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2018.08.21更新

① 当事務所の所在地である東京都港区の人口は、平成28年1月現在で約24万人です。うち75歳以上の人は約2万人、65歳以上だと約4万2000人であり、高齢化率は全人口中17.40パーセントに達するとされています。おおむね6人に1人が「高齢」であるということになります。少子高齢化とか、棺桶型の人口分布といった巷間叫ばれている事態は、港区も例外ではありません。
 「高齢」とくくられる人たちの中にはさまざまな生活があると思いますが、介護や社会保障費等々、高齢世代を支える若年世代の負担が大きくなる将来像を見据えると、支えられる高齢世代もまた、必然的に「老い」や「死後」をどうするか、真剣に向き合う機会が増えることになるのではないかと思います。

② こうした社会状況を背景としてか、法律の分野においても、遺言とか、成年後見とか、信託といった高齢者の財産管理や処分といった分野の重要性が高まっています。「終活」などという言葉も近年もてはやされるようになりました。
 自分のことで子や、あるいは周囲の人に迷惑をかけたくないということは、年を重ねるにつれ、誰もが痛切に感じ、想うところなのでしょう。

③ ただ、その迷惑をかけないための手立てが時に深刻な対立を死後引きおこしてしまうことも少なくありません。
 たとえば、子どもたちの行く末を案じ、よかれと考えて行った遺言や生前贈与でも、それが残された子にとっては意外であり、受け入れがたいものであると、中にはそうした遺言や生前贈与は亡父あるいは亡母の真意であったとは到底考えられないと思考する人もでてきます。
 そうすると、亡父や亡母は当時認知症に陥っていて、その遺言や生前贈与は無効であるとの紛争が起き、訴訟にまで発展することがしばしばあるのです。実務上、こうした訴訟類型はある意味一般的であり、よく起きるものと言っても過言ではありません。
 そして、こうした訴訟類型では、認知症、つまり痴呆の有無が争点になります。無効を主張する側は、亡父あるいは亡母の行動が生前いかにおかしかったかというエピソードを多数集めて主張を行い、反対に、有効を主張する側は、亡父あるいは亡母がいかに健常であったかを示すエピソードを多数集めて反論を行います。
 否応なく、老齢化での生活状況の全般が訴訟での証明主題となり、それをめぐって血を分けた親族同士が激しく争いを展開することになります。それはやはり、悲劇といってよいものでしょう。

④ この認知症ということですが、一般的には脳の器質的障害であると定義されます。
 認知症の原因疾患として最も多いアルツハイマー型では脳の萎縮・消失が、脳血管型では脳梗塞や脳出血が、レビー小体型では脳内に異常なタンパク質が溜まるという現象が生じるとされています。
 そして、こうした脳の器質的障害は、現在ではCTやMRIなどの画像で診断が可能です。3のような事案で先日脳神経外科の専門医の先生にお話を聞く機会がありましたが、アルツハイマーなどは、MRI画像をコンピュータ解析することで脳が何パーセント萎縮しているかを数値化し、3D画像化することも可能なのだそうです。
 こうした脳の記録が時々にわたって蓄積・保管されていれば、認知症をめぐる死後の紛争というのは、相当程度未然に防げるのではないかと思います。逆にいうと、こうした脳の記録がないと紛争が泥沼化するといえるかもしれません。
 老いを自覚し、かつそれを記録化することは辛いことだとは思いますが、次世代に無用の紛争を起こさず、禍根を残さないためには、老いを自覚したら脳ドックなどで自分の脳を記録化しておくことが大事である。わが子の安らかな寝顔を見るにつけ、自戒を込めて痛切に感じる今日この頃です。

弁護士 鈴木眞

投稿者: 東京合同法律事務所

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