トピックス

2018.08.25更新

① 改正相続法の施行日は2019年7月13日まで

 本年(2018)年7月、民法(相続法)が改正されました。昨年(2017年)5月に民法(債権法)が改正されたのに続き、2年続けて民法が大きく変わることになりました。
 施行時期を見ると、改正債権法の施行が2020年4月1日であるのに対し、改正相続法の施行は2019年7月13日までの日とされており、相続法の施行まで1年を切っています。
 相続法の改正について、報道では配偶者居住権の創設が取り上げられることが多いですが、個人的に実務への影響が大きいのは遺留分の改正ではないかと思います。今回の改正で遺留分制度が大きく変わることになりました。

② これまでの遺留分制度
 これまでは、相続人が、遺留分を遺言などで遺産を取得した人から取り戻そうとするとき、不動産など遺産の一部を物として取り戻すものとされていました(物権的効果)。遺留分の請求を受ける側で金銭で支払うことを申し出ることはできましたが(価格弁償)、遺留分を請求する側で金銭による支払いを求めることはできませんでした。
 しかし、これでは権利が共有となって紛争が解決しないという問題があります。また、権利関係を複雑にしてしまうという問題もありました。
 例えば、遺留分行使の結果、兄弟で不動産を、兄の持分1億1123万分の9268万1758、妹の持分1億1123万分の1854万8242で共有するといったケースがありました。私も実際にこのような判決を取って登記を移転したことがあります。

③ 改正後の遺留分制度
 今回の改正では、遺留分の権利を金銭で請求できるものとしました(金銭債権化)。その結果、遺留分の行使として、〇〇万円を支払えという請求ができるようになります。シンプルになってよいと思いますが、今後これまでにはなかった次のような問題点も出て来ることになると思います。
 遺留分を請求する側としては、〇〇万円を払えという判決を得たとしても、相手方に現金や預金がなければ、すぐに金銭を回収することはできません。相手方の不動産等を差押えて、競売にかけるなどの手続を別途取らなければなりません。
 遺留分を請求される側としては、これまでは遺産である不動産の名義を移せばよかったところ、改正後は、そうはいかないことになります。金銭債権化により、遺産以外の自分の預金や自宅も差押えの対象となります。評価額が高いがすぐに売れないような不動産を遺言等で取得した場合、自己の財産から遺留分を支払わなければならないようなケースも出て来ると思います。

弁護士 瀬川宏貴

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.08.21更新

① 当事務所の所在地である東京都港区の人口は、平成28年1月現在で約24万人です。うち75歳以上の人は約2万人、65歳以上だと約4万2000人であり、高齢化率は全人口中17.40パーセントに達するとされています。おおむね6人に1人が「高齢」であるということになります。少子高齢化とか、棺桶型の人口分布といった巷間叫ばれている事態は、港区も例外ではありません。
 「高齢」とくくられる人たちの中にはさまざまな生活があると思いますが、介護や社会保障費等々、高齢世代を支える若年世代の負担が大きくなる将来像を見据えると、支えられる高齢世代もまた、必然的に「老い」や「死後」をどうするか、真剣に向き合う機会が増えることになるのではないかと思います。

② こうした社会状況を背景としてか、法律の分野においても、遺言とか、成年後見とか、信託といった高齢者の財産管理や処分といった分野の重要性が高まっています。「終活」などという言葉も近年もてはやされるようになりました。
 自分のことで子や、あるいは周囲の人に迷惑をかけたくないということは、年を重ねるにつれ、誰もが痛切に感じ、想うところなのでしょう。

③ ただ、その迷惑をかけないための手立てが時に深刻な対立を死後引きおこしてしまうことも少なくありません。
 たとえば、子どもたちの行く末を案じ、よかれと考えて行った遺言や生前贈与でも、それが残された子にとっては意外であり、受け入れがたいものであると、中にはそうした遺言や生前贈与は亡父あるいは亡母の真意であったとは到底考えられないと思考する人もでてきます。
 そうすると、亡父や亡母は当時認知症に陥っていて、その遺言や生前贈与は無効であるとの紛争が起き、訴訟にまで発展することがしばしばあるのです。実務上、こうした訴訟類型はある意味一般的であり、よく起きるものと言っても過言ではありません。
 そして、こうした訴訟類型では、認知症、つまり痴呆の有無が争点になります。無効を主張する側は、亡父あるいは亡母の行動が生前いかにおかしかったかというエピソードを多数集めて主張を行い、反対に、有効を主張する側は、亡父あるいは亡母がいかに健常であったかを示すエピソードを多数集めて反論を行います。
 否応なく、老齢化での生活状況の全般が訴訟での証明主題となり、それをめぐって血を分けた親族同士が激しく争いを展開することになります。それはやはり、悲劇といってよいものでしょう。

④ この認知症ということですが、一般的には脳の器質的障害であると定義されます。
 認知症の原因疾患として最も多いアルツハイマー型では脳の萎縮・消失が、脳血管型では脳梗塞や脳出血が、レビー小体型では脳内に異常なタンパク質が溜まるという現象が生じるとされています。
 そして、こうした脳の器質的障害は、現在ではCTやMRIなどの画像で診断が可能です。3のような事案で先日脳神経外科の専門医の先生にお話を聞く機会がありましたが、アルツハイマーなどは、MRI画像をコンピュータ解析することで脳が何パーセント萎縮しているかを数値化し、3D画像化することも可能なのだそうです。
 こうした脳の記録が時々にわたって蓄積・保管されていれば、認知症をめぐる死後の紛争というのは、相当程度未然に防げるのではないかと思います。逆にいうと、こうした脳の記録がないと紛争が泥沼化するといえるかもしれません。
 老いを自覚し、かつそれを記録化することは辛いことだとは思いますが、次世代に無用の紛争を起こさず、禍根を残さないためには、老いを自覚したら脳ドックなどで自分の脳を記録化しておくことが大事である。わが子の安らかな寝顔を見るにつけ、自戒を込めて痛切に感じる今日この頃です。

弁護士 鈴木眞

投稿者: 東京合同法律事務所

2018.08.02更新

1 「預託商法」業者の破綻

 2017年12月、大手「預託商法」業者であるジャパンライフ㈱が実質破たんし、2018年3月、破産開始決定がされた。報道等によれば、被害者は全国で約7000名、被害総額は約2400億円にのぼる。全国に弁護団が立ち上がり、被害救済活動が進められている。
「預託商法」については、古くは豊田商事事件、近年でも安愚楽牧場事件において、大規模な被害が生じている。

2 「預託商法」

「預託商法」は、形式的には、物を買って、これを事業者にレンタルする、物に関する契約の形をとる。
 しかし、実質は、投資リターンを得ようとする、投資契約に他ならない。契約者は、ⅰ事業者に資金を渡して、ⅱ事業者に物を買ってもらい、ⅲ事業者にその物のレンタル等の事業をしてもらい、ⅳ事業収益からリターンを得ることが、予定される。

3 「預託商法」の被害

 契約者は、事業者がまじめに仕事をしてくれることを前提に資金を委ねる。
 ところが、適当に資金を集めて消えてしまう業者、約束どおりに物を買わない業者、資金を流用する業者、契約者にうその報告を行う業者が、後を絶たない。長年働いた蓄えを失う人、老後の生活資金を失う人を、多く生み出すことになる。

4 現在の特定商品預託法による規制では不十分 

 現行の特定商品預託法では、投資者は、資金を出すときに、契約内容等が書かれた書面とともに重要な事項を告げられ、事業者が事業を始めた後は、求めれば業務や財産状況についての書類を見せてもらえる。また、消費者庁も行政処分権限を持っている。しかし、極めて不十分であり、現にジャパンライフ㈱の被害も防げなかった。

5 投資の実質を踏まえた実効ある規制が求められる

「預託商法」においても、いいかげんな事業者が資金集めをすることをしっかり防いでもらう必要があるし、事業者がきちんとまじめに仕事を続けてもらえるよう規制を整える必要がある。 日本弁護士連合会は、2018年7月12日付で、「いわゆる『預託商法』につき抜本的な法制度の見直しを求める意見書」※ を公表した。
 意見書は、①「預託商法」を投資取引の規制法である金融商品取引法により規制すること、及び、②現行の金融商品取引法を拡充し、事業者がきちんと仕事をすることなどの義務付け、自主規制団体によるモニタリングや行政による監督等を求める。投資者保護の観点から、重要な提言となっている。
 今後、関係機関において検討が進められ、早期にメリハリのある規制が実現されることが期待される。

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2018/opinion_180712.pdf

弁護士 坂勇一郎(日弁連消費者問題対策委員会の一員として意見書の議論に参加しました。)

投稿者: 東京合同法律事務所

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