トピックス

2020.07.06更新

弁護士 樋谷賢一

1 『コロナウィルス感染を避けるため「夜の街」に行くな』という業務命令は有効か?

 新型コロナウィルスの脅威が伝えられる中、会社が従業員の休日の過ごし方やエチケットを強制しようとしているとの報道がなされています。
 しかし、会社内にコロナウィルスを持ち込まないようにするという理由で、会社が従業員に対して、休日の過ごし方や手洗い等のエチケットについて命令することは許されるのでしょうか。また、命令に違反したことを理由に、懲戒を行うことはできるのでしょうか。

(1) 業務命令に反して「夜の街」に行った社員を懲戒できるか。
 一般的に、会社の就業規則には懲戒の規定があります。多くの会社では、「業務命令に違反した」場合や「社会的に著しく不適切な行為(※刑事犯罪など)を行った」場合などを懲戒の対象にしていると思います。
 コロナウィルス感染拡大の原因の一つとして指摘されている「夜の街」ですが、もし、就業時間内に仕事をさぼって「夜の街」で遊んでいた場合は、当然懲戒の対象になるでしょう。
 しかし、一般的に、就業時間外は業務命令に服する義務がないため、もし就業時間外に「夜の街」に行ったとしても、そもそも業務命令に反したといえないでしょう。したがって、就業時間外に「夜の街」に行ったことを理由に懲戒した場合、その懲戒は無効であると考えられます。

(2)コロナウィルスに感染した社員が「夜の街」に行っていたことが判明した場合、懲戒できるか。
 コロナウィルスの感染経路は「夜の街」に限ったことではなく、通勤電車や会社のオフィスなど、どこでも起こり得ます。
 そのため、社員が「夜の街」に行ったことによってコロナウィルスに感染したことの証明が困難であり、基本的に懲戒はできないと考えられます。
 したがって、当該社員が社内にコロナウィルス感染を持ち込む強い悪意を持って、集団感染が発生している場所に敢えて意図的に行く、などという極めて特殊な事情でもない限り、懲戒解雇はできないでしょう。

(3)手洗い等のエチケットに関する業務命令は有効か。
 会社は、職場の環境などについて、安全配慮義務を負っています。したがって、コロナウィルス感染対策としてエチケットの徹底を命令することは有効であると考えられます。もっとも、懲戒にあたっては、処分の相当性も求められることから、命令に違反したことを理由に直ちに懲戒を行うことができるとは限りません。

2 医療従事者への差別的発言

 病院勤務の医療従事者が、「コロナウィルスがうつるから出歩くな」などの心ない言葉をぶつけられた、タクシーに乗車を断られた、保育園に子どもの受け入れを拒否されたなどの報道がされています。私たちの社会のために危険を伴う最前線で働いてくれている方々に対して、感謝と労いでなく職業差別的な言動がなされたことに心を痛めています。
 医療従事者に対して、「コロナウィルスがうつるからで歩くな」などと発言した場合、どのような法的問題があるのでしょうか。
 日常生活を営む権利を否定する「出歩くな」などといった発言をした場合、その趣旨や経緯にもよりますが、民法上の不法行為にあたり、損害賠償責任を問われる可能性があります。したがって、そのような発言は慎むべきでしょう。もっとも、医療現場で働いている方々の方が、自分よりもさらにコロナウィルスの恐怖を感じているかもしれないと想像してみたなら、そもそもこの様な発言はできないのではないでしょうか。
 誰しもがコロナウィルス罹患や経済的な不安を感じる中で、他の人に対して寛容になれないのは無理の無いことかもしれません。しかしながら、このような未曽有の危機のときこそ、他者を思いやり尊重することが大切だと思います。

 

【弁護士紹介】弁護士 樋谷賢一

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投稿者: 東京合同法律事務所

2020.04.23更新

新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、会社から賃金減額や解雇を言い渡されるなど、労働者の方の権利が守られない状況が続いています。

労働者が使用者に求めることができることを紹介させていただきます。

●賃金を減らすと言われた場合
賃金は、労働条件ですので、会社が労働者の合意なく一方的に減額できるものではありません。
ただし、就業規則の不利益変更が認められる場合は、賃金の変更が有効になることがあります。就業規則の不利益変更は、変更後の就業規則を労働者に周知させた上で、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況等の事情に照らして合理的なものであるときは有効となります(労働契約法10条)。
無条件で賃金減額が認められるわけではないので、賃金が減額された場合はまず弁護士にご相談ください。


●自宅待機だから賃金を払わないと言われた場合
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために自宅待機を命じられた場合でも、会社は、最低でも賃金の6割に相当する休業手当を支払わなければなりません(労基法26条)。この規定は強行規定ですので、就業規則や労働契約で6割よりも低い金額が定められていても、会社は6割を支払う義務があります。
賃金が減額された場合は、会社に説明を求め、休んだ日に関しては最低でも休業手当6割分は支払うよう求めるべきです。
また、テレワークの場合は、働いているため、100%の賃金を請求することができます。
なお、実際に感染者が出た場合は不可抗力による休業になりますので、休業手当は支払わなくていいことになる可能性があります。

●解雇すると言われた場合
解雇をするには、客観的に合理的な理由と社会的相当性が必要になり(労働契約法16条)、解雇は厳しく制限されています。
また、経営不振など会社の都合で解雇する場合は、整理解雇にあたります。整理解雇は通常の解雇よりも厳しく判断され、①人員削減の必要性、②解雇回避努力が尽くされたこと、③人選の合理性、④手続の相当性が必要になります。
この②の解雇回避努力の判断に当たっては、会社がきちんと新型コロナウイルス関係の助成制度を利用し、それでもなお雇用の維持が難しい場合であるかどうかが問題になると考えられます。
いずれにせよ、解雇は法律で厳しく制限されていますので、解雇された場合はまず争いましょう。


新型コロナウイルスの感染拡大防止のために労働者の権利が守られていない状況を変えるためにこの記事を書きましたが、もちろん会社の経営者の方も大変だと思います。
今後、政治の分野で声を上げ、経営者への助成・手当をもっと増やしていく必要があります。
大変な時期だからこそ、自分たちや大事な人たちの権利を守るために声を上げていきましょう。                                                                                            

弁護士 緒方 蘭

緒方弁護士はこちらの記事も書いています】
 ・新型コロナウイルスの影響で、賃金減額されたり解雇を言い渡されたりしたら?
 ・社長が整理解雇を検討している-整理解雇が撤回されたケース-【コロナ相談事例】

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投稿者: 東京合同法律事務所

2020.04.13更新

独立行政法人国民生活センターの広報誌【2020年3月号(3月16日発行)】に当事務所の坂勇一郎弁護士の記事(「生命保険の相談対応に必要な関連法規の基礎知識」)が掲載されました。
     
【記事本文がこちらからお読みいただけます。】

 生命保険はもしものときのための備えとなるものですが、将来の保障を内容とする商品であり、わかりにくいという声もよく聞きます。保険契約者が、そのひとにあった契約ができるよう、法律は様々なルールを定めています。
 広報誌の記事は、保険契約者の保護や、トラブルとなった場合の解決に役立つ法律上のルールについて、その概要をまとめたものです。
 保険について相談対応をする方だけでなく、保険について考えたい方や契約に疑問を感じている方にも、参考にしていただければと思います。

【坂弁護士の関連記事はこちら】利用者に安全・安心のキャッシュレス決済を

投稿者: 東京合同法律事務所

2020.03.12更新

わが国の法治主義をおびやかす「黒川東京高等検察庁検事長定年延長」問題について

 国民生活に多大の影響をあたえている新型コロナウィルス問題でテレビ、新聞の報道欄が埋められる中でも、決して埋もれさせてはならない問題があります。その一つが今年1月31日に内閣が閣議決定したと報じられた黒川弘務東京高等検察庁検事長の定年延長問題です。たったひとりの検察官の定年延長がなぜ大問題になるのか?

 確かに多くの国民にとってこの問題は生活に密着したものではないし、難しい法律の解釈が絡むので、敬遠したい問題かもしれません。しかしこの問題は、単に一検察官の定年を延長するのが良いか悪いかというのではなく、わが国の法治主義を根底からおびやかす危険性をはらんでいるのです。
 1947年の日本国憲法施行とともに制定された検察庁法は、検事総長は65歳、その他の検察官は63歳で定年とすると定めましたが、同じ年に制定された国家公務員法には定年の規定はありませんでした。これは、同じ国家公務員のなかでも検察官は、ときの政権にある国会議員をも訴追する強力な権限が与えられ、行政機関の一員でありつつ、公正・公平な権限行使が強く求められているということからきています。権力の恣意的な人事介入によって、権力に都合の悪い検察官を勝手にやめさせたり、逆に権力に従順な検察官に延々とトップを務めさせることを防ぐ意味があったのです。

 時代は下って1981年、さすがに一般国家公務員だけ定年規定がないのはバランスがとれないことから、国家公務員法は改正され、定年制度が設けられます。そしてこのとき、国家公務員には定年延長も例外的にありうるとの規定が設けられましたが、それは「別段の定め」があるときは除くとされていました。そしてその「別段の定め」が検察庁法であることは、当時の政府も国会で答弁していました。つまり、国家公務員法であらたに規定された定年延長制度が検察官には適用されないことは、法律の制定当時から「当然」とされていたわけです。その後今回の問題が起きるまで、検察庁法は政府答弁どおり運用され続けてきました。

 ところが、安部政権は今年になって突如、今年2月7日に定年となる黒川東京高検検事長について、半年間定年を延長すると発表しました。検察庁法が制定されて73年、国家公務員法が改訂されて39年も経って、しかも法律を国会で審議して法改正によって延長するのではなく、一内閣の勝手な「解釈」によっての変更です。これは過去の政府答弁にも反することであり、国会で野党からその点を突かれると、森雅子法務大臣は、まさに「迷走」というしかない答弁を繰り返しました。
 このような惨憺たる状況を見て、ついに現役の検事正からも「国民からの検察に対する信頼が損なわれる」という声が出る始末です。
 安倍政権が黒川東京高等検察庁検事長の定年延長にこだわる背景には、現政権に特に従順で、政治家の訴追に後ろ向きといわれる同人を、次の検事総長に据えるためだという見方があります。集団的自衛権の解釈変更問題、森友・加計問題や「桜を見る会」問題にもみられるように、国政を私物化し、法律に違反してでも、自らを取り巻く人物のみを優遇する安倍政権のいつものやり方というわけです。今回の検事長定年延長でも安倍政権は、法律を無視し、法治主義を根底から覆そうとしています。わが国の法治主義を護り、日本国憲法を破壊させないためには、この問題をこのままにしておくことは絶対にできないのです。

弁護士 泉澤章

投稿者: 東京合同法律事務所

2020.01.16更新

 建物を借りている場合、賃貸物件を修繕する義務があるのは大家(賃貸人)です(民法606条1項)。もっとも、借主(賃借人)が大家に修繕を請求しても応じてもらえないという事例があります。夏場に備え付きのエアコンが故障してしまったような場合、修繕は死活問題となります。そうすると、借主の方で修繕してその費用を大家に請求する、という方法が考えられます。
 ところが、現行の民法では、こういった場合に借主が修繕できることを明確に規定した条項がありませんでした。そのため借主の方は大家の承諾なしに修繕をすることに躊躇せざるを得ない状況がありました。

 そこで2020年4月1日施行の改正民法では、借地権の修繕権が明確に規定されました。具体的には、借主は、次の2つの場合に修繕をすることができます。

①賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき

②急迫の事情があるとき(以上民法607条の2)

 雨漏りや、夏場のエアコンの故障などは②急迫の事情があるときに該当すると思います。したがって、この場合、借主は大家の承諾なくとも修繕をすることが可能であり、修繕費用を大家に請求するということが可能となります。

弁護士 瀬川宏貴

 

【関連:瀬川弁護士はこちらの記事も執筆しています】→相続法が改正されました

投稿者: 東京合同法律事務所

2019.11.27更新

弁護士 鈴木眞

 本年は、台風19号(台風ハギビス)を中心とした台風による記録的豪雨、そして、それらによってもたらされた河川の氾濫等の水害に悩まされた1年となりました。被災された方々に対して、謹んでお見舞いを申し上げます。

 こうした水害、浸水被害ですが、わが事務所が所在する東京都港区も無縁ではありません。港区では浸水ハザードマップ等4つのハザードマップ備えていますが、それによれば、下水道や河川の排水能力を越える豪雨があった場合、当事務所周辺でも1~2メートル規模の浸水被害の発生が想定されています。当事務所のあるビルは9階建てですので、仮にそのような事態になっても生命の危険を回避することは可能と思いますが、それでも当事務所のあるビルの1階部分は水没する危険がありうるわけです。依頼者の方など、当事務所に来所されることがある関係者の方々は、そのことは十分に知っておいていただければと思います。

 さて、こうした被害が想定されているならば、つまり被害発生について「予見可能性」があるのなら、事前にそれを回避するための措置を講じ、あるいは回避可能な体制を構築すべきというのが法体系の要求するところとなります。わが事務所でも、東日本大震災を契機として、毛布や非常食、水を常備するなどの体制は一応整えています。
 ただ、こうした予見可能性に基づく回避措置ということが市民社会の中であまり強調されすぎると、被害に遭ったのは備えをしなかった者が悪いのだという安易な自己責任論に結びつきかねません。被害がありうることが想定されても、高齢者の方や障害者の方など、動くに動けない方々もたくさんいらっしゃいます。また、今回の台風でも大雨特別警報が解除された数時間後に大規模洪水が発生したため被災されたという方もたくさんいらっしゃいます。

 昨今の異常気象等の自然災害によって生じうる最悪の事態は千差万別であり、このような最悪の事態に遭遇する人々もまた千差万別です。不幸にも被災された方に対して、「予見可能性」がマジックワードになって「事後の救済」がおろそかとなることがないよう注意していかなければなりません。

以上

投稿者: 東京合同法律事務所

2019.09.19更新

弁護士 坂勇一郎

 10月1日の消費税増税への動きを背景に、キャッシュレス決済の宣伝や報道が増えています。身の回りでも、キャッシュレス決済をつかう人々が増えていますが、他方、キャッシュレス決済には不安があるので利用を控えている、金額を抑えている、銀行預金につながらないようにしている、等の声もよく聞きます。

<キャッシュレス決済への「不安」>
 こうした声には理由があります。例えば、キャッシュレス決済が無権限の第三者により不正利用された場合、利用者は、必ずしも救済されるとは限りません。利用規約での不正利用の場合の責任分担の定めはまちまちで、利用者保護に厚い規定とする業者もありますが、中には、不正利用の場合に利用者に責任を負わせることを原則としている業者もあります(注1)
 慎重な利用者は、利用規約を確認したうえで、決済事業者を選ぶこともできますが、多くの利用者にそのような選択を求めるのは、あまり現実的でないように思います。

<キャッシュレスの現状>
 最近目立つのは、スマートフォンへのフィッシング詐欺事例です(注2) 。また、海外旅行でカードを盗まれた、海外で昏睡強盗にあってスマートフォンを盗まれた等、海外の紛争事例も目立ちます。紛争事例の中には、本人に落ち度がないとは言い切れないものもありますが、被害にあった利用者が全額負担を強いられるというのは、特に被害額が多額の場合、酷なように思われます。
 犯罪グループ等の攻撃側は、相当に技術力を高度化させ、ノウハウを蓄積しています。IDやパスワードを盗取とみられる事例も後を絶ちません。このような状況に対して個々人で防御するには限界があります。
 少し前には、大手コンビニチェーンのキャッシュレス決済の不正利用とサービス提供停止が社会の耳目を集めました。キャッシュレス決済業者は、顧客獲得のために目先のサービスや利便性の売込みには熱心ですが、安全・安心よりも利便性を優先しがち、ともすると安全・安心は後回しになりがちであることも、懸念されます。

<不正利用と民法の原則>
 民法の原則では、本人が決済を行っていない以上、本人は責任を負わないはずです。もっとも、決済事業者のシステムがしっかりしていて、本人に過失があるなどの場合には、本人が責任を負うことになる場合があり得ます(注3)
 利用規約のうち、本人に過失がない場合も本人負担としているものは、消費者契約法上無効になり得ます。ですが、決済事業者が簡単に無効と認めてくれるかは、わかりません。
 本人に過失がある場合には、民法によっても、本人が責任を負うことはやむを得ません。このような考え方に基づいた利用規約を無効とするのは難しいと思われます。ですが、軽度の過失のときには、少なくない事例において本人に全額の負担を負わせることは酷なように思われます。

<預金の不正出金と預金者保護法>
 もはや20年前のことになりますが、当時、キャッシュカードの偽造・変造、盗取などにより、預金の不正出金が相次ぎ、被害者が多額の損害を負わされることが社会問題となりました。そこで、2005年に預金者保護法が制定され、不正出金の場合の責任は原則として金融機関が負い、利用者は軽過失の場合も4分の1の範囲のみの負担とされました。預金者保護法により、利用者には安心して預金取引を行う環境がもたらされるとともに、金融機関に不正出金対策の取組みをさらに促す重要な契機となりました。

<安全・安心とキャッシュレス決済>
 この間、利用者が安全・安心を求める声は高まっているように思われます。特にわが国では、安全・安心に疑問があり得る商品やサービスは、その拡大に大きな限界があります。
 キャッシュレス決済の普及を図るのであれば、安心・安全に対する「不安」を乗り越えることが必要なのではないでしょうか。安全・安心を犠牲にした利便性でなく、安全・安心が確保された利便性が求められているように思います。

<金融制度SG報告書と日弁連意見書>
 金融庁は、本年7月、決済と金融仲介に関する審議会報告書を公表しました(注4)。報告書の中では、不正利用がされた場合の責任分担のルールについて検討することが適当と提言されています。
 この報告書の公表を受けて、日本弁護士連合会は、本年9月、意見書を公表しました(注5)。意見書の中では、不正利用について、「利用者が責任を負わないことを原則としつつ、過失のある利用者の責任を一定額に限定するルールを横断的に設けるべき」ことが提言されています。
 今後、決済に関する法制度の整備に向けた議論がさらに具体化され、来年の通常国会には、改正法案が提出されるとみられています。
 決済法制を巡ってはさまざまな意見があり得ますが、利用者の安全・安心が確保された決済法制を実現すべく、引き続き尽力していく所存です。みなさんも、ぜひ、決済のあり方について関心を持ち、安全・安心の決済制度、決済サービスが実現・拡大していくように、利用者としての行動をとっていただきたいと思います。

<万が一のときには>
 不幸にして万が一、決済カードやスマートフォンを紛失したり、盗難にあった場合には、直ちに決済業者に連絡をして利用停止を求めるとともに、警察への届出等必要な対応をとることが大切です。また、できるだけ早く消費生活センターに相談をしてみることをお勧めします。

(追記)
キャッシュレス決済については、加盟店がキャッシュレス業者から不適切な扱いを受けることを防ぐ課題、個人情報保護や情報の適切な利用に関する課題も重要です。これらについては、他日を期したいと考えます。

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(注1):キャッシュレス推進協議会は「コード決済における不正利用に関する 責任分担・補償等についての規定事例集」(2019年8月)を公表している。
(注2):https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190826/k10012049231000.html
(注3):表見代理や準占有者への弁済。
(注4):https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190726.html
(注5):https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2019/190912.html 同意見書では、無権限者による不正利用のルールの他、加盟店管理制度や、加盟店に問題がある場合の返金ルール等についても、提言している。

投稿者: 東京合同法律事務所

2019.08.19更新

弁護士 久保田明人

 当事務所OBの桜木和代弁護士が共同代表を務める「日本カンボジア法律家の会」は、設立された1993年からカンボジアの法学教育支援にたずさわってきております。昨年、創立25周年の記念式典が首都プノンペンの大学で開催され、私も出席させていただきました。
 一般的に、途上国は、法制度や人材が不十分なため、先進諸国による法制度整備支援や法学教育支援が求められるのですが、カンボジアは少し事情が異なり、他の途上国以上に支援が必要な状況があります。ご承知のように、カンボジアは、1970年代からのポル・ポト政権下で、それまでの法制度が徹底的に廃止され、また、学識があると思われた者は虐殺されました(裁判官や弁護士など法律家で生存できた人は一桁と言われています。)。そのため、カンボジアは、1993年に民主化したものの、復興の基盤となる法制度を自力で整備したり、法律家を養成したりすることができない状況でした。
 そこで、桜木弁護士をはじめ数名の有志法律家が、法律面でカンボジアの復興を支援しすることを目的として同会を1993年に設立し、今日まで活動を続けてきています(現在では、同会の他にも、日本弁護士連合会やJICAも、カンボジアの法制度整備支援や法学教育支援に取り組んでいます。)。
 同会の取り組みとしては、法学教育支援事業に主力を注いでおり、大学での法律科目の講義やクメール語教材の提供などをしてきています。民主化から四半世紀経っても、法教育できる人材が少ない、母国語での教材がないなど、十分な法教育ができる環境であるとは言い難く、同会の取り組みはカンボジアにとってまだまだ必要不可欠なものと感じます。
 毎年8月、同会の弁護士や大学教授がカンボジアへ行き、大学での講義をしています。今年も8月22日から1週間のプログラムで講義があり、私もまた同行させていただく予定です。
 私は同会に昨年からの参加なので、講義はまだしませんが、弁護士業とは異なる分野でも自分が役に立つのであれば将来的にはぜひやってみたいと思っており、引き続き同会の活動に参加していく予定です。

投稿者: 東京合同法律事務所

2019.07.23更新

「家族のために身を粉にして働いてきたのに、私の苦労はなんで評価されないの?」

相続が発生したとき、法律の理不尽さに嘆く方は多いと思います。
でも大丈夫!
2019年7月から実施される改正民法で相続が大きく変わりました。
介護に子育てに、身を粉にして働いてきた方々にかかわる部分は主に以下の4つです。

(1)夫が亡くなった後も、当面の生活費が助かる!
  → 相続人は、自己の法定相続分の3分の1までは単独で預貯金の払い戻しができる。

(2)夫亡き後も、相続取り分を減らさずに家に住み続けることができる!
  ① 贈与の優遇措置 → 生前、婚姻20年以上の夫婦が、配偶者に対し、居住用不動産を贈与(遺贈含む)していた場合は、贈与不動産は、遺産の先渡しとは扱われず、その分、配偶者の遺産の取り分が増える。
  ② 配偶者居住権(この改正のみ2020年4月から施行) → 相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた配偶者は、配偶者居住権を取得し、終身又は一定期間、その建物に無償で居住することができる。

(3)介護が評価され、相続人ではない嫁にも取り分ができる!
  → 相続人以外の被相続人の親族が、無償で、被相続人の療養看護等を行った場合には、相続人に対して金銭請求ができる。

(4)遺留分制度による複雑な共有関係。でも、これからはお金で請求できる!
  → 遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができる。

この改正民法は、7月1日以降に生じる相続から適用されます。
ただ、まだまだ法律が施行されたばかりで、どんなケースでどんな結果が出るのか、判らないところもあります。こんなときこそ、経験豊富な弁護士に相談して、改正民法を最大限に活用して、法律をあなたの強い味方にするのが得策かと思います。

知っていたかどうかで、結果が全く違ってくることもある、そんな相続法改正、是非、ご自分でもチェックして、疑問な点は弁護士にご相談ください!
もちろん、東京合同法律事務所にご相談いただければ、今回の改正に限らず、「やっぱり専門家に相談して良かった」と思っていただける解決策をご提案させていただきます。
改正民法と弁護士を味方に、相続を賢く乗り切りましょう!

弁護士 加納小百合

投稿者: 東京合同法律事務所

2019.06.11更新

弁護士の緒方です。
最近、単身の70代の女性の方が長期間にわたって多額の現金をだまし取られた事件についてご相談を受けました。
この方は、信頼していた方から良い投資信託の商品があると持ち掛けられ、数年間にわたって定期的に金銭を渡していました。
遺言書を作ろうとしたときに、預けたお金が銀行口座に存在していないことがわかり、詐欺に気づいたそうです。

高齢の方を狙う詐欺事件が後を絶ちません。
不安を感じていらっしゃる方のために、今回は弁護士による見守り契約をご紹介したいと思います。

最近、見守り契約(ホームロイヤー契約)という契約が増えています。これは、主に高齢者や障がい者の方が感じている将来の生活や財産管理等に関する不安を解消するために、法律相談や財産管理などを通じて継続的な支援を行う弁護士を選任するものです。個人の顧問弁護士のようなものです。
見守り契約を結んでおくことで、弁護士が財産関係でおかしい点がないか確認することや、個人の方が弁護士に気軽に相談することができるようになります。

依頼者の方々の状況やニーズに応じて、①見守り、②財産管理、③任意後見契約の3つの契約を自由に選択できます。

まず、①の見守り契約は、1~3か月に一回など定期的にご自宅に伺って安否を確認し、必要な時(ご入院時など)に支払いを代行することができます。
②の財産管理契約では、①の見守りに加えて、通帳や印鑑をお預かりし、預金や年金の管理を行い、各種支払いを代行することをいたします。
③の任意後見契約は、将来、依頼者の方の判断能力が不十分になった場合に備えて契約し、判断能力が低下した段階で、予め指定した弁護士に任意後見人として財産管理を行ってもらうというものです。成年後見制度では、近親者や裁判所が指定した方が代理人になりますが、任意後見契約では判断能力が低下する前にご自身の意思で任意後見人や契約内容を決めておくことができます。なお、判断能力が低下した時点で別途、裁判所が任意後見監督人をつけることになります。

自分らしい老後を安心して過ごすために、見守り契約は有効だと思います。ご興味のある方はぜひ一度ご相談ください。

 

この記事は緒方蘭弁護士が執筆しました。【関連:頼れる身内がいません。入院やお葬式のためにどんな準備をすればいいですか?後見についてのお悩み家族や離婚に関するお悩み(ホームロイヤー)

投稿者: 東京合同法律事務所

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