 成年年齢の引き下げには色々な問題点がありますが、まずはこの点にご注意いただき、お子さんと、お金の使い方やローンを組むことの意味など、具体的に話し合っていただければと思います。

【法律トリビア】
 一般的に「成人年齢」という方が多いようですが、法律用語としては「成年年齢」が広く使われています(民法第4条)。このような例では、他に遺言(一般的には「ゆいごん」と読みますが、法律用語としては「いごん」と読みます)や競売(一般的には「きょうばい」と読みますが、法律用語としては「けいばい」と読みます)などもあります。

投稿者: 東京合同法律事務所

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