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2023.05.22更新


1 特別受益とは
 相続人の中に、被相続人から特別な金銭援助などを受けた人がいる場合、その受けた利益のことを特別受益といいます。
法が定める一定の要件を満たしている場合には、その特別な利益を受けた相続人は、いわば相続分の前渡しを受けたものとして扱い、遺産分割においては、その分はすでに相続したものとして計算して、相続人各人の取り分(相続分)を算定することになります。
例えば、父親(X)が遺言を作成しないまま亡くなったとして、相続人がその妻(A)と子が二人(BとC)だったとします。
父親(X)の遺産が相続開始時に1200万円であったとすると、特別受益を考えなければ、妻(A)が2分の1の600万円分を相続し、子ら(BとC)はそれぞれ4分の1の300万円分ずつ相続するという計算になります。
しかし、父親(X)の生前に、子のうちのひとり(C)が、特別に自宅の建築資金として100万円の贈与を受けていた場合で考えると、特別受益を考慮することになり、上記とは異なる処理をすることになります。
生前に100万円を贈与していた分も遺産の総額に入れて考えることになります(みなし相続財産)。そこで、遺産は1300万円であったと考え、妻(A)の相続分は650万円、子ら(BとC)の相続分はそれぞれ 325万円の計算になりますが、すでにCは100万円を相続分の前渡しとして受けていたということになりますので、遺産分割としては、妻(A)が650万円分、子(B)は325万円分、子(C)は225万円分を取得するという計算になります。
2 実際の協議ではどのように扱えばよいでしょうか
 上記1ではわかりやすい事例をあげましたが、実際には、特別受益が認められるのか、認められるとしてもいくらの範囲で認められるのかなどは、非常に微妙な判断となる事例が多いと思います。
 様々な主張がなされることが多いですが、特別受益による修正は、あくまで例外的な扱いですので、何でも認められるわけではありません。法の定める要件に該当している必要がありますし、それなりに確かな証拠がある必要もあります。
 実際には、裁判所で争いとなった場合でも、特別受益があったとは認められない場合も多いのです。
 遺産分割を行うにあたり、特別受益の問題が争点となりそうな場合には、法の定める要件を満たしているか、確かな証拠はあるのかなどを検証する必要があります。最終的には、裁判所が判断することになりますが、その見通しなどを弁護士に相談するなどしながら実際の協議を行う方がよいでしょう。
弁護士 上原 公太

投稿者: 東京合同法律事務所

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