建物を借りている場合、賃貸物件を修繕する義務があるのは大家(賃貸人)です(民法606条1項)。もっとも、借主(賃借人)が大家に修繕を請求しても応じてもらえないという事例があります。夏場に備え付きのエアコンが故障してしまったような場合、修繕は死活問題となります。そうすると、借主の方で修繕してその費用を大家に請求する、という方法が考えられます。
ところが、現行の民法では、こういった場合に借主が修繕できることを明確に規定した条項がありませんでした。そのため借主の方は大家の承諾なしに修繕をすることに躊躇せざるを得ない状況がありました。
そこで2020年4月1日施行の改正民法では、借地権の修繕権が明確に規定されました。具体的には、借主は、次の2つの場合に修繕をすることができます。
①賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき
②急迫の事情があるとき(以上民法607条の2)
雨漏りや、夏場のエアコンの故障などは②急迫の事情があるときに該当すると思います。したがって、この場合、借主は大家の承諾なくとも修繕をすることが可能であり、修繕費用を大家に請求するということが可能となります。
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