トピックス

2021.10.01更新

弁護士 鈴木眞

 毎年9月は防災月間であるとか。大正12年の関東大震災や、台風が到来しやすい時期であること等に由来して制定されたようです。今年もまた、台風情報に関するニュースが世上を騒がす時期となり、本コラムも、台風16号(「ミンドゥル」というそうです。)の日本接近が警戒されるという状況下で書いています。皆様、どうか十分注意を払ってお過ごしください。

 こうした防災ということですが、現在では、各自治体がハザードマップを整備し、浸水被害警戒区域や土砂災害警戒区域などを区分して、地域住民に対し、非常時の警戒や避難等を呼びかけています。
 他方で、防災体制が強化され、災害に対する備えが充実すればするほど、災害を受けたのは備えを怠った側が悪いのだという単純な自己責任論に結びつき、天災が人災に安易に転化してしまうことを危惧するコラムを一昨年書かせてもらいました。その想いは今も変わりはありません。
 昨今の異常気象によって招来される激甚災害なるものに対して、それを防ぐために住民がその生活を根本から変更するなど事実上不可能だと思うからです。

 さてそんな折、本年7月に発生した熱海の土石流災害について、遺族らが総額32億円を超える損害賠償の訴えを提起したとの報道に接しました。被告となったのは、土石流の起点となった場所の新旧土地所有者と、違法な盛り土造成を行ったとされる不動産管理会社のようです。
 違法な盛り土が原因となって土石流災害が起きたのだとすれば、それは人災であり、その違法状態を惹起した者に対して責任追及を行うということは、自然の流れではあります。違法な盛り土ということは災害発生直後からマスコミ等で叫ばれていましたから、いずれこうした事態になるであろうことは、少しでも法律的素養のある者であれば、容易に予見しえたものであったろうと思います。

 ただ、違法な盛り土→土石流の発生→近隣住民の被災・被害という因果の流れを立証することはそれほどたやすいことではありません。この点を立証するためには、地質学的知見や気象学的知見等々を駆使し、科学的観点から違法な盛り土によって土石流が発生し、住民が被害を受けたことを解明することが必要になると思われます。上記の原告団・弁護団の方々も、こうした因果関係の立証に向けて今後多大な労力と負担を注いでいくことになると予想されます。
 そしてまた、こうした多大な労力と負担によって仮に事態の解明に至れたとしても、次は、32億を超えるような賠償責任を一個人や一企業が果たしうるのかという問題に直線せざるを得ないことになると推測されます。

 こうしたことに鑑みると、人災だと強調することは、因果関係の立証が至極となって、あるいは、加害者とされる者の資力によって、被害者救済が立ち後れることになるのではないかという懸念が拭えません。
 昨今の異常気象が地球温暖化という人類の活動の所産の故であることに思いを致すとき、それによって発生した激甚災害の結果もまた、人類が共同して引き受けるべきものではないかと思わずにはいられません。
 その意味では、異常気象に基づく激甚災害が発生した場合には、まずは公的な事後救済がしっかりと図られなければならないのではないかと考えます。災害発生に何らかの寄与をした者がいる場合に、その者に対して何らかの求償を行うことがありうるとしても、その者に対する責任追及の可否や賠償額の如何によって、被災者が受けられる保護に差異や区別が設けられることになるのは、厳に避けるべきものでしょう。
 今や異常気象による被災・犠牲は、いつ、どこで、誰が被ったとしても不思議ではありません。被災者ということの立場の互換性、そういったものに基礎を置く法制度の整備を望んでやみません。

以上

一昨年の記事はこちら:【コラム】予見可能性についての一考(台風被害に関連して)

投稿者: 東京合同法律事務所

2021.09.06更新

弁護士 坂勇一郎

 今年(2021年)2月から8月にかけて、独立行政法人国民生活センターのウェブ版「国民生活」(注)に、資金決済法についての解説を連載しました。
 資金の支払いや送金を「決済」(資金決済)といいます。決済に関する法律としては、資金決済法と割賦販売法があります。
資金決済法は、商品券や電子マネー等の「前払式支払手段」、銀行以外の事業者が送金を行う「資金移動」について規制しています。これらは、支払いや送金の前に、または、支払いや送金の際に、決済業者にお金を払い込むものです。
 割賦販売法は、クレジット等の後払いの決済を規制しています。

(決済法制の概要)

 支払手段法律
前払い 前払式支払手段 資金決済法
即時払い 銀行振込等
資金移動
銀行法
資金決済法
後払い クレジット 割賦販売法

 

 連載は、これらのうち、資金決済法について、解説をするものです。
 なお、資金決済法は暗号資産(仮想通貨)についても規制しており、第6回、第7回では、暗号資産(仮想通貨)についても解説しています。
 決済については、情報通信技術の発達によりさまざまなサービス提供が可能となってくる中、規制が決済手段によって異なっており、中には、規制されないサービス提供もあることから、利用者にとって非常に分かりにくいものとなっています。
 利用者が安心・安全に支払いや送金が行うことができるよう、利用者保護の観点からの規制の横断化が望まれます。

(注)web版『国民生活』は、消費生活問題に関心のある方や相談現場で働く方に、消費者問題に関する最新情報や基礎知識を分かりやすく伝えるものです。

 

坂弁護士執筆の『国民生活』記事(PDF)が↓リンクからお読みいただけます。

2021年2月号(No.102)
【知っておきたい資金決済法】第1回 決済法制と資金決済法の概要

2021年3月号(No.103)
【知っておきたい資金決済法】第2回 資金移動業(1)

2021年4月号(No.104)
【知っておきたい資金決済法】第3回 資金移動業(2)

2021年5月号(No.105)
【知っておきたい資金決済法】第4回 前払式支払手段(1)

2021年6月号(No.106)
【知っておきたい資金決済法】第5回 前払式支払手段(2)

2021年7月号(No.107)
【知っておきたい資金決済法】第6回 暗号資産(1)

2021年8月号(No.108)
【知っておきたい資金決済法】最終回 暗号資産(2)

 

投稿者: 東京合同法律事務所

2021.08.11更新

2019年から相続法制は大きく変わってきています。
今回は、みなさん気になる、遺言についてです。

『遺言を書きたいけど、公正証書遺言ってちょっと大げさで、作るのにも気がひける。』

でも、大丈夫。
自筆証書遺言なら、自分で書くこともできます。
ただ、これまで、自筆証書遺言は、原則、全部を手書きしないとダメでした。
でも、大丈夫。
2019年1月13日からは、遺言につける財産目録だけはパソコンで目録添付したり、通帳のコピーを添付したりすれば良くなったのです。
ただ、せっかく自分で遺言を書いても、それが誰かに隠されてしまったり、あることに気付いてもらえないと困りますよね。
でも、大丈夫。2020年7月から、法務局が自筆証書遺言を預かってくれる「自筆証書遺言書保管制度」が始まりました。自分で書いた遺言書を法務局が預かってくれるので、これなら安心できますし、自分で保管する自筆証書遺言と違って、裁判所で検認してもらう必要もありません。

これは便利な制度になるかな。私もそう思っていましたが、公開された書式や制度の詳細を見ると、なかなかに面倒です。また、相続発生後、「遺言書情報証明書」という検認済みの遺言書に該当するものを取得するには、結局、相続人全員の戸籍や住民票などを揃えて法務局に提出すなければならず、かなり煩雑な事務作業が必要になります。
結局、この段階で専門家の力を借りなければならないことになりがちです。
また、そもそも、法務局では、遺言書の書き方など、作成に関する相談には一切応じられないとしていますので、適切な遺言が作成できる保証はありません。
そうであれば、最初から、弁護士に相談して、公正証書遺言で作成するほうが、確実な遺言が残せるのかな、と思いました。
あなたに合った内容や方法で、どんな遺言を作成するか。
まずは、弁護士にご相談ください!

弁護士 加納小百合

【遺言以外の相続制度改正記事はこちら】もし、夫が、妻が亡くなったら?民法改正と弁護士を味方に、相続を賢く乗り切りましょう!

投稿者: 東京合同法律事務所

2021.07.14更新

 皆さんは、「精神障害者」というとどのような人々を思い浮かべるでしょうか。精神保健福祉法という法律では、「精神障害者」とは、「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者」と定義されており(同法5条)、法的には幅広く、知的障害のある人も発達障害のある人も認知症の人も「精神障害者」に含まれます。また、精神疾患の中でも、統合失調症やアルコール依存症など、その病状・対応が大きく異なる疾患も種々存在しています。
 このように、精神障害者といわれる方々は身近に存在するのですが、本コラムでは、精神障害者の方が罪を犯して捕まってしまった場合の起訴前の弁護活動について、特に注意を払う必要がある点を述べたいと思います。

1 そもそも精神障害であることに気づく
 精神障害者の方が逮捕されてしまった場合、弁護士は警察署に接見に行きます。言動が支離滅裂であったり、精神状態が不安定であることが一見して分かる場合には、気づきやすいのですが、そのようなケースはむしろ少数です。会話をしてみて一見して障害がないと思われる人についても、前回の接見時の内容をほとんど覚えていない、受け答えは問題なくできているが1つのことに固執する傾向が強い、簡単な言葉が理解できないといったことから障害に気づくことができたりもします。
 このように弁護人としては、漫然と会話をするのではなく、その人に合った適切なコミュニケーションをとることが求められ、精神障害に気づくということがまずは求められます。

2 責任能力に問題があるケース
 障害の程度が重く、責任能力に問題があると判断される場合には、その点が加味されれば不起訴に傾くケースも多いことから、弁護人としては精神鑑定を求めることになります。この場合、鑑定により身体拘束期間が長くなってしまう可能性もあるので、鑑定を求めることについて本人に十分に説明し納得を得る必要があります。

3 福祉機関との協働について
 釈放後の生活環境が調整されていることは、起訴猶予処分にすべき理由の1つになります。精神障害者の方の場合は、生活環境の調整にあたって、本人の有する精神障害に対する支援体制を具体的に整え、資料化していく必要があります。このような生活環境を整えるためには弁護士だけでは困難な場合が多く、社会福祉士や精神保健福祉士などの福祉専門職と協働して、更生支援計画という釈放後の本人の希望にかなった支援計画を作成する等の環境調整を進めることが望ましいです。

4 医療観察法対象事件で不起訴になる場合
 検察官は、殺人・放火・強盗・強制性交等・強制わいせつ・傷害にあたる行為をした者が、精神疾患が原因で不起訴になった場合、入院をさせて治療を行わせる必要があるとして、医療観察法当初審判申立をすることができます(医療観察法2条2項1号、33条1項)。この申立てがされると、2カ月の鑑定入院が実施され、強制入院による治療をする必要があるかどうかという点を裁判所で審理することになり、身体拘束期間が長期化してしまいます。
 弁護人としては、医療観察法による治療の必要性が明らかにないとして、検察官に対して主張することになります。実際、知的障害や認知症といった、一般的に強制入院による治療の効果が薄いとされるケースでも医療観察当初審判の申立てがなされることもあります。
 なお、医療観察審判では、弁護士は、付添人という形で手続きに関わることになりますが、この点については、後日別のコラムで述べたいと思います。

5 医療観察法非対象事件で不起訴になる場合
 医療観察法の対象でない事件でも、本人の病状によっては、検察官が通報し、措置入院がなされる可能性があります(精神保健福祉法24条)。措置入院となった場合には、入院先を選べず、自由に外出できないといった不利益が予想されます。
 弁護人としては、捜査段階で、本人が前向きに治療を受ける意思があること、任意入院先を確保すること等で、強制入院が不要であることを主張することになります。
 なお、措置入院になってしまった場合には、弁護士は、患者の代理人として、退院請求を申し立てたり、処遇改善を求めたりすることができますが、この点についても後日、別のコラムで述べたいと思います。

6 ご家族や支援者の皆さまへ
 このように、精神障害者の起訴前の刑事弁護活動は、留意すべき点が多くあるため、弁護人としては、その人の特性に合った活動をすることが求められます。精神障害者の方のご家族や友人は、私選で弁護人を選ぶ際には、上記のような適切な配慮をしてくれるような弁護士を選ぶ必要があります。
 私は、弁護士でも馴染みの薄い医療観察審判の付添人にも複数回選任されており、精神障害者の方の法的支援にも積極的に取り組んでおります。また、当事務所は、刑事事件に取り組んできた歴史的経緯があり、複数回無罪を獲得するなど、実績は豊富ですので、ご家族やご友人で精神障害者をお持ちの方が逮捕されてしまった場合には、ぜひ当事務所にご相談ください。
 なお、刑事事件に限らず、当事務所では幅広い分野に対応していますので、何かお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。

弁護士 小河洋介

投稿者: 東京合同法律事務所

2021.06.25更新

交通事故被害に遭った場合、まず、警察に連絡する必要があります。人が怪我をしていた場合はもちろん、物損にとどまった場合でも連絡しましょう。
また、加入している任意保険会社にも交通事故に遭ったことを報告する必要があります。

交通事故によって受傷した場合は、その後、治療を終えたり、症状の改善が期待できない状態になると交通事故による損害が確定することになりますので、本格的に損害賠償請求交渉を開始することになります。
治療をしても症状が残存している場合には、後遺障害に該当するかどうかの認定手続きを受け、後遺障害に該当するとされると、認定された等級に応じて、後遺障害に関する損害(逸失利益、慰謝料等)の賠償も併せて請求していくことになります。

相手方(加害者)の保険会社の担当者から示談の提案がなされることがありますが、保険会社の内部の基準に従った内容で提案されると思われます。法的に適切な内容の示談案になっているかも含め、予め(治療中のうちに相談されることが望ましいです。)弁護士に相談されるとよいでしょう。弁護士は過去の裁判例や裁判基準などに照らして、もし裁判であれば認められる可能性のある賠償額などを推定し、保険会社から提案された示談案が法的に妥当なものかなども含め、総体的な助言をすることができます。その上で、裁判基準と比較して、低いレベルの内容であった場合などは、裁判基準での損害賠償請求交渉等を依頼することができます。

休業損害や後遺障害の問題、事故態様(過失相殺割合)の問題、賠償額の妥当性の問題などでお困りの方は、お気軽にご連絡をいただければと思います。
必要に応じて交通事故鑑定人と連携しての対応等も可能ですので、ご希望の方はご相談ください。

弁護士 上原 公太

投稿者: 東京合同法律事務所

2021.06.11更新

 昨年の新型コロナウイルスによる一斉休校、緊急事態宣言以降、家庭内暴力(以下「DV」といいます。)が増えていると言われています。
 内閣府の調査では、2020年度のDVの相談件数は19万30件で、前年度の1.6倍に増加したと言われています。

 実際に私のところに来る夫婦間の暴力に関する相談も、緊急事態宣言の時期に自宅にいて夫婦で口論になって暴力に発展したというものや、10万円の特別給付金をめぐって夫婦間の暴力事件になったというものなど、大なり小なりコロナウイルスが関係しているものが多い印象です。

 正当防衛にあたる場合は別ですが、どんな理由であれ、暴力は許されない行為です。しかし、DVを証明するには、証拠が必要になります。

 DVの被害を受けたら、まず、警察を呼ぶことをお勧めします。警察に相談をして、記録に残しておくことが大切です。
 また、DVによって怪我をしたら医療機関を受診し、診断書をもらっておきましょう。診断書には誰にどんな方法で暴力を振るわれたかを書いてもらいましょう。
 さらに、できれば、録音または録画をして、暴力をふるわれた時の状況ややり取りを記録しておきましょう。写真は音声や動きがわからないため、あまり有効ではありませんが、ないよりはマシです。
 とてもつらい作業ですが、記憶が残っているうちに、当時の状況ややり取りをメモして残しておくと後で便利です。直後にラインで誰かに報告している内容でも証拠になる場合があります。

 もしお子さんなど家族の誰かの前でDVをした場合は、家族に対する面前DVにもなります。目撃した家族がどんな反応だったのか記録しておくべきです。

 DV加害者と会うのがつらい場合は、DV保護命令を申立て、接近禁止命令などを出してもらうことが考えられます。
 また、離婚したい場合は慰謝料請求の根拠になります。
 ご自身の被害や手続について知りたい方はぜひ一度ご相談下さい。

 また、お一人で悩んでいてつらい方は、全国共通のDV相談窓口(内閣府)よりそいホットライン 0120-279-889 (つなぐはやく)にご連絡することをお勧めします。

 暴力や抑圧のない社会にしていくために、私たちもお手伝いできればと思います。
 どんな小さなことでも気兼ねなく当事務所にご相談ください。

弁護士 緒方蘭

投稿者: 東京合同法律事務所

2021.04.05更新

弁護士 泉澤章

 歴代政権が各界において功績、功労があった国民をねぎらう目的で例年4月中旬に開催してきた「桜を見る会」をめぐっては、一昨年から、安倍前首相の在任中開催された同会及びその前夜祭について多くの疑惑が指摘されてきた。国費を使っての同会に安倍前首相をはじめとする自民党議員の後援会員や、詐欺商法で問題となったジャパンライフの関係者らを招待したこと、国会でその問題を追及されそうになるや招待者名簿を“破棄”してしまったこと等々、どれもこれも国民に対して到底弁明できようもない行為であった。その中でも、同会の前日に安倍前首相後援会が都内有名ホテルで開催した前夜祭については、出席者の負担分の一部を前首相側で補填し、そのことを隠蔽するため、政治資金収支報告書に記載しなかったのではないかという疑惑が持ち上がった。私たち弁護士は、そのような首相の違法行為を座視するようなことは、法の支配と民主主義の見地から許しがたいとして、昨年2月、「『桜を見る会』を追及する法律家の会」を立ち上げ、安倍前首相ら関係者を告発する運動を展開し、12月には1000通に近い告発状が東京地検特捜部に提出されるに至った。

 私たちの告発を受けて、東京地検特捜部は捜査に入り、昨年12月24日、政治資金規正法違反(不記載罪)で、当時の安倍前首相の公設秘書が略式起訴された。同日、安倍前首相は、政治資金規正法違反でも公職選挙法違反でも不起訴処分となったが、日本に限らず世界中がコロナ禍の惨状に見舞われ、様々な活動が抑制された中でも、私たち法律家の会の活動は一定の前進をみることができた。

 ここまでは、昨年マスコミにも大きく取り上げられた。世間では、この東京地検特捜部による処分によって、「桜を見る会」前夜祭をめぐる問題はすべて「終結した」と思われているかもしれない。しかし、「桜を見る会」前夜祭をめぐる問題は、これですべて終わったわけではない。

 たしかに公設秘書の略式起訴は、その人物が仕えていた安倍前首相の「政治的責任」を糺すことにつながることは間違いない。実際、安倍前首相は国会において、自らの関与について長々と弁明せざるを得なくなった。ただし、安倍前首相自身の「法的責任」について、このままでは不問に終わってしまいかねない。それでは、当初私たちが目指したような、首相の違法行為を糺し、法の支配貫徹と民主主義の回復という目的が実現しないことになる。

 そこで私たちは今年に入って議論を重ね、さらに報道記事などの分析を深めたうえで、東京地検特捜部の不起訴処分は納得できないとして、今年2月2日、審査を申し立てた。同申立ては、すでに略式処分を受けた元公設秘書についても起訴されなかった2015年分の収支報告書不記載を含めるとともに、前首相及び第一次告発時に明らかになっていた関係者、それに昨年11月にマスコミで報道された際にはじめて発覚した前首相の資金管理団体「晋和会」の関係者(12月に第二次告発をして直後不起訴処分となっていた。)らも被疑者とした。

 そうしたところ、本年3月3日、元公設秘書の起訴されなかった2015年分の不記載罪について、東京第五検察審査会は、「不起訴不当」の議決をした。

 時効が近づいた2015年分だけを早期に判断したものであるが、すでに明らかとなっている証拠資料によれば、不起訴とした検察官の裁定は「一般市民の感覚では納得できない」(同議決書2~3頁)という内容であった。一般市民感覚から法の是正を求める内容であって、「起訴相当」でなかったとはいえ、高く評価できるものといえよう。

 今後、本丸ともいえる安倍前首相の政治資金規正法及び公職選挙法違反の不起訴についての判断が出る。その結果を現段階で予測するのは難しいが、国会答弁で118回も虚偽答弁をしてきたとされる安倍前首相が、何のお咎めもなしに政治活動を続けることは到底許されない。

 日本国憲法下における法の支配と民主主義を護るため、私たちの活動はこれからも続く。

(2020年4月5日脱稿)

投稿者: 東京合同法律事務所

2021.01.21更新

弁護士 山﨑大志

「弁護士にこんな些細なことを相談してよいのでしょうか?」
 相談を受けていると、このようなことをおっしゃる方がいらっしゃいます。
 回答としては、全く問題ありません。どんどん相談してください。
「こんな些細なことか」どうかは、弁護士に相談してみないと分かりません。もしかしたら、「こんな些細なこと」だと思っていたことが、相談せずに放っておいたら、一刻を争う大問題に発展してしまうおそれもあります。そのようなことにならないように、悩みがありましたら、早めに相談した方が良いです。
 もちろん、何の問題もないことかもしれません。その場合も、弁護士に相談してみたら、何の問題もないことが分かって安心できるので、相談した方が良いです。
 そもそも悩んでいらっしゃることが、「弁護士に相談すべき内容か」どうかについても、弁護士に相談してみないと分からないのです。そのような悩みを持った時点で、弁護士に相談すべきです。
 みなさまは、体調が優れないときには、医者に診てもらうことがあると思います。大した病気ではないかもしれませんが、医者に診てもらったら、大きな病気かもしれません。
 体調が悪ければ、医者に診てもらうように、お困りごとがありましたら、お気軽に弁護士にご相談ください。

投稿者: 東京合同法律事務所

2021.01.05更新

1 名誉毀損に関する事件というのは古くからあったわけですが、昔は、本や雑誌といった書籍での表現が問題になることがほとんどでした。最近でも、たとえば、爆笑問題の太田光さんが、大学を裏口入学したとする週刊新潮の記事で名誉を毀損されたと主張し、新潮社を被告として民事上の損害賠償請求を行っていることがニュースになっています。

 もっとも、最近は、SNS等におけるインターネット上の表現に関する名誉毀損が問題になる案件のご相談を受けることが多くなりました。インターネット上の書き込みは、多くの人が手軽に社会に向けて発信できるツールですが、その分、だれもが被害者にも加害者にもなり得ます。

 

2 名誉毀損とは

1)要件

名誉毀損とは、刑法上は、「公然と事実を摘示し,人の名誉を毀損した者は,その事実の有無にかかわらず,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」と定められています(刑法230条)。民法上の不法行為として認められる名誉毀損の要件も、公然性という要件が求められていない以外は、基本的に刑法上の要件と同様です。

2)事実の摘示

「名誉の毀損」というのは、人の名声や信用といった社会的評価を、事実を摘示して低下させることをいいます。

 たとえば、誰かが「〇〇という芸能人って、馬鹿っぽいよね」とだけSNSで書き込んだとしましょう。これは具体的な事実を摘示しているわけではなく、その人に対する書き込みをした人の主観的評価・感想ですので、名誉毀損の対象にはなりません。

こうした事実の摘示を伴わずに他人を侮辱する行為は、刑法上は侮辱罪(刑法231条)の問題になります。民法上も、名誉毀損とはなりませんが、事実の摘示を伴わない表現行為で人の社会的評価を低下させた場合も、不法行為が成立し、損害賠償が認められる可能性があることには注意が必要です。

3)真実であっても名誉毀損にあたりうる

また、勘違いされている方も多いのですが、名誉毀損というのは、摘示された事実が真実であっても成立する場合があります。本当のことを書いているのだからいいだろう、というものではありません。確かに、表現の自由の重要性から、公共性、公益性のある事項については、真実性が証明されるか、真実性の証明がなくともその事実を真実であると信じたことに相当の理由があると認められる場合に免責される場合もありますが、この免責の要件が満たされるハードルはそれなりに高いと思っていただいた方がよいと思います。

 皆さんが、誰かがインターネット上に書き込んだ内容を鵜呑みにして、それを前提として自身でも書き込みをしたり、誰かの情報をリツイートしたりした場合、仮にもとの書き込みが名誉毀損にあたるものであった場合には、皆さんの書き込みも名誉毀損に該当する可能性が高くなります。

 

3 名誉毀損の被害にあったときの注意事項

インターネット上の表現が名誉毀損に該当すると認められた場合、損害賠償と同時に、記事や投稿の削除を請求することが可能です。

ただし、インターネット上の投稿は匿名で行われる場合が多いので、損害賠償や記事・投稿の削除を請求するには、まずは投稿者を特定する必要があります。この投稿者の特定は、サイト管理者やプロバイダに対して、プロバイダ責任制限法にもとづいて発信者情報開示を求めなければなりません。

 しかし、この裁判所を利用した発信者情報の開示の手続きは、①まずはサイト管理者に対し発信者情報開示請求の仮処分の申立を行い、発信者に関するIPアドレス等の開示を受け、②これをもとに経由プロバイダに対して発信者情報開示請求を行い、プロバイダ契約者である発信者に関する住所や氏名等の情報の開示を受ける、という手順を踏む必要があります。

 注意が必要なのは、経由プロバイダの通信履歴は短いところですと3か月程度の保存期間となっている点です。投稿から時間が経ってしまうと、発信者の特定が不可能になってしまいますので、早めに動く必要があります。

 3か月というと、皆さんが投稿を発見する時期によっては、実際に準備に使える期間がほとんどないということもありますので、法的手続をとる可能性を少しでも考えるようでしたら、すぐにご相談いただくことをお勧めします。

弁護士 水 口 瑛 葉

投稿者: 東京合同法律事務所

2020.12.25更新

 新型コロナウイルスによって売り上げの減った会社で働く方から、社長が整理解雇を検討しようとしているという相談を受けました。
 整理解雇は通常の解雇よりも厳しく判断され、①人員削減の必要性、②解雇回避努力が尽くされたこと、③人選の合理性、④手続の相当性が必要になります。
 この②の解雇回避努力の判断に当たっては、会社がきちんと新型コロナウイルス関係の助成制度を利用し、それでもなお雇用の維持が難しい場合であるかどうかが問題になると考えられます。
 この相談では、社長に整理解雇の要件がとても厳しいことを伝え、職場の労働者で協力し合って社長と交渉したほうがいいと伝え、実際に、整理解雇の動きはなくなりました。早めに相談していただいてよかったです。
 会社から解雇の話が出たら、解雇の話が進む前に、まずはすぐに弁護士にご相談ください。
 もし解雇になった場合は、解雇予告手当は受け取らずに、まずご相談ください。

弁護士 緒方蘭

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 ・新型コロナウイルスの影響で、賃金減額されたり解雇を言い渡されたりしたら?
 ・一方的な給料3割減額は認められる?-売上が減少した飲食店従業員のケース-【コロナ相談事例】

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投稿者: 東京合同法律事務所

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