トピックス

2024.12.20更新

 当事務所の泉澤章弁護士寄稿の記事が全国革新懇ニュース465号に「再審法を、真にえん罪被害者救済の制度とするために」という見出しで掲載されました(2024年12月翌年1月合併号)。

 こちらの記事では、現行の再審法における構造的欠陥として、警察や検察に保管された証拠の開示を義務づける規定がなく裁判所の判断次第とされていることを指摘しています。袴田事件や福井女子中学生殺人事件で再審開始の根拠となった新証拠は、それらがもっと早く出されていれば再審開始がこれほど長引くことはありませんでした。また、そうして再審を開始するという決定を裁判所が出しても、検察官による不服申立によって再審開始決定が「確定」するまで約9年あるいは約13年もの年月がかかってしまっていることを指摘しています。検察官は、本当に「有罪」であれば再審公判で争えばよいにも関わらず、再審をするという裁判所の判断に不服申立をしているのです。

 これら再審法の構造的問題点を改め、真に無実の人を救う制度にするために日弁連や国民救援会はじめ多くの市民運動が声をあげてきました。各自治体からの再審法改正を求める意見書の採択も420にのぼり、国会でも超党派の再審法改正の議連が今年創設されています。2025年の国会は再審法改正実現に向けたヤマ場となります。無実の人を救う再審法の実現に向け、ぜひ皆さまもご注目ください。

【関連】ACT for RETRIAL 日弁連再審法改正プロジェクト(https://www.nichibenren.or.jp/activity/human/retrial/act_for_retrial/lp.html)

【全国革新懇ニュース】https://kakushinkon.org/news
 全国革新懇(平和・民主・革新の日本をめざす全国の会)は、①「日本の経済を国民本位に転換し、暮らしが豊かになる日本をめざす」、②「日本国憲法を生かし、自由と人権、民主主義が発展する日本をめざす」、③「日米安保条約をなくし、非核・非同盟・中立の平和な日本をめざす」という3つの目標の実現に向け、思想・信条・支持政党の違いを超えて、1981年5月26日に結成された団体です。

革新懇ニュース645号

投稿者: 東京合同法律事務所

2024.12.12更新

 当事務所の泉澤章弁護士の論文が『月刊憲法運動』第536号(2024年12月号)に掲載されました。タイトルは『袴田判決から再審法改正について考える~冤罪からの救済実現に向けて~』です。論考では、戦後5例目の死刑再審無罪となった袴田判決で露呈した刑事司法制度の構造的欠陥と歴史的経緯を指摘し、人権救済規定として再審法は本来どうあるべきなのかその要点を詳述しています。

 人権保障を蔑ろにして戦争に突き進んだ明治憲法への反省から、現行の日本国憲法は人権尊重の方向に舵を切り、刑事司法に関しても人権保障規定がいくつも盛り込まれました(憲法31~40条)。その観点から、再審制度については「有罪の言渡を受けた者の利益のために、これ(※注:再審の請求)をすることができる(刑訴法435条)」として「無罪方向での再審」だけが明確に規定され人権救済規定として生まれ変わった、はずでした。実際には、19条しかない刑訴法条文は詳細な手続規定とは言えず、再審開始をめぐる運用は裁判所の裁量次第となっており、再審の開始は「ラクダが針の穴を通るより難しい」と揶揄され、長らく「開かずの門」となっていました。白鳥事件など幾度もの再審開始に向けた努力がなされ一歩ずつ前進が勝ちとられてきましたが、再審法の条文自体は現在にいたるまで改正されていません。泉澤弁護士は、人権救済規定として機能するために重要な点として、①再審請求審における証拠の全面開示、②再審開始決定に対する検察官の不服申立の禁止、③手続規定の明確化、という3点の重要性を論文で詳述しています。

 泉澤弁護士の論文は『月刊憲法運動』第536号(1冊400円)に掲載されておりますので、多くの皆さまにぜひご一読いただければと存じます。

月刊憲法運動】1965年、憲法学者や宗教者など33名が発足させた『憲法会議』の発行する月刊情報誌です。憲法会議は、日本国憲法の規定する民主的自由をまもり、平和的・民主的条項を完全に実施させ、憲法の改悪を阻止することを目的とする団体です。

月刊憲法運動536号

投稿者: 東京合同法律事務所

2024.10.17更新

 当事務所の泉澤章弁護士の書評がしんぶん赤旗日曜版(2024年10月20日号)の読書コーナーに掲載されました。
 レビューした本は『袴田事件 神になるしかなかった男の58年』(文春新書)。著者の青柳雄介さんは2006年から袴田事件の取材を始め、袴田巖さんが48年ぶりに釈放されてからは袴田さんに密着取材するため2年ほど浜松に住んでいたそうです。
 本書では、袴田巌さんと姉の秀子さん、再審に奔走した弁護団と支援者の方々、そして事件を取り巻く人々の姿が粘り強い取材によって記録され、とても読み応えのある内容となっています。特に、各章の冒頭で袴田さんが留置施設や獄中から家族や支援者に宛てた手紙や日記の一部が紹介されており、読む人の心に突き刺さってくるものがあります。

『神さま。僕は犯人ではありません。僕は毎日叫んでいます。ここ静岡の風に乗って、世間の人々の耳に届くことを、ただひたすらに祈って僕は叫ぶ』
(第20章、逮捕から半年後に母親に宛てて書いた手紙 より)

 この叫びが届くまで、結局58年もかかってしまいました。何の落ち度もない一般市民がある日突然、証拠を捏造した捜査機関によって恣意的に犯人とされ、身に覚えのない罪で死刑が確定してしまう。50年近く世間と完全に遮断されて、日々死の恐怖に怯えながら生き続ける。この悪夢のような話がまぎれもない現実であり、再審を勝ちとるためにたたかい続けた人々の姿をこの本は描き出しています。

【紀伊國屋WEBストア】https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784166614530
【Amazon】https://www.amazon.co.jp/袴田事件-神になるしかなかった男の58年-文春新書-青柳-雄介/dp/4166614533

しんぶん赤旗日曜版 読書コーナー

投稿者: 東京合同法律事務所

2024.02.07更新

 ここでご紹介する文章は、私(泉澤章)が加入している法律家団体、自由法曹団の東京支部総会へ向けて報告したものです。再審制度は無実の人を救済する最終手段ですが、これまで多くの問題点が指摘されながら、戦後一度も改正されたことがありません。現行の再審制度がほんとうに無実の人を救済する法制度として機能するよう、私たちは法改正を強く求めています。ぜひご一読ください。

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再審法改正へ向けた取り組み

東京合同法律事務所 泉澤章

“再審法”改正の必要性

 今年で事件発生から58年目となる袴田事件は、昨年3月に再審開始決定が確定し、現在静岡地裁で再審公判の審理が続いている。今年夏ころには、戦後5件目となる死刑再審の無罪判決が言い渡されるはずであると聞いている。犯人とされてきた袴田巌さんは、2014年の静岡地裁村山決定によって釈放されているものの、まだ完全な自由を得ているわけではない。再審無罪判決が確定することによって、袴田さんは名実ともに自由の身になる。そしてそれが実現するときは、もう目の前に来ている。
 しかし、この状況を手放しで喜んでばかりもいられない。袴田さんは、今年3月で88歳になる。残された人生の時間は率直にいってそう長くはない。一刻も早い再審無罪判決が言い渡されるべきであるが、振り返ってみれば、村山決定が出てから今年で10年目にある。もし村山決定が確定して再審公判がすぐに始まっていれば、袴田さんは70代で完全な自由を得られたかもしれない。なぜもっと早く再審が開始され、もっと早く再審公判が始まらなかったのか。そこには、他の再審事件にも通じる、現行刑事再審制度(刑事訴訟法第4編の再審に関する規定、以下「再審法」)が抱える大きな問題が立ちふさがっている。

改正すべき2つの点

 現行再審法が抱える問題のなかでも、特に重要な点の一つは、現行の再審請求審において証拠開示規定が存在しないことである。証拠開示規定がないため、現行法では担当裁判体が積極的に証拠開示を勧告しない限り、検察・警察側が保管している証拠を請求人が見ることはできない。しかし、再審請求審で積極的に証拠が開示された事件では、請求人に有利な証拠が発見され、それが再審開始に必要な新証拠となった例も多い。現行再審法のもとでは、結局、裁判体のいわば「当たりはずれ」で結論が決まりかねない。
 もう一つは、一度高いハードルをクリアして再審開始決定が出ても、現行法では検察が異議申立てをすれば開始決定が確定せず、再審公判も開かれないことである。袴田事件も2014年の開始決定に対する検察官の即時抗告が認められていなければ、とっくに裁判は終わり、袴田さんの完全な自由はもっと早く訪れていたことだろう。異議申し立てを認めずとも、検察がどうしても争いたいのなら、再審公判で争えばよいのである。
 このほかにも、現行再審法について改正すべき点は多々指摘されているが、少なくともこの2点については、早急に改正されなければならない。

再審法改正の機運の高まり

 これまでも、現行再審法を新憲法の趣旨(人権救済規定)に則って改正すべきという運動は、日弁連を中心に続けられてきた。特に、白鳥・財田川決定以降、死刑再審4事件が次々と再審無罪となった1970年代から80年代にかけては、日弁連だけでなく、政党や労組、市民団体の強い支持によって、法案が国会で審議されたこともあった。しかしこの時は、法務・検察当局の強い抵抗と、白鳥・財田川決定の意味を矮小化しようとする裁判官らの動きに抗し得なかった。その結果、1990年から2000年代初頭にかけて“再審冬の時代”が訪れ、著名事件での再審開始決定がほぼ皆無となり、再審法改正運動も徐々に立ち消えてしまった。
 風向きが変わったのは、2010年代に入ってからである。2010年の足利事件を皮切りに、布川事件、東電女性社員殺害事件、東住吉放火殺人事件、松橋事件、湖東記念病院事件と、立て続けに再審開始・無罪となる事件がマスコミを賑わせるようになった。死刑事件も、名張事件では後に取り消されたものの一度再審開始決定が出た。袴田事件では前述したように再審開始決定が確定している。このように、再審のいわば“新時代”をむかえたことで、再審に対する市民の注目も集まってきた。そこで、これら再審事件を支援してきた日弁連の人権擁護委員会を中心に、再審法のなかでも、現実の再審事件で特に問題となっている上記2点について、あらためて再審法を改正すべきとの運動を開始した。

再審法改正運動の現在地

 日弁連では、2019年の徳島人権大会で、上記2点を含む再審法の改正を速やかに行いよう求める内容の決議を採択し、2022年には再審法改正実現本部(日弁連会長が本部長)を設置し、全国的な弁護士会の取り組みとして運動を進めている。また、日弁連だけではなく、市民団体では日本国民救援会が全国各地で再審法改正の意見書採択運動を強力に押し進めており、2023年末の時点で、実に170近い自治体で意見書が採択されている。  
 今年は袴田事件の再審無罪判決が確定するであろう年であり、再審法改正の気運が最も盛り上がるであろう年でもある。この機運を逃せば、再審法改正の実現はまた延びてしまいかねない。
 東京三会でも、今年は再審法改正のシンポが予定されていると聞いている。日弁連で再審法改正運動を担っている団員は多く、また全国で再審事件の弁護にあたっている団員も数多い。ぜひ東京支部の団員も、積極的にこの運動へ参加していただきたい。

追記:この原稿を脱稿した直後、袴田事件弁護団長の西嶋勝彦先生の訃報が飛び込んできた。袴田さんの完全無罪判決を聞かずに亡くなられたことは、ほんとうに残念としか言いようがない。それとともに、もし2014年の再審開始決定に対して検察官異議申立てが認められていなかったら、とうに無罪判決を聞いていただろうにと、歯噛みする思いである。西嶋先生が最後まで強く求めていたこの再審法改正は、何としても私たちの手で実現しなければならない。

以上

投稿者: 東京合同法律事務所

2023.07.18更新

 

前回のコラムで精神障害のある方の刑事弁護活動について概略を書かせていただきました。詳細は下記リンクをご参照ください。
精神障害のある方の刑事弁護活動 (tokyo-godo.com)

今回のコラムでは、医療観察法について書かせていただきます。

1 医療観察制度の概要
医療観察法は、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」という法律の略称で、心神喪失又は心神耗弱の状態(精神障害のために善悪の区別がつかないなど、刑事責任を問えない状態)で、重大な他害行為(殺人、放火、強盗、 強制性交等、強制わいせつ、傷害)を行った人に対して、適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的とした制度です。
本制度では、心神喪失又は心神耗弱の状態で重大な他害行為を行い、不起訴処分となるか無罪等が確定した人に対して、検察官は、医療観察法による医療及び観察を受けさせるべきかどうかを地方裁判所に申立てを行います。
検察官からの申立てがなされると、鑑定を行う医療機関での入院が行われます(これを鑑定入院といいます)。鑑定入院期間は、原則として2か月で、この間に、鑑定医による鑑定及び社会復帰調整官による生活状況調査が行われます。その後、審判期日が開かれ、裁判官と精神保健審判員(必要な学識経験を有する医師)の各1名からなる合議体による審判で、本制度による処遇の要否と内容の決定が行われます。
審判の結果、医療観察法の入院による医療の決定を受けた人に対しては、厚生労働大臣が指定した医療機関(指定入院医療機関)において、手厚い専門的な医療の提供が行われるとともに、この入院期間中から、法務省所管の保護観察所に配置されている社会復帰調整官により、退院後の生活環境の調整が実施されます。
また、医療観察法の通院による医療の決定(入院によらない医療を受けさせる旨の決定)を受けた人及び退院を許可された人については、保護観察所の社会復帰調整官が中心となって作成する処遇実施計画に基づいて、地域において、厚生労働大臣が指定した医療機関(指定通院医療機関)による医療を受けることとなります。
なお、この通院期間中においては、保護観察所が中心となって、地域処遇に携わる関係機関と連携しながら、本制度による処遇の実施が進められます。

2 医療観察審判での弁護士の役割
 医療観察制度では弁護士は「付添人」という立場で手続きに関与することができます。検察官が、医療観察審判を申し立てると、裁判所は、手続きにおいて、必ず付添人を選任しなければなりません(必要的付添人事件といいます)。付添人は、対象者(手続きの対象となる人)や保護者(裁判所から選任された親族等)が私選契約で自ら選ぶこともできますし、弁護士費用を十分に支払えない場合には、裁判所が国選付添人に選任します。なお、国選付添人として裁判所から選任される弁護士は、弁護士会の研修を受け、専用の名簿に登録されている者に限られます。
 付添人として選任された弁護士は、鑑定入院先に面会に行き、対象者の言い分を聞き、必要に応じて鑑定入院の決定を争ったり、審判に向けて対策を協議します。審判は、鑑定入院決定が下されてから2カ月以内に開かれますので(法律上は1か月の延長が認められており、実務上ほとんど延長されます)、付添人は、社会復帰調整官との協議や、鑑定医との面談、家族との連絡等の必要な活動を限られた時間の中で行う必要があります。裁判所での審判において、「この法律による入院の必要」、すなわち、①疾病性、②治療反応性、③社会復帰阻害要因の3要件を審理しますので、入院決定を避けるためには、これらの要件が存在しないことを示す必要性があります。付添人としては、家族の受け入れが可能なのか、受け入れが難しい場合にはグループホームを探すなど、対象者の住居を確保したり、その他にも収入を確保するといった活動を行う必要があります。そして、審判までの間にこれらの活動をまとめた意見書を裁判所に提出します。

3 解決事例
医療観察制度は、国が医療を施す代わりに対象者を強制入院させる制度で、入院決定が下された場合には、概ね3年は指定入院医療機関での入院を余儀なくされる制度で、対象者にとっては長期の身体拘束を強いられます。もちろん、病状が芳しくなく、その方の社会復帰のために強制的な入院が必要な場合もあります。しかし、医療観察入院は長期の身体拘束を伴う点で、審判では慎重な判断がなされなければならないことは言うまでもありません。
私は、アルコール依存症の診断を受けた対象者の方に国選付添人に選任されたのですが、その方は鑑定入院中に、事件(傷害)の原因となった幻聴は治療によって消失していました。しかし、鑑定医の意見は医療観察法による入院を行うというものでした。私は、社会復帰調整官と協働して、福祉事務所に赴き、生活保護の申請を行って収入面を確保しました。また、この方は家族から受け入れを拒否されてしまったので、住居を探す必要があり、更生保護施設を探し住居を確保しました。また、審判に向けて、複数回面会に赴き、審判での受け答えの練習や、今後の社会復帰のための計画を一緒に練り、審判前に不処分(医療観察法での処分を行わないこと)を求める意見書を提出しました。その結果、これらが功を奏したのか、不処分という結果となり、対象者は鑑定入院先から退院し、社会生活に復帰しました。対象者の社会復帰のためにどの処遇が望ましいのか、必要な社会資源を利用し、疾病性がないことや社会復帰阻害要因がないことを裁判所に適切にアピールし、鑑定医の意見に反して不処分という結果を得た事例になります。

4 おわりに
医療観察事件は、刑事事件の延長にありますが、あまり弁護士の中でもなじみのある分野ではありません。医療観察の対象となる事件については、専門的知識のある弁護士に依頼して、福祉関係者らと逮捕段階から支援体制を整えていくことが肝要です。もしもご家族などが逮捕され、障害が原因となって医療観察事件に流れそうな場合には、弁護士を付添人に選任して、対応してもらうのが望ましいです。
当事務所は、刑事事件に取り組んできた歴史的経緯があり、複数回無罪を獲得するなど、実績は豊富ですので、ご家族やご友人で精神障害者をお持ちの方が逮捕されてしまった場合には、ぜひ当事務所にご相談ください。
なお、刑事事件に限らず、当事務所では幅広い分野に対応していますので、何かお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。


弁護士 小河洋介

投稿者: 東京合同法律事務所

2023.07.04更新

 日本民主法律家協会(日民協)発行の『法と民主主義』(2023年7月号)の再審特集で、『西嶋克彦弁護団長、袴田事件を語る』のインタビュー記事が掲載されました。当事務所の泉澤章弁護士が特集の序文執筆とインタビューの聞き手を務めています。
 今年の3月13日に東京高裁が袴田巌さんの再審を認めるまで、弁護団がいかにして新証拠を積み上げて静岡地裁の開始決定を勝ち取ったのか、そして再審開始が確定した後の裁判の見通しなど、戦後5件目となる死刑再審無罪事件のリアルな経緯が語られています。
 日本の再審制度には、①捜査機関が持つ証拠が全面的に開示されない問題、②再審開始決定が出てもなお検察官が不服を申し立て、再審開始まで長い時間がかかるという問題など、人権救済規定としての大きな制度的欠陥があります。
 ぜひ皆さまも最新号の『法と民主主義』をご一読いただき、一緒に再審法改正の声を上げていただければと存じます。

【法と民主主義】(https://www.jdla.jp/houmin/index.html)2023年7月号(第580号)
【試し読み】特集にあたって(https://www.jdla.jp/houmin/backnumber/pdf/202307_01.pdf)
・・・泉澤弁護士執筆の序文がこちらから試し読み頂けます。

【日本民主法律家協会(日民協)】(https://www.jdla.jp/index.html)
・・・日民協は、平和と民主主義と人権、そして司法の民主化を追及する、法律家の団体です。

投稿者: 東京合同法律事務所

2023.04.28更新

 当事務所の泉澤章弁護士執筆の記事が4月17日付全国商工新聞に掲載されました。

 記事のタイトルは『視点 袴田事件から見る再審制度』。先月3月13日に東京高裁が出した再審開始の決定に対して、検察が最高裁に不服を申し立てるかどうかが注目されました。結果的に検察は特別抗告を断念しましたが、2014年に静岡地裁が袴田さんの再審開始を認めた際、検察が不服を申し立て、東京高裁で袴田さんは逆転敗訴し、最高裁が東京高裁の不当な決定を取り消して今回の再審開始決定がなされるまでに9年もの歳月が経ってしまいました。名張毒ぶどう酒事件のように再審開始決定が出たのにも関わらず請求人が亡くなってしまう例もあり、検察の不服申し立ては現行の再審制度の深刻な制度的欠陥となっています。

 また泉澤弁護士は、現行の再審制度には検察・警察が持っている証拠の開示制度がないことを指摘し、えん罪被害者にとって不可欠な証拠開示の制度の早期実現をうったえています。

【全国商工新聞とは】(https://www.zenshoren.or.jp/kiji)

 北海道から沖縄まで、全都道府県地域密着の約600の民主商工会でつくる全国商工団体連合会発行の新聞です。会員はさまざまな業種の事業主で、小規模な事業を営む事業主の方なら、業種にかかわりなくご入会いただけます。全国商工新聞は商売に役立つ情報やインボイス反対の運動など様々な情報を発信しています。

投稿者: 東京合同法律事務所

2021.07.14更新

 皆さんは、「精神障害者」というとどのような人々を思い浮かべるでしょうか。精神保健福祉法という法律では、「精神障害者」とは、「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者」と定義されており(同法5条)、法的には幅広く、知的障害のある人も発達障害のある人も認知症の人も「精神障害者」に含まれます。また、精神疾患の中でも、統合失調症やアルコール依存症など、その病状・対応が大きく異なる疾患も種々存在しています。
 このように、精神障害者といわれる方々は身近に存在するのですが、本コラムでは、精神障害者の方が罪を犯して捕まってしまった場合の起訴前の弁護活動について、特に注意を払う必要がある点を述べたいと思います。

1 そもそも精神障害であることに気づく
 精神障害者の方が逮捕されてしまった場合、弁護士は警察署に接見に行きます。言動が支離滅裂であったり、精神状態が不安定であることが一見して分かる場合には、気づきやすいのですが、そのようなケースはむしろ少数です。会話をしてみて一見して障害がないと思われる人についても、前回の接見時の内容をほとんど覚えていない、受け答えは問題なくできているが1つのことに固執する傾向が強い、簡単な言葉が理解できないといったことから障害に気づくことができたりもします。
 このように弁護人としては、漫然と会話をするのではなく、その人に合った適切なコミュニケーションをとることが求められ、精神障害に気づくということがまずは求められます。

2 責任能力に問題があるケース
 障害の程度が重く、責任能力に問題があると判断される場合には、その点が加味されれば不起訴に傾くケースも多いことから、弁護人としては精神鑑定を求めることになります。この場合、鑑定により身体拘束期間が長くなってしまう可能性もあるので、鑑定を求めることについて本人に十分に説明し納得を得る必要があります。

3 福祉機関との協働について
 釈放後の生活環境が調整されていることは、起訴猶予処分にすべき理由の1つになります。精神障害者の方の場合は、生活環境の調整にあたって、本人の有する精神障害に対する支援体制を具体的に整え、資料化していく必要があります。このような生活環境を整えるためには弁護士だけでは困難な場合が多く、社会福祉士や精神保健福祉士などの福祉専門職と協働して、更生支援計画という釈放後の本人の希望にかなった支援計画を作成する等の環境調整を進めることが望ましいです。

4 医療観察法対象事件で不起訴になる場合
 検察官は、殺人・放火・強盗・強制性交等・強制わいせつ・傷害にあたる行為をした者が、精神疾患が原因で不起訴になった場合、入院をさせて治療を行わせる必要があるとして、医療観察法当初審判申立をすることができます(医療観察法2条2項1号、33条1項)。この申立てがされると、2カ月の鑑定入院が実施され、強制入院による治療をする必要があるかどうかという点を裁判所で審理することになり、身体拘束期間が長期化してしまいます。
 弁護人としては、医療観察法による治療の必要性が明らかにないとして、検察官に対して主張することになります。実際、知的障害や認知症といった、一般的に強制入院による治療の効果が薄いとされるケースでも医療観察当初審判の申立てがなされることもあります。
 なお、医療観察審判では、弁護士は、付添人という形で手続きに関わることになりますが、この点については、後日別のコラムで述べたいと思います。

5 医療観察法非対象事件で不起訴になる場合
 医療観察法の対象でない事件でも、本人の病状によっては、検察官が通報し、措置入院がなされる可能性があります(精神保健福祉法24条)。措置入院となった場合には、入院先を選べず、自由に外出できないといった不利益が予想されます。
 弁護人としては、捜査段階で、本人が前向きに治療を受ける意思があること、任意入院先を確保すること等で、強制入院が不要であることを主張することになります。
 なお、措置入院になってしまった場合には、弁護士は、患者の代理人として、退院請求を申し立てたり、処遇改善を求めたりすることができますが、この点についても後日、別のコラムで述べたいと思います。

6 ご家族や支援者の皆さまへ
 このように、精神障害者の起訴前の刑事弁護活動は、留意すべき点が多くあるため、弁護人としては、その人の特性に合った活動をすることが求められます。精神障害者の方のご家族や友人は、私選で弁護人を選ぶ際には、上記のような適切な配慮をしてくれるような弁護士を選ぶ必要があります。
 私は、弁護士でも馴染みの薄い医療観察審判の付添人にも複数回選任されており、精神障害者の方の法的支援にも積極的に取り組んでおります。また、当事務所は、刑事事件に取り組んできた歴史的経緯があり、複数回無罪を獲得するなど、実績は豊富ですので、ご家族やご友人で精神障害者をお持ちの方が逮捕されてしまった場合には、ぜひ当事務所にご相談ください。
 なお、刑事事件に限らず、当事務所では幅広い分野に対応していますので、何かお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。

弁護士 小河洋介

 

【この記事には続編があります】続・精神障害のある方の刑事弁護活動

投稿者: 東京合同法律事務所

2021.01.07更新

当事務所の横山雅弁護士が今市事件について解説した寄稿文が『冤罪白書2020 Vol.2』で掲載されました。
昨年、全国で争われてきた冤罪裁判に取り組む弁護士がその概要や判決の問題点を網羅した内容で、事件の全体像が分かりやすくまとまっています。
横山弁護士執筆の部分は↓のPDFからお読み下さい。
【PDF】今市事件―冤罪白書2020 Vol.2―

【リンク】『冤罪白書2020』発売決定!!(https://santoshuppan.blogspot.com/2020/12/2020.html)
燦燈出版株式会社は2018年4月に設立した「冤罪白書」を発行している出版社です。『冤罪白書2020』では、2020年に再審無罪判決が確定した「湖東記念病院事件」を巻頭特集のトップに、再審事件だけでなく通常審で無罪が主張されている注目事件も取り上げ、創刊号「冤罪白書2019」をさらにアップデートした内容です。発行は2019年12月31日です。

冤罪白書2020

投稿者: 東京合同法律事務所

2020.10.24更新

先日お知らせしました今市事件シンポジウムが本日開催され、50人以上の参加者が集まり盛況のうちに閉会しました。当事務所の泉澤章弁護士がコーディーネーターを務め、横山雅弁護士が事件の概要と経過を報告しています。

シンポジウムの記録映像が↓のYOUTUBEよりご覧頂けます。

【YOUTUBEリンク】https://www.youtube.com/watch?v=tVLzrBFUAxE&feature=youtu.be

ぜひ多くの皆さまにご視聴頂き、今後とも今市事件をご支援頂ければと存じます。

 シンポジウム会場の様子

【関連記事】【10/24(土)】シンポジウム・今市事件は終わっていない 開催のお知らせ【えん罪事件】https://www.tokyo-godo.com/blog/2020/10/1024-755253.html

 

 

 

投稿者: 東京合同法律事務所

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