当事務所の泉澤章弁護士の書評がしんぶん赤旗日曜版(2024年10月20日号)の読書コーナーに掲載されました。
レビューした本は『袴田事件 神になるしかなかった男の58年』(文春新書)。著者の青柳雄介さんは2006年から袴田事件の取材を始め、袴田巖さんが48年ぶりに釈放されてからは袴田さんに密着取材するため2年ほど浜松に住んでいたそうです。
本書では、袴田巌さんと姉の秀子さん、再審に奔走した弁護団と支援者の方々、そして事件を取り巻く人々の姿が粘り強い取材によって記録され、とても読み応えのある内容となっています。特に、各章の冒頭で袴田さんが留置施設や獄中から家族や支援者に宛てた手紙や日記の一部が紹介されており、読む人の心に突き刺さってくるものがあります。
『神さま。僕は犯人ではありません。僕は毎日叫んでいます。ここ静岡の風に乗って、世間の人々の耳に届くことを、ただひたすらに祈って僕は叫ぶ』
(第20章、逮捕から半年後に母親に宛てて書いた手紙 より)
この叫びが届くまで、結局58年もかかってしまいました。何の落ち度もない一般市民がある日突然、証拠を捏造した捜査機関によって恣意的に犯人とされ、身に覚えのない罪で死刑が確定してしまう。50年近く世間と完全に遮断されて、日々死の恐怖に怯えながら生き続ける。この悪夢のような話がまぎれもない現実であり、再審を勝ちとるためにたたかい続けた人々の姿をこの本は描き出しています。
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