トピックス

2018.10.10更新

 2018年は、日本体操協会のパワハラ問題、日大アメフト部の悪質タックル、日本ボクシング連盟の前会長の不正疑惑などスポーツ業界の不祥事が続きました。
 幼いころからスポーツに携わってきた私からすれば、スポーツ業界の古い体質に端を発する問題が、ようやく顕在化し、社会的に認知され始めてきたと感じているところであります。

 さて、そんなスポーツ業界に関する判例(最判平成18年3月13日/李刊教育法149号50頁)をご紹介したいと思います。
 高校サッカー部に所属していた生徒Aが、課外の部活活動としてのサッカーの試合中に落雷により負傷し、引率者兼監督の教諭に落雷事故発生の危険が迫っていることを予見すべき注意義務があるとされた事例です。

 当日の午後3時ごろには、上空に暗雲が立ち込めて暗くなり、ラインの確認が困難なほどの豪雨が降り続き、雷注意報が発令されていました。落雷直前には、雨がやみ、上空の大部分が明るくなりつつあったが、試合会場の南西方向には黒く固まった暗雲が立ち込め、雷鳴が聞こえ、雲の間で放電が起きるのが目撃されていました。
 そんな中、生徒Aが所属するサッカー部の試合が開始され、試合開始5分ころ、生徒Aに落雷があり、生徒Aは、視力障害、両下肢機能の全廃、両上肢機能の著しい障害等の後遺障害が残ってしまいました。
 なお、当時の文献には、運動場にいて雷鳴が聞こえるときには、遠くにいても直ちに屋内に避難すべきであるとの趣旨の記載が多く存在していました。
 このような事実関係のもとで、原審は、社会通念上、遠雷が聞こえていることなどから直ちに一切の社会的な活動を中止又は中断すべきことが当然に要請されているとまではいえないなどとして、教諭の責任を否定しました。
 これに対し、最高裁判決は、同校サッカー部の引率者兼監督の教諭には落雷事故発生の危険が迫っていることを予見することが可能で、その注意義務を怠ったと判示しました。

 私は幼いころからサッカーをしてきましたが、サッカーは豪雨の中でも試合を中断することが少ない競技です。しかし、私の経験上、雷鳴が聞こえる状況下では、試合及び練習ともに中断するよう徹底されていました。
 本件が天災と位置づけられる落雷事故であることや課外のクラブ活動中の事故という難しい問題ではあったものの、上記のような私の経験を前提にすると、原審は「社会通念」からずれる無理のあった判断だったと言わざるを得ないと思います。
 一方、最高裁の判断は、事実関係や文献上の記載などを素直に評価した常識的な判断であったかと思います。
 なお、本判決は、高校の課外部活活動中の事故を前提としたものですので、成人が任意に参加する場合とは異なりますので、ご注意ください。

「スポーツの秋」と言われますが、秋の空は移り変わりが激しいことで知られています。野外でスポーツをされる際には、天候に十分お気をつけください。

弁護士 福井俊之

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.10.03更新

 港区の東京合同法律事務所で弁護士をしている、樋谷賢一です。

 近年、インターネット技術の進展、接続環境の整備などにより、誰もが、いつでも、気軽にインターネットを利用できるようになりました。インターネットを使えば、ちょっとした調べ物、友人への連絡、SNSを利用した情報発信、ネット通販など様々なことが行え、インターネットは、現在人にとって必要不可欠なものと言っても過言ではないでしょう。

 しかしながら、インターネットは、便利な反面、使い方を誤るとトラブルに巻き込まれる危険性も秘めています。実際にあったトラブルなどをふまえ、インターネットの使い方やトラブルへの対処方法について、考えてみたいと思います。

 

1 ネット上での誹謗中傷

 インターネット上で誹謗中傷されているのでやめさせたい、誹謗中傷した人物を訴えたい、インターネット上での投稿が名誉毀損だとして訴えられた、といった相談を受けることがあります。

 インターネット上では、匿名での書込みが可能な掲示板などがあるため、しばしば、他人を誹謗中傷するような表現が見受けられますが、内容によっては、名誉毀損やプライバシー侵害に該当し、名誉毀損罪や偽計業務妨害罪、不法行為の対象になりえます。したがって、たとえ匿名であったとしても、節度ある行動が必要です。

 万一、インターネット上で誹謗中傷されたりプライバシーを侵害されたりした場合には、証拠を保全し、情報発信した人物を特定することが重要になりますので、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

 

2 著作権に要注意

 インターネット上には様々な記事や画像があふれており、容易にコピー・転載することができます。しかし、インターネット上の記事や画像も著作権法の著作物に該当するものは、同法による保護を受け、一定の要件をみたさない利用は著作権法違反になりえます。例えば、他人のブログの記事や写真を勝手にコピーし、自分のブログに掲載する行為は、著作権侵害に該当しえます。安易に他人の記事や写真を転載することのないように気をつけましょう。

 

3 SNSは個人情報の宝庫

 近年、様々なSNSが登場しており、多くの方が使っていると思います。SNSは、気軽に情報を発信できる点が魅力的ですが、公開範囲を限定していない場合には、世界中の人々の目に触れる可能性があります。

 例えば、投稿した写真の設定によっては、撮影日や撮影場所が特定できるため、自宅や勤務先、個人の行動パターンを特定される危険性があります。また、家族の写真を投稿する人もいますが、家族構成や子どもの学校などが第三者に知られる危険性もあります。先日は、SNSで旅行に行っている投稿をしている人の自宅を狙って空き巣をしていた犯人が逮捕されたというニュースもありました。

 このように、SNSは、悪意のある人物からすれば個人情報の宝庫といえます。公開範囲を吟味するとともに、投稿によるリスクにも注意を払うようにしましょう。

 

4 ネット通販・オークションの注意点

  インターネットは個人が容易に利用できるため、ネット通販やオークションで個人間のやり取りも活発になっています。それに伴い、ネット通販で注文した商品が届かない、オークションで落札した商品が届いたけど説明と違う、といった相談を受けることがあります。

  相手方が初めから詐欺を働く目的の場合には、掲載されている住所や連絡先が不十分であったり虚偽であったりして、連絡が取れなくなることが多いです。そのため、取引をする前に、相手方が十分に信用できるか吟味することが重要となります。経験上、「100%保証」などと謳っていたり、宣伝にいいことばかり書いていたりする相手方は要注意です。また、連絡先の記載内容、他の取引者の評価などにも注意を払うようにしましょう。場合によっては、サイトの運営会社が補償してくれることもあるので、運営会社の方針や補償内容等も確認するようにしましょう。

 

 このように見てくると、インターネットって怖い、と思われるかもしれませんが、インターネットが便利なものであることは疑いありません。インターネットの危険性や注意点を十分に認識、理解して、快適で安心・安全なインターネットライフを送りたいものです。

 弁護士 樋谷 賢一

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.09.11更新

 もう20年ほど前になる。下町の借地人のおばあさんから地主から明け渡しの裁判を起こされたとの相談があった。自宅の前を駐車場にして貸していたところ契約違反だと言われたとのことで、早速受任し現地を見に行った。駐車場にしてもう10年ほど経つとのことで地主のところから丸見えの状態であるのに地主からは今回初めて文句を言われたとのことで地主の少なくとも黙示の承諾があったとも言えそうな事案であった。裁判が2回ほど進行した時、おばあさんが入院したとの連絡をいただいたのでお見舞いに行った。行ってみると病院の至る所に●●さんのお部屋はこちらですとおばあさんの名前を書いた張り紙があった。話を聞いてもどうも忘れてしまったのか要領を得た答えがない。仕方がないので、裁判所で裁判官に報告したところ、裁判官はとても困った顔になり、結局その裁判は地主側が取り下げて終了した。おばあさんは認知症だったと思われる。この事件がきっかけとなり、認知症の人の事件=成年後見事件を結構多くやってきた。今はさらにその前段階にも弁護士が関与するシステムができており、さらにその前の段階のホームロイヤーという制度も始まった。年を取るということで不当に権利が侵害されることがないよう取り組んでいきたい。

弁護士 髙畑拓

 

関連:後見についての悩み

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.08.25更新

① 改正相続法の施行日は2019年7月13日まで

 本年(2018)年7月、民法(相続法)が改正されました。昨年(2017年)5月に民法(債権法)が改正されたのに続き、2年続けて民法が大きく変わることになりました。
 施行時期を見ると、改正債権法の施行が2020年4月1日であるのに対し、改正相続法の施行は2019年7月13日までの日とされており、相続法の施行まで1年を切っています。
 相続法の改正について、報道では配偶者居住権の創設が取り上げられることが多いですが、個人的に実務への影響が大きいのは遺留分の改正ではないかと思います。今回の改正で遺留分制度が大きく変わることになりました。

② これまでの遺留分制度
 これまでは、相続人が、遺留分を遺言などで遺産を取得した人から取り戻そうとするとき、不動産など遺産の一部を物として取り戻すものとされていました(物権的効果)。遺留分の請求を受ける側で金銭で支払うことを申し出ることはできましたが(価格弁償)、遺留分を請求する側で金銭による支払いを求めることはできませんでした。
 しかし、これでは権利が共有となって紛争が解決しないという問題があります。また、権利関係を複雑にしてしまうという問題もありました。
 例えば、遺留分行使の結果、兄弟で不動産を、兄の持分1億1123万分の9268万1758、妹の持分1億1123万分の1854万8242で共有するといったケースがありました。私も実際にこのような判決を取って登記を移転したことがあります。

③ 改正後の遺留分制度
 今回の改正では、遺留分の権利を金銭で請求できるものとしました(金銭債権化)。その結果、遺留分の行使として、〇〇万円を支払えという請求ができるようになります。シンプルになってよいと思いますが、今後これまでにはなかった次のような問題点も出て来ることになると思います。
 遺留分を請求する側としては、〇〇万円を払えという判決を得たとしても、相手方に現金や預金がなければ、すぐに金銭を回収することはできません。相手方の不動産等を差押えて、競売にかけるなどの手続を別途取らなければなりません。
 遺留分を請求される側としては、これまでは遺産である不動産の名義を移せばよかったところ、改正後は、そうはいかないことになります。金銭債権化により、遺産以外の自分の預金や自宅も差押えの対象となります。評価額が高いがすぐに売れないような不動産を遺言等で取得した場合、自己の財産から遺留分を支払わなければならないようなケースも出て来ると思います。

弁護士 瀬川宏貴

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.08.21更新

① 当事務所の所在地である東京都港区の人口は、平成28年1月現在で約24万人です。うち75歳以上の人は約2万人、65歳以上だと約4万2000人であり、高齢化率は全人口中17.40パーセントに達するとされています。おおむね6人に1人が「高齢」であるということになります。少子高齢化とか、棺桶型の人口分布といった巷間叫ばれている事態は、港区も例外ではありません。
 「高齢」とくくられる人たちの中にはさまざまな生活があると思いますが、介護や社会保障費等々、高齢世代を支える若年世代の負担が大きくなる将来像を見据えると、支えられる高齢世代もまた、必然的に「老い」や「死後」をどうするか、真剣に向き合う機会が増えることになるのではないかと思います。

② こうした社会状況を背景としてか、法律の分野においても、遺言とか、成年後見とか、信託といった高齢者の財産管理や処分といった分野の重要性が高まっています。「終活」などという言葉も近年もてはやされるようになりました。
 自分のことで子や、あるいは周囲の人に迷惑をかけたくないということは、年を重ねるにつれ、誰もが痛切に感じ、想うところなのでしょう。

③ ただ、その迷惑をかけないための手立てが時に深刻な対立を死後引きおこしてしまうことも少なくありません。
 たとえば、子どもたちの行く末を案じ、よかれと考えて行った遺言や生前贈与でも、それが残された子にとっては意外であり、受け入れがたいものであると、中にはそうした遺言や生前贈与は亡父あるいは亡母の真意であったとは到底考えられないと思考する人もでてきます。
 そうすると、亡父や亡母は当時認知症に陥っていて、その遺言や生前贈与は無効であるとの紛争が起き、訴訟にまで発展することがしばしばあるのです。実務上、こうした訴訟類型はある意味一般的であり、よく起きるものと言っても過言ではありません。
 そして、こうした訴訟類型では、認知症、つまり痴呆の有無が争点になります。無効を主張する側は、亡父あるいは亡母の行動が生前いかにおかしかったかというエピソードを多数集めて主張を行い、反対に、有効を主張する側は、亡父あるいは亡母がいかに健常であったかを示すエピソードを多数集めて反論を行います。
 否応なく、老齢化での生活状況の全般が訴訟での証明主題となり、それをめぐって血を分けた親族同士が激しく争いを展開することになります。それはやはり、悲劇といってよいものでしょう。

④ この認知症ということですが、一般的には脳の器質的障害であると定義されます。
 認知症の原因疾患として最も多いアルツハイマー型では脳の萎縮・消失が、脳血管型では脳梗塞や脳出血が、レビー小体型では脳内に異常なタンパク質が溜まるという現象が生じるとされています。
 そして、こうした脳の器質的障害は、現在ではCTやMRIなどの画像で診断が可能です。3のような事案で先日脳神経外科の専門医の先生にお話を聞く機会がありましたが、アルツハイマーなどは、MRI画像をコンピュータ解析することで脳が何パーセント萎縮しているかを数値化し、3D画像化することも可能なのだそうです。
 こうした脳の記録が時々にわたって蓄積・保管されていれば、認知症をめぐる死後の紛争というのは、相当程度未然に防げるのではないかと思います。逆にいうと、こうした脳の記録がないと紛争が泥沼化するといえるかもしれません。
 老いを自覚し、かつそれを記録化することは辛いことだとは思いますが、次世代に無用の紛争を起こさず、禍根を残さないためには、老いを自覚したら脳ドックなどで自分の脳を記録化しておくことが大事である。わが子の安らかな寝顔を見るにつけ、自戒を込めて痛切に感じる今日この頃です。

弁護士 鈴木眞

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.08.02更新

1 「預託商法」業者の破綻

 2017年12月、大手「預託商法」業者であるジャパンライフ㈱が実質破たんし、2018年3月、破産開始決定がされた。報道等によれば、被害者は全国で約7000名、被害総額は約2400億円にのぼる。全国に弁護団が立ち上がり、被害救済活動が進められている。
「預託商法」については、古くは豊田商事事件、近年でも安愚楽牧場事件において、大規模な被害が生じている。

2 「預託商法」

「預託商法」は、形式的には、物を買って、これを事業者にレンタルする、物に関する契約の形をとる。
 しかし、実質は、投資リターンを得ようとする、投資契約に他ならない。契約者は、ⅰ事業者に資金を渡して、ⅱ事業者に物を買ってもらい、ⅲ事業者にその物のレンタル等の事業をしてもらい、ⅳ事業収益からリターンを得ることが、予定される。

3 「預託商法」の被害

 契約者は、事業者がまじめに仕事をしてくれることを前提に資金を委ねる。
 ところが、適当に資金を集めて消えてしまう業者、約束どおりに物を買わない業者、資金を流用する業者、契約者にうその報告を行う業者が、後を絶たない。長年働いた蓄えを失う人、老後の生活資金を失う人を、多く生み出すことになる。

4 現在の特定商品預託法による規制では不十分 

 現行の特定商品預託法では、投資者は、資金を出すときに、契約内容等が書かれた書面とともに重要な事項を告げられ、事業者が事業を始めた後は、求めれば業務や財産状況についての書類を見せてもらえる。また、消費者庁も行政処分権限を持っている。しかし、極めて不十分であり、現にジャパンライフ㈱の被害も防げなかった。

5 投資の実質を踏まえた実効ある規制が求められる

「預託商法」においても、いいかげんな事業者が資金集めをすることをしっかり防いでもらう必要があるし、事業者がきちんとまじめに仕事を続けてもらえるよう規制を整える必要がある。 日本弁護士連合会は、2018年7月12日付で、「いわゆる『預託商法』につき抜本的な法制度の見直しを求める意見書」※ を公表した。
 意見書は、①「預託商法」を投資取引の規制法である金融商品取引法により規制すること、及び、②現行の金融商品取引法を拡充し、事業者がきちんと仕事をすることなどの義務付け、自主規制団体によるモニタリングや行政による監督等を求める。投資者保護の観点から、重要な提言となっている。
 今後、関係機関において検討が進められ、早期にメリハリのある規制が実現されることが期待される。

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2018/opinion_180712.pdf

弁護士 坂勇一郎(日弁連消費者問題対策委員会の一員として意見書の議論に参加しました。)

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.07.06更新

「できることがあるのか?」

 当事務所で扱った事件についてご紹介します。
 債権者申立による破産手続き中、民事再生への変更が認められ、再生計画の認可に至った、という画期的かつ非常にまれなケースです。

 その会社(A社)は、貸金返還訴訟、仮差押え、会社分割無効訴訟を提起され、弁護士を依頼して防戦していたものの、債権者から破産まで申し立てられ、そこでも劣勢な状態。果たして今からできることがあるのか?と悩みましたが「どうせ破産なら先生方にお願いして納得して終えたい」という社長からのお言葉に一同奮い立ち、受任に至りました。

「旧経営陣の陰謀?」

 この一連の貸金返還請求や破産申立の背後には、この会社の元社長の影が色濃く存在していると思われました。本来A社は取引先のしっかりした利益率の高い会社ですが、旧経営陣時代の不透明な会計処理の結果、多額の負債にあえいでいました。旧経営陣から新経営陣へ交代がなされ、それらの負債を返済しながら会社を建て直していこうとしていた矢先、当の負債を作った元社長につながる債権者から破産を申し立てられたのです。

 この争いの本質は、不透明な会計処理のためにA社を追われた元社長が、何の反省もなく、自らの経営時代に負ったA社の巨額債務を根拠に、債権者を巻き込んで新経営陣に対し理不尽な破産をしかけてきたもの。
 これからA社を健全な会社にして行きたいという新経営陣の真面目で誠実な姿勢に感銘を受け、正義はこちらにある、という確信のもと、何とか会社を存続させ、この方々に取り戻したい、との思いで始まった本件ですが、A社の内外事情を知り尽くし資料も豊富な旧経営陣からの矢継ぎ早な攻撃に、苦しい闘いを余儀なくされました。

「万事休す?」

 我々は攻防を尽くしましたが、受任から2か月ほどで破産決定が出されてしまい、すぐに抗告。抗告審では、こちらの主張が相当程度認められ、元社長の主張する債務の成否や破産申立の意図につき問題が指摘されたものの、結論では破産を認めるものでした。最高裁まで争いましたが、結果は変わらず、破産手続きが進められることになりました。

 まさに万事休す。ただ、新経営陣も私たちも、このような理不尽な結果をこのままにしてはおけません。一か八か、破産手続きから民事再生手続きへの変更を申し立てたのです。
 民事再生手続きが開始されるには、債権者の過半数の了承を取り付けて再生計画が認可される見通しが必要です。そもそも大口債権者から破産を申し立てられ破産決定がなされている状態で、債権者の多数が民事再生に賛成することは考えられず、破産から民事再生に移行することは非常にまれです。しかも、本件では、破産申立の段階で元社長が関与する大口債権者と激しく対立していたことから、民事再生の開始決定を得ることはほぼ不可能に思われました。

「時機に適い人に恵まれる」

 しかし、破産決定後も新経営陣に共感いただいた多くの取引先とは取引が継続され、破産財団に利益を計上し続けた実績があり、民事再生による建て直しが十分に可能であると実証できていたことや、こちらに有利な認定を得た破産の抗告審の事実認定を最大限に活用し、旧経営陣の問題点や新経営陣の信頼性をアピールできる時間的余裕にも恵まれ、裁判所を始めとする関係諸機関にも、本件の本質を正しく理解いただいた結果、裁判所から管理型(管財人が会社を管理)民事再生手続きを開始する旨の決定を得ることができました。
 そして、管財人団のもと、最終的には議決権数の90パーセント以上が賛成するという圧倒的な大差で、破産決定から2年弱の時を経て、民事再生計画が認可されました。
 配当(弁済)実施後、再生手続が終結され、ついにA社は何の制約もない普通の会社に戻ることができました。破産決定が出されてから、実に2年の長い闘いでした。このようなケースは、案件を多数扱う東京地裁でも例がないとのことです。

 ここまでの道のりは、優勢と劣勢、攻撃と守備が目まぐるしく入れ替わるたいへんスリリングなものでした。何度ももうダメかと思いましたが、その都度、時機に適い人に恵まれ、良い方向を選択し続けて来た結果、大成功を収めたのだと思います。
 今、A社は新経営陣のもと、新たな一歩を踏み出すことになりました。たいへんな事件でしたが、結果として、旧経営陣の残した過去の負債を一気に清算し、分散していた株式も1つにまとまり、素晴らしい会社に生まれ変わりました。
 ここまで来られたのも、私どもと新経営陣が心を一つにして粘り強く闘い抜いたからと喜んでいます。この貴重な経験を活かし、今後も苦境に立つ多くの会社のお役に立ちたいと思います(担当弁護士は、加納、泉澤、鈴木、洪、上原、市橋の6名です。)。

弁護士 加納小百合

 

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.06.25更新

 超高齢化社会を迎え、高齢者の方の財産管理が大きな問題になっています。

 以前の日本は家族が大人数で生活し、隣近所が顔見知りという状況でしたが、最近は高齢者がお一人でまたは夫婦だけで生活している場合が増え、財産管理に不安を感じる方が増えています。振り込め詐欺など高齢者を狙った詐欺事件も社会問題になっています。

 高齢になり判断能力が低下した場合は、家庭裁判所に後見申立てをすることになります。この制度は、判断能力が低下した方が取引の犠牲になって不利益を受けないようにするためのものです。

 判断能力が低い順に、成年後見(精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者)、保佐(能力が著しく不十分な者)、補助(能力が不十分な者)という制度がそれぞれ用意されています。それぞれの制度で後見人の権限は異なりますが、いずれの制度でも、おかしな契約をしてしまった場合に、後見人がその契約を取り消すことができます。家族が後見人になることもできますが、弁護士などの専門職の人を後見人につけるのがお勧めです。

 まだ判断能力は低下していないが今後に備えたいという場合は、高齢者の方とサポートをする人(家族や弁護士等)との間で任意後見契約を結びます。任意後見契約では、将来、判断能力が低下したら、契約を結んだ人が任意後見人として財産を管理します。

 最近では、任意後見契約とは別に見守り契約(ホームロイヤー契約)を結んで、判断能力が低下するまでの間も定期的に弁護士が日常の相談を受けるということも増えてきています。

 ご自身やご家族のことで将来に不安を感じましたら、まずはお気軽にご相談ください。一緒に解決方法を考えたいと思います。

弁護士 緒方蘭

ホームロイヤー(イメージ図)

 

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.06.06更新

2018年6月2日の毎日新聞一面に「賃金格差項目別に判断」と見出しが躍りました。

『正社員と非正規社員の待遇格差が、労働契約法が禁じる「不合理な格差」に当たるかが争われた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は1日、「不合理か否かの判断は賃金総額の比較のみではなく、賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきだ」との初判断を示した。そのうえで、契約社員による訴訟で5種類の手当の格差を不合理と認める一方、定年後の嘱託社員による訴訟では近く年金が支給される事情などから大半の請求を棄却した。』
『最高裁は不合理性の判断に当たり、労使交渉の経過や経営判断、定年後再雇用などの事情も考慮要素となるとの枠組みを示した。
 その上で、浜松市の物流会社「ハマキョウレックス」の契約社員が6種類の手当の格差是正を求めた訴訟では、4種類の手当の格差を不合理と認定した2審・大阪高裁判決を支持。正社員に支給される皆勤手当も「出勤者を確保する必要性は非正規社員も変わらない」として、この点の審理だけを高裁に差し戻した。
 一方、横浜市の運送会社「長沢運輸」に定年後再雇用された嘱託社員3人が「賃金減額は不当」と訴えた訴訟でも、個別の賃金項目を検討。皆勤手当と同趣旨の精勤手当の格差を不合理とし、相当額の5万~9万円を3人に支払うよう会社に命じた。一方で、基本給や大半の手当の格差については、3人は退職金を受け取り、近く年金が支給されるなどを理由に不合理性を否定。精勤手当に連動する超勤手当の再計算の審理のみを東京高裁に差し戻した。いずれの判断も裁判官4人全員一致の意見。』【毎日新聞】

 雇用形態が変容し、非正規社員が労働者の約4割を占めているといわれているなかで、「同一労働同一賃金」が重視されつつある社会の状況に対応した判断であると思われます。労働条件の差が不合理か否かの判断は賃金総額の比較のみではなく、賃金項目を個別に考慮すべきだとする判断が示されており、今後の裁判・法律実務に影響を与えるものと思われますし、同じように手当に格差を設けている企業に対して見直しを迫るものとなるでしょう。(弁護士 上原公太)

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.05.21更新

過労死のイメージイラスト

弁護士の市橋耕太です。

現在、国会では「働き方改革」関連法案の審議が行われていますが、その中に「高度プロフェッショナル制度」というとんでもない内容が含まれているのをご存知でしょうか?

例えば、次のような働き方が許されるのか、考えてみてください。

①24時間連続で働く(休憩無し)

②残業を月に200時間行う(※月80時間以上の残業をすると、過労死の危険が急激に高まると言われています)

③24日間、休み無しで働く

こんなこと許されるはず(許されて良いはず)ないだろ!というのが正常な反応だと思います。
しかし、高度プロフェッショナル制度の下では、これらはいずれも違法ではありません。
さらに極論すると、「24時間勤務を48日間連続(24×48=1152時間連続)で行わせる」ことも可能です。
・・・おそろしいですよね。間違いなく過労死してしまいますね。

高度プロフェッショナル制度とは、対象となる労働者について労働基準法が定める労働時間規制(「労働時間は原則1日8時間・1週40時間」とか「週に1日は休日を与えなければならない」など)を適用除外する(法律による保護から放り出す)という制度です。
一定の「健康確保措置」なるものが義務づけられますが、その下でも先ほどの「24時間×48日間勤務」は許されるのです。
これで「健康確保」できるでしょうか・・・。

法案では、「高度の専門的知識等を必要とする」などといった要件で対象業務を絞り、およそ1000万円以上という年収要件を定めて、対象労働者を限定するとしています。
しかし、対象業務は法律ではなく省令(国会での議論なしで定められる)で決めるものとされています。
また、年収要件についても将来的に引き下げられることは間違いありません。現に、塩崎前厚労大臣は、「小さく産んで大きく育てる」という本音をこぼしていますし、経団連は「年収400万円まで要件を下げるべきだ」との意見を出しています。
かつては原則禁止だった労働者派遣も、少しずつ適用対象が広げられて、今では原則OKになってしまっていますよね。
こうしたことからも、決して「お金持ちのエリートの制度」ではなくて、全労働者に影響のある法案なのです。

こんなおそろしい法案が、今週中にも衆議院で強行採決されると報じられています。
しかし、その問題点が十分に議論されないまま、上記のような間違いなく過労死してしまうような働き方を防止する措置もとられずに採決するなど、絶対に許してはなりません。

皆さまにおいても、高度プロフェッショナル制度の危険性を広めて、反対の声を大きくしていただければと思います!
私の所属している日本労働弁護団では、明日5月22日に日比谷野外音楽堂で大きな集会を行います。普段こういった集会に参加したことがないという方でも、これ以上過労死を増やしたくない!という方は、ぜひご参加ください。
詳細は以下からご覧ください。

日本労働弁護団http://roudou-bengodan.org/topics/7037/

 20180522日比谷野音集会

 

投稿者: 東京合同法律事務所

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