トピックス

2019.04.08更新

2019年4月8日 弁護士 荒井新二

 「忖度発言」の塚田一郎国土交通副大臣が4月5日に辞任した。辞任理由を問われ「大きな会合のなかで雰囲気に呑まれ」「盛り上がるようなことを考えていた」と無内容な言い逃れにつとめたが、辞任に釈然としていないのは不満げなその顔貌からよく見てとれよう。安倍首相や麻生外相に「忖度」し、その地盤の「下関」「北九州」をつなぐ超大型道路プランを国の直轄調査事業に引き上げ4000万円の国家予算をつけさせたことを自画自讃したのに、頼みの綱の両人からも遂に見離されるなんてとても信じられない、という顔つきであった。腑に落ちないと言う内心が私には透けて見える。

 マスコミは茂木敏充経済再生相の「忖度という、今一番使ってはいけない言葉を使った」と穿った見方を伝えているが、そのような政治的言語エラーの問題ではなかろう。ことの核心は、ほぼ10年前に棚上げされた「下関北九州道路」計画が今回、新規に国の直轄事業にされ調査予算もつけられたこと、そのプラン再浮上が安倍総理と麻生副総理の存在を抜きに考えられないことにある。さらに言えば、地元で「安倍・麻生道路」とも言われるこの道路計画を所轄する国交省大臣が公明党の石井啓一氏という問題もある。副大臣は国家行政組織法上「閣僚の命を受けて」「政務を処理」し、「閣僚不在の場合その職務を代行する」と定められている。基本的に副大臣といえども大臣を補佐する権限しかない。国交省大臣の閣僚ポストはこの間、ながく公明党の指定席になってきた。副大臣が自分の頭越しに「忖度」を国政の表舞台にのせたと言うならば、一番怒るべきは石井啓一大臣や公明党ではないのか。しかし彼らから忖度発言問題を自分や自党との具体的な関係でとらえた発言は寡聞にして知らないが、考えてみればこれも奇妙である。

 だが私がもっとも驚いたのは安倍首相の国会答弁であった。

 4月4日風邪のため自宅で伏せっていたとき、たまたま自宅のテレビで旧知の仁比聡平議員(弁護士)の国会質問を見た。仁比質問は安倍首相に、この道路プランの早期実現に向けて地元等議員有志から出された要望書の筆頭に安倍氏の氏名が書かれていたことを問題にしていた。これに対し安倍首相は「今まで知らなかった」と答え、総理大臣として自分に陳情する立場にはないと平然と応じた。

 この弁明に心底、私は驚いたのである。後者の立場の問題は、そのとおりであろう。しかし、だからと言って前者の「知らなかった」とは必ずしも直結しない。たしかに自分が知らない間に、特定の集団に名前を勝手に使われることはあり得ることである(私だって過去にあった)。しかし、そのことを自分が知った時には、その経過と真意等を究明して所要の措置を講ずる、
-そうすることが普通であろう。

 安倍氏が実際に自己の氏名冒用を知らなかったとしても、その後の道路プランの現実化およびその進展について、客観的に責任を負わなくていいとは到底言えない。
 その氏名冒用は、第三者に当該人物が賛同していることを誤信させる行為である。本人の氏名を勝手に使うのは、その盛名を冒用することであって、第三者に誤信を植え付け、誤った(全部ないし一部の)判断を誘因するものと言える。その氏名が帯有する社会的な信用をそのように悪用されたことを知った者は、誤用をただちに告知し、第三者の誤信を払拭しなければならない。信用・信頼こそ社会の基礎であり、健全な相互の信頼は今日、社会の基本的なインフラとなっている。汚れなき相互信頼の構築をめざすことこそ重要な社会的な規範と言ってよい。

 安倍氏はこの要望書を目にした以上、ただちに陳情書作成の経緯と影響などを調べ、事実でなければただちに自分が賛同した事実のないことを内外に明らかにして要望書作成者に対し抗議し、訂正を求めてしかるべきである。そうしなけば要望書は一人歩きもするし、第三者の誤信と誤判断はそのまま残ってしまう。この種の誤用と誤信の経過があったうえで、この「下関北九州道路」プランが実現に向けて既に動き出したいうのであれば、とりあえず全面的な白紙にいったんは戻すのが当然であろう。この問題は、重要な論点を多く含んでおり、国会でおおいに論議してもらいたいし、我々も今後十分に注視していかなければならないと思う。

投稿者: 東京合同法律事務所

2019.02.26更新

弁護士 水口瑛葉

 『弁護士さんということは、裁判で「異議あり!」って言ったりしているんですか?』

これ、私の職業を知った方から、よく尋ねられる質問です。

皆さん、弁護士が「異議あり!」と法廷で述べている場面をどこで見かけるのでしょう。やはり、テレビドラマなどの影響でしょうか。最近も、弁護士をテーマにしたテレビドラマが多く放送されているのを目にしますね。過去にも多く製作されてきていますし、ドラマチックな展開にしやすく、人気が高いのかもしれません。

さて、実際の法廷がテレビドラマほどドラマチックか、と問われると、大変残念ながら、そうではありません、とお答えすることになります。

たとえば、テレビドラマなどでは、民事事件の期日においても、法廷で弁護士が長々と自身の考えを述べる場面が多くみられます。

しかし、実際の期日は、書面のやりとりが中心です。事前に主張を記載した書面を裁判所に提出しておき、当日の期日は当該書面について不明点があれば確認する程度で、基本的には、次回期日までに行うべき双方の宿題を確認し、次回期日の日程を調整して終わり、ということが多いのです。1時間近くかけて横浜や埼玉の裁判所に行くこともありますが、期日自体は数分で終わってしまうなどということもしょっちゅうです。

ときどき、事件の相手方ご本人が、弁護士をつけずに自身で裁判の対応をされる事件に出会うことがあります。相手方ご本人は、期日の場で、裁判官に口頭で自身の見解を初めから説明することができると思われて裁判所に来られるのですが、実際にはそのようなことは想定されていないため、裁判官から「あなたの見解を書面にして、証拠とともに提出してください」と言われてしまい、拍子抜けしてしまう、という場面を時々見かけます。実際の裁判の対応には慣れています、などという奇特な方はまずおられないので、ドラマなどでしか情報を得られませんから、無理もないことです。

一方で、証人尋問や本人尋問の期日では、証人や本人に対し、主尋問や、反対尋問が行われます。口頭で質問をして、証人や本人が答えるという一問一答形式で、実際の期日も、テレビドラマで行われる尋問場面に比較的近いと思います。

ただし、尋問期日当日に、相手方が全く想定していない決定的な証人が登場し、相手方弁護士及び相手方本人が驚愕し、法廷内がざわつく、という展開は、実際には起きません。実際の裁判手続では、尋問はあらかじめ証人として誰を呼ぶかを決めて証人尋問の申請をすることになっており、尋問期日の前に、尋問をする人数や尋問時間などを決めて尋問期日を迎えるためです。

また、テレビドラマのクライマックスで、弁護士が相手方本人に対して核心を突く質問をして、相手方本人が開き直って「そうです、そのとおりです・・・!」などと言って真実を話し始めるといった展開をよくみかけますが、現実ではあり得ません。(そのような展開があれば、反対尋問をしている弁護士はとても嬉しいでしょうが、現実はそう甘くはありません。)

ちなみに、刑事事件は、民事事件よりも、期日での口頭のやりとりが多いので、皆さんが傍聴に行かれる場合には刑事事件の方が見応えがあるかもしれません。

さて、冒頭の『「異議あり!」と実際に言うのか?』との質問に対しては、私は、『「異議あり!」とは通常言いません」とお答えしています。現在弁護士は4万人近くいるそうですから、そのように言う方がいらっしゃらないとは限りませんが、少なくとも、私は「異議あり!」と言っている方をお見かけしたことはありません。実際には、単に「異議。」と言ったり、「今の部分は~(異議の理由)」と特に「異議」という言葉を使わないで実質的に異議の理由を言って終わらせてしまう、ということが多いのではないかと思います。

そうそう、そういえば、他にも・・・・と続けたいところですが、そろそろ読者の方から、ごちゃごちゃ言うな、ドラマはドラマとして楽しく見ればいいんだ、これだから弁護士は理屈っぽくて困る・・・などという声が聞こえてきそうなので、今日はここまで。

投稿者: 東京合同法律事務所

2019.01.09更新

弁護士 馬奈木厳太郎

憲政史上初めて国民主権を謳った日本国憲法

 新年おめでとうございます。
 今年は、憲法が施行された1947年から72目の年となります。日本の憲政史上、初めて国民主権を謳った日本国憲法。私たちは、何のために主権者となったのか、年頭に際し、そのことを改めて確認したいと思います。

 日本国憲法の前文は、次の一文から始まります。
「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」

「主権が存することを宣言し、この憲法を確定する」とありますが、その前には「戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し」とあります。「決意」したのは、もちろん「日本国民」です。そして、注目すべきは「戦争の惨禍が」「政府の行為によつて」引き起こされたとの認識が示されていることです。
 つまり、アジア太平洋戦争という惨禍が政府の行為によって引き起こされ、その政府は天皇主権の下での政府であった、したがって戦争を二度と繰り返さないために、国民を主権者とした――この一文は、こうした歴史認識とその教訓を示しているのです。

戦争を起こす主体と平和を創る主体

 また、前文には、次のような一文もあります。
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」

 戦争を引き起こすのが政府であるとの認識を示したうえで、憲法は「われらの安全と生存」を「平和を愛する諸国民の公正と信義」に求めるとしています。重要なのは、平和を愛する「諸国」や「諸政府」ではなく「諸国民」、つまり世界の平和を愛する諸々の人々だとしている点です。政府ではなく、国境を超えた市民が平和の創り手だとの認識が示されています。

問われているのは戦後の原点であり、私たちの主権者らしさ

 日本国憲法が、国民主権を謳ったのは、戦争の惨禍を起こさないため。そして、国民は戦争を起こさないため平和を愛する諸国民との信頼関係を構築する―これが、私たちが主権者となった原点です。
 改憲論議も行われているところですが、その核心は立憲主義と平和主義をめぐる点にあります。戦争を起こさないために主権者となった私たちが、戦争をするために改憲するのか。私たちは何のために主権者となったのか、まさに主権者としての自覚が問われています。

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.12.13更新

 わたしたちの事務所では、年に2度ほど「事務所学習会」を開いていて、哲学や歴史、科学など法律書以外をテキストに使っておこないます。先日の学習会では宮本常一『忘れられた日本人』(岩波文庫)がテキストでした。
 そのなかに、「自分の持ち山が知らぬ間に官林になったり庄屋の山になったり、法律を知っていればどんなこともできる」であるとか「弁護士は三百代言といい法律をたてにとってウソばかり言ってみんなからお金をまきあげた」などというわたしたち弁護士にとって耳の痛い記述がでてきます。もちろん法律を知っていれば何でもできるわけではなく、多くの弁護士がウソをいってお金を巻き上げているものでもないのですが、人々の法律や弁護士に対するある種の感情を表現しているかと思います。法律や訴訟が巾をきかせていたり、弁護士の活躍する社会なんてとても幸せな世の中とは思われない、というのが弁護士であるわたしの個人的な思いではあります。
 かつて「司法『改革』」が声高に叫ばれた時期がありました。「社会のすみずみまで法の支配を」とか「司法の容量をもっともっと」などの掛け声のもと、法科大学院の新設や弁護士の大量増員が実行されました。法曹・弁護士に対する需要はもっともっと増えるに違いない、そうでなくてはならないとばかり、わたしが弁護士になった頃と比べ弁護士数は倍増しました。
 古典派経済学の用語に「セイの法則」というものがあります。供給は自ら需要を作りだすというもので、商品は作りさえすれば、価格調整機能がはたらき、売れ残りはいずれなくなる、供給はそれ自身の需要を創造するというものです。弁護士も大量に供給すれば、それに見あった法的な需要が生まれるといったおめでたい意見もありましたが、実際にはまったくそうはなりませんでした。
 わたしたちの住む社会は、ファーストフード店のコーヒーで火傷したのは、熱すぎるコーヒーを販売した店の責任だとして損害賠償請求訴訟を起こすような社会ではなかったということでしょう。この国の人々は、「弁護士を大量に必要とする不健全な社会はいらない」というまっとうな結論を出しました。その結果、わたしたち弁護士は激しい競争にさらされることになりました。

弁護士 松島暁

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.11.27更新

弁護士 前川雄司

 専門は何ですかと聞かれることがあります。なかなか答えにくい質問です。何が専門の基準かわからないからです。しかし、依頼するかどうか決めるうえで専門が何かを聞きたいのはわかります。そこで、私はこういう事件を担当してきましたとか、こういう事件を担当していますとお答えすることにしています。専門と言えるかどうかはわかりませんが。
 ちなみに、現在、私が担当している事件や業務は次のとおりです。
   再開発、不動産、借地借家、建物明渡、共有物分割、
   遺産分割、遺言作成、遺言執行、遺言無効確認、遺留分、
   財産管理、任意後見契約、民事信託、離婚、金銭債権、
   交通事故、固定資産税、マンション管理組合
   法律顧問業務(全国保険医団体連合会、東京歯科保険医協会、東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部、日本勤労者山岳連盟のほか、複数の会社や個人からご依頼いただいています。)
 弁護士になって今年で35年になりますが、その35年の積み重ねが現在の事件や業務になっています。

 六法や判例を暗記しているのですかと聞かれることもありますが、私は暗記していません。法律や判例は必要に応じて調べればいいからです。
 では、弁護士の仕事の中で重要なことは何でしょう。この質問に対する答えは弁護士によってかなり違うかもしれません。
 私は、一つはコミュニケーションが重要と思っています。依頼者とのコミュニケーション、相手方やその代理人弁護士とのコミュニケーション、裁判官とのコミュニケーション、関係者とのコミュニケーション、場合によっては、行政とのコミュニケーション、マスコミとのコミュニケーションなどです。
 そうしたコミュニケーションは、対話・電話・弁論や文書・ファックス・メールなどで日常的に行っていますが、言葉の正確で明確な使用はもちろん、言語表現の真実性・妥当性・誠実性といったものの積み重ねによって信頼関係や連帯を醸成することができれば、ともに問題の解決を目指す可能性を切り開くことができます。
 もう一つは、分析力です。必要な情報や資料を収集して分析し、正確な見通しを立てて説得力のある主張や解決策を組み立てる力です。有利なものだけでなく不利なものも含めて分析することが重要です。
 他にもいろいろあるとは思いますが、何を重視するかに弁護士の個性が現れるように思います。

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.11.27更新

2018年11月27日 弁護士 洪美絵

 日本では、1896年以来、成年年齢は20歳とされてきました。
 選挙権が18歳に引き下げられたことは報道等でご存じのことと思いますが、今年6月に民法も改正され、2022年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられることになりました。

 成年年齢が18歳に引き下げられると、どんなことが起きるのでしょう。

 未成年者(現在は20歳未満)には、「未成年取消権」が認められています。勧誘の方法がよくなかった、説明に間違いがあった、などの事情がなくとも、未成年者は契約を取り消すことができるのです。
 そのため、業者側も未成年者を勧誘のターゲットにはしません。苦労して勧誘しても、後で契約を取り消されてしまうリスクを嫌うからです。
 現在の統計では、成年(現在は20歳以上)になると、相談件数と被害金額が格段に大きくなっています。

 成年年齢が18歳に引き下げられると、この「未成年取消権」は18歳未満の場合しか行使できなくなります。18歳という年齢は多くの方はまだ高校3年生でしょう。成年年齢が18歳に引き下げられるのは4年後とはいえ、高校生でも勧誘のターゲットにされる可能性が高くなるのです。

 成年年齢の引き下げには色々な問題点がありますが、まずはこの点にご注意いただき、お子さんと、お金の使い方やローンを組むことの意味など、具体的に話し合っていただければと思います。

【法律トリビア】
 一般的に「成人年齢」という方が多いようですが、法律用語としては「成年年齢」が広く使われています(民法第4条)。このような例では、他に遺言(一般的には「ゆいごん」と読みますが、法律用語としては「いごん」と読みます)や競売(一般的には「きょうばい」と読みますが、法律用語としては「けいばい」と読みます)などもあります。

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.10.10更新

 2018年は、日本体操協会のパワハラ問題、日大アメフト部の悪質タックル、日本ボクシング連盟の前会長の不正疑惑などスポーツ業界の不祥事が続きました。
 幼いころからスポーツに携わってきた私からすれば、スポーツ業界の古い体質に端を発する問題が、ようやく顕在化し、社会的に認知され始めてきたと感じているところであります。

 さて、そんなスポーツ業界に関する判例(最判平成18年3月13日/李刊教育法149号50頁)をご紹介したいと思います。
 高校サッカー部に所属していた生徒Aが、課外の部活活動としてのサッカーの試合中に落雷により負傷し、引率者兼監督の教諭に落雷事故発生の危険が迫っていることを予見すべき注意義務があるとされた事例です。

 当日の午後3時ごろには、上空に暗雲が立ち込めて暗くなり、ラインの確認が困難なほどの豪雨が降り続き、雷注意報が発令されていました。落雷直前には、雨がやみ、上空の大部分が明るくなりつつあったが、試合会場の南西方向には黒く固まった暗雲が立ち込め、雷鳴が聞こえ、雲の間で放電が起きるのが目撃されていました。
 そんな中、生徒Aが所属するサッカー部の試合が開始され、試合開始5分ころ、生徒Aに落雷があり、生徒Aは、視力障害、両下肢機能の全廃、両上肢機能の著しい障害等の後遺障害が残ってしまいました。
 なお、当時の文献には、運動場にいて雷鳴が聞こえるときには、遠くにいても直ちに屋内に避難すべきであるとの趣旨の記載が多く存在していました。
 このような事実関係のもとで、原審は、社会通念上、遠雷が聞こえていることなどから直ちに一切の社会的な活動を中止又は中断すべきことが当然に要請されているとまではいえないなどとして、教諭の責任を否定しました。
 これに対し、最高裁判決は、同校サッカー部の引率者兼監督の教諭には落雷事故発生の危険が迫っていることを予見することが可能で、その注意義務を怠ったと判示しました。

 私は幼いころからサッカーをしてきましたが、サッカーは豪雨の中でも試合を中断することが少ない競技です。しかし、私の経験上、雷鳴が聞こえる状況下では、試合及び練習ともに中断するよう徹底されていました。
 本件が天災と位置づけられる落雷事故であることや課外のクラブ活動中の事故という難しい問題ではあったものの、上記のような私の経験を前提にすると、原審は「社会通念」からずれる無理のあった判断だったと言わざるを得ないと思います。
 一方、最高裁の判断は、事実関係や文献上の記載などを素直に評価した常識的な判断であったかと思います。
 なお、本判決は、高校の課外部活活動中の事故を前提としたものですので、成人が任意に参加する場合とは異なりますので、ご注意ください。

「スポーツの秋」と言われますが、秋の空は移り変わりが激しいことで知られています。野外でスポーツをされる際には、天候に十分お気をつけください。

弁護士 福井俊之

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.10.03更新

 港区の東京合同法律事務所で弁護士をしている、樋谷賢一です。

 近年、インターネット技術の進展、接続環境の整備などにより、誰もが、いつでも、気軽にインターネットを利用できるようになりました。インターネットを使えば、ちょっとした調べ物、友人への連絡、SNSを利用した情報発信、ネット通販など様々なことが行え、インターネットは、現在人にとって必要不可欠なものと言っても過言ではないでしょう。

 しかしながら、インターネットは、便利な反面、使い方を誤るとトラブルに巻き込まれる危険性も秘めています。実際にあったトラブルなどをふまえ、インターネットの使い方やトラブルへの対処方法について、考えてみたいと思います。

 

1 ネット上での誹謗中傷

 インターネット上で誹謗中傷されているのでやめさせたい、誹謗中傷した人物を訴えたい、インターネット上での投稿が名誉毀損だとして訴えられた、といった相談を受けることがあります。

 インターネット上では、匿名での書込みが可能な掲示板などがあるため、しばしば、他人を誹謗中傷するような表現が見受けられますが、内容によっては、名誉毀損やプライバシー侵害に該当し、名誉毀損罪や偽計業務妨害罪、不法行為の対象になりえます。したがって、たとえ匿名であったとしても、節度ある行動が必要です。

 万一、インターネット上で誹謗中傷されたりプライバシーを侵害されたりした場合には、証拠を保全し、情報発信した人物を特定することが重要になりますので、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

 

2 著作権に要注意

 インターネット上には様々な記事や画像があふれており、容易にコピー・転載することができます。しかし、インターネット上の記事や画像も著作権法の著作物に該当するものは、同法による保護を受け、一定の要件をみたさない利用は著作権法違反になりえます。例えば、他人のブログの記事や写真を勝手にコピーし、自分のブログに掲載する行為は、著作権侵害に該当しえます。安易に他人の記事や写真を転載することのないように気をつけましょう。

 

3 SNSは個人情報の宝庫

 近年、様々なSNSが登場しており、多くの方が使っていると思います。SNSは、気軽に情報を発信できる点が魅力的ですが、公開範囲を限定していない場合には、世界中の人々の目に触れる可能性があります。

 例えば、投稿した写真の設定によっては、撮影日や撮影場所が特定できるため、自宅や勤務先、個人の行動パターンを特定される危険性があります。また、家族の写真を投稿する人もいますが、家族構成や子どもの学校などが第三者に知られる危険性もあります。先日は、SNSで旅行に行っている投稿をしている人の自宅を狙って空き巣をしていた犯人が逮捕されたというニュースもありました。

 このように、SNSは、悪意のある人物からすれば個人情報の宝庫といえます。公開範囲を吟味するとともに、投稿によるリスクにも注意を払うようにしましょう。

 

4 ネット通販・オークションの注意点

  インターネットは個人が容易に利用できるため、ネット通販やオークションで個人間のやり取りも活発になっています。それに伴い、ネット通販で注文した商品が届かない、オークションで落札した商品が届いたけど説明と違う、といった相談を受けることがあります。

  相手方が初めから詐欺を働く目的の場合には、掲載されている住所や連絡先が不十分であったり虚偽であったりして、連絡が取れなくなることが多いです。そのため、取引をする前に、相手方が十分に信用できるか吟味することが重要となります。経験上、「100%保証」などと謳っていたり、宣伝にいいことばかり書いていたりする相手方は要注意です。また、連絡先の記載内容、他の取引者の評価などにも注意を払うようにしましょう。場合によっては、サイトの運営会社が補償してくれることもあるので、運営会社の方針や補償内容等も確認するようにしましょう。

 

 このように見てくると、インターネットって怖い、と思われるかもしれませんが、インターネットが便利なものであることは疑いありません。インターネットの危険性や注意点を十分に認識、理解して、快適で安心・安全なインターネットライフを送りたいものです。

 弁護士 樋谷 賢一

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.09.11更新

 もう20年ほど前になる。下町の借地人のおばあさんから地主から明け渡しの裁判を起こされたとの相談があった。自宅の前を駐車場にして貸していたところ契約違反だと言われたとのことで、早速受任し現地を見に行った。駐車場にしてもう10年ほど経つとのことで地主のところから丸見えの状態であるのに地主からは今回初めて文句を言われたとのことで地主の少なくとも黙示の承諾があったとも言えそうな事案であった。裁判が2回ほど進行した時、おばあさんが入院したとの連絡をいただいたのでお見舞いに行った。行ってみると病院の至る所に●●さんのお部屋はこちらですとおばあさんの名前を書いた張り紙があった。話を聞いてもどうも忘れてしまったのか要領を得た答えがない。仕方がないので、裁判所で裁判官に報告したところ、裁判官はとても困った顔になり、結局その裁判は地主側が取り下げて終了した。おばあさんは認知症だったと思われる。この事件がきっかけとなり、認知症の人の事件=成年後見事件を結構多くやってきた。今はさらにその前段階にも弁護士が関与するシステムができており、さらにその前の段階のホームロイヤーという制度も始まった。年を取るということで不当に権利が侵害されることがないよう取り組んでいきたい。

弁護士 髙畑拓

 

関連:後見についての悩み

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.08.25更新

① 改正相続法の施行日は2019年7月13日まで

 本年(2018)年7月、民法(相続法)が改正されました。昨年(2017年)5月に民法(債権法)が改正されたのに続き、2年続けて民法が大きく変わることになりました。
 施行時期を見ると、改正債権法の施行が2020年4月1日であるのに対し、改正相続法の施行は2019年7月13日までの日とされており、相続法の施行まで1年を切っています。
 相続法の改正について、報道では配偶者居住権の創設が取り上げられることが多いですが、個人的に実務への影響が大きいのは遺留分の改正ではないかと思います。今回の改正で遺留分制度が大きく変わることになりました。

② これまでの遺留分制度
 これまでは、相続人が、遺留分を遺言などで遺産を取得した人から取り戻そうとするとき、不動産など遺産の一部を物として取り戻すものとされていました(物権的効果)。遺留分の請求を受ける側で金銭で支払うことを申し出ることはできましたが(価格弁償)、遺留分を請求する側で金銭による支払いを求めることはできませんでした。
 しかし、これでは権利が共有となって紛争が解決しないという問題があります。また、権利関係を複雑にしてしまうという問題もありました。
 例えば、遺留分行使の結果、兄弟で不動産を、兄の持分1億1123万分の9268万1758、妹の持分1億1123万分の1854万8242で共有するといったケースがありました。私も実際にこのような判決を取って登記を移転したことがあります。

③ 改正後の遺留分制度
 今回の改正では、遺留分の権利を金銭で請求できるものとしました(金銭債権化)。その結果、遺留分の行使として、〇〇万円を支払えという請求ができるようになります。シンプルになってよいと思いますが、今後これまでにはなかった次のような問題点も出て来ることになると思います。
 遺留分を請求する側としては、〇〇万円を払えという判決を得たとしても、相手方に現金や預金がなければ、すぐに金銭を回収することはできません。相手方の不動産等を差押えて、競売にかけるなどの手続を別途取らなければなりません。
 遺留分を請求される側としては、これまでは遺産である不動産の名義を移せばよかったところ、改正後は、そうはいかないことになります。金銭債権化により、遺産以外の自分の預金や自宅も差押えの対象となります。評価額が高いがすぐに売れないような不動産を遺言等で取得した場合、自己の財産から遺留分を支払わなければならないようなケースも出て来ると思います。

弁護士 瀬川宏貴

投稿者: 東京合同法律事務所

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