コラム

2026.02.13更新

東京合同法律事務所
弁護士 泉澤 章

 「冤罪被害者の救済を一刻も早く!」との掛け声のもと、昨年6月の通常国会終了間際に国会へ提出された再審法改正の超党派議連案は、2026年1月現在、まさに“風前の灯”の様相を呈してきている。
 超党派の名が示すとおり、ほぼすべての政党が参加した議連で了承された法案は、警察・検察が保持する証拠の全面開示と、再審開始決定に対する検察官異議申立ての禁止という2つの柱を中心とした、冤罪被害救済の法案の名にふさわしい内容を備えている。この議連案が成立し、これからの再審実務が変わることによって、わが国における冤罪被害の救済制度は格段に進展する。そう確信して、団員を含む多くの弁護士、日弁連や地方単位会、そして国民救援会をはじめとした市民団体は、この間、日本中で地方議会の意見書採択や首長への賛同要請、国会でのロビイング活動等に取り組んできた。その成果が、全国853自治体での意見書採択(2026年1月8日現在)であり、国会における超党派議連の設立であり、その議連による法案の策定であった。一昨年から昨年にかけての袴田事件や福井事件の再審無罪判決報道も追い風となり、2025年の通常国会では早々に議連案が国会に提出され、成立するのではないかとの期待も大いに高まっていた。
 しかし、再審法改正の機運が高まるとともに、当然のことながら、これに反対する法務検察当局による巻き返しも強くなってきた。そして、再審に対する世論の動向も見据え、法改正に対して消極的な姿勢をとることはマイナスとみた法務検察当局は、議連による法改正に先んじて、法制審議会による法改正を実現する方向へと舵を切ってきた。法務大臣の諮問機関である法制審にかけることによって、多数を占める法務検察・警察官僚や御用学者を軸に、結論先取りが実態であるにもかかわらず、いわば「民主的な討議」のかたちを作りあげる。そして、結局は法務検察に有利な答申をあげるという悪い流れに再審法改正も乗せられてゆく。このようなやり方は、これまでも刑事法制度の改悪の場面では経験してきたのであるが、今回異例なのは、議連案の成立に待ったをかけるためか、極めて短期間に複数回の審議会を実施し、答申をまとめあげるという方針をとっていることである。このままのスケジュールで進めば、この原稿が特別報告として発表されている頃には、法制審で答申が採択されている可能性が高い。
 法制審での議論は、予想されていたとおり、証拠開示に様々な限定を付し、検察官異議申立禁止に疑義を呈する多数派(法務検察、裁判官、御用学者)と、これらに反対する弁護士会選出の3人という構図が、最初からあらわになっている。このまま多数派の主張だけが答申となるか否かは現時点では判断できないが、極めて危険な情勢であることは間違いない。法務検察当局の法制審路線と対峙し、真に冤罪被害救済のための再審法改正を成立させるには、議連法案を先んじて成立させることこそが急務である。そのためには、提出時は与党内調整や維新の寝返りで足踏みはしたものの、何とか臨時国会で命脈をつないできた議連案を、今年の通常国会で成立させる必要がある。そのための国民運動をこれまで以上に強力に推し進めることこそが、今求められている。
 …という原稿を完成させた途端、「高市首相が1月通常国会冒頭での解散、2月総選挙を検討している」との報道が飛び込んできた。衆院が解散となれば、現在国会に提出されている議連案は廃案となってしまう。そうなると、次のたたかいは、閣法で提出される改正案を対象とした反対運動へと、質的転換を求められるかもしれない。もっとも、この間の再審法改正の運動の成果や再審事件の報道によって、冤罪救済を怠ってきた司法機関や現行制度に対する国民の見方は、かなり厳しいものになってきている。このことは国会だけでなく、法務検察当局も意識せざるを得ない状況にある。時代は確かに変わってきた。解散総選挙の有無にかかわらず、これからも冤罪被害の救済とそのための法改正が不可欠であることを国民世論に訴えかけ、国会を動かすために、あらゆる手段を尽くしてゆかねばならない。

(自由法曹団東京支部2026年特別報告集より)

投稿者: 東京合同法律事務所

2026.02.13更新

東京合同法律事務所
弁護士 泉澤 章

 「冤罪被害者の救済を一刻も早く!」との掛け声のもと、昨年6月の通常国会終了間際に国会へ提出された再審法改正の超党派議連案は、2026年1月現在、まさに“風前の灯”の様相を呈してきている。
 超党派の名が示すとおり、ほぼすべての政党が参加した議連で了承された法案は、警察・検察が保持する証拠の全面開示と、再審開始決定に対する検察官異議申立ての禁止という2つの柱を中心とした、冤罪被害救済の法案の名にふさわしい内容を備えている。この議連案が成立し、これからの再審実務が変わることによって、わが国における冤罪被害の救済制度は格段に進展する。そう確信して、団員を含む多くの弁護士、日弁連や地方単位会、そして国民救援会をはじめとした市民団体は、この間、日本中で地方議会の意見書採択や首長への賛同要請、国会でのロビイング活動等に取り組んできた。その成果が、全国853自治体での意見書採択(2026年1月8日現在)であり、国会における超党派議連の設立であり、その議連による法案の策定であった。一昨年から昨年にかけての袴田事件や福井事件の再審無罪判決報道も追い風となり、2025年の通常国会では早々に議連案が国会に提出され、成立するのではないかとの期待も大いに高まっていた。
 しかし、再審法改正の機運が高まるとともに、当然のことながら、これに反対する法務検察当局による巻き返しも強くなってきた。そして、再審に対する世論の動向も見据え、法改正に対して消極的な姿勢をとることはマイナスとみた法務検察当局は、議連による法改正に先んじて、法制審議会による法改正を実現する方向へと舵を切ってきた。法務大臣の諮問機関である法制審にかけることによって、多数を占める法務検察・警察官僚や御用学者を軸に、結論先取りが実態であるにもかかわらず、いわば「民主的な討議」のかたちを作りあげる。そして、結局は法務検察に有利な答申をあげるという悪い流れに再審法改正も乗せられてゆく。このようなやり方は、これまでも刑事法制度の改悪の場面では経験してきたのであるが、今回異例なのは、議連案の成立に待ったをかけるためか、極めて短期間に複数回の審議会を実施し、答申をまとめあげるという方針をとっていることである。このままのスケジュールで進めば、この原稿が特別報告として発表されている頃には、法制審で答申が採択されている可能性が高い。
 法制審での議論は、予想されていたとおり、証拠開示に様々な限定を付し、検察官異議申立禁止に疑義を呈する多数派(法務検察、裁判官、御用学者)と、これらに反対する弁護士会選出の3人という構図が、最初からあらわになっている。このまま多数派の主張だけが答申となるか否かは現時点では判断できないが、極めて危険な情勢であることは間違いない。法務検察当局の法制審路線と対峙し、真に冤罪被害救済のための再審法改正を成立させるには、議連法案を先んじて成立させることこそが急務である。そのためには、提出時は与党内調整や維新の寝返りで足踏みはしたものの、何とか臨時国会で命脈をつないできた議連案を、今年の通常国会で成立させる必要がある。そのための国民運動をこれまで以上に強力に推し進めることこそが、今求められている。
 …という原稿を完成させた途端、「高市首相が1月通常国会冒頭での解散、2月総選挙を検討している」との報道が飛び込んできた。衆院が解散となれば、現在国会に提出されている議連案は廃案となってしまう。そうなると、次のたたかいは、閣法で提出される改正案を対象とした反対運動へと、質的転換を求められるかもしれない。もっとも、この間の再審法改正の運動の成果や再審事件の報道によって、冤罪救済を怠ってきた司法機関や現行制度に対する国民の見方は、かなり厳しいものになってきている。このことは国会だけでなく、法務検察当局も意識せざるを得ない状況にある。時代は確かに変わってきた。解散総選挙の有無にかかわらず、これからも冤罪被害の救済とそのための法改正が不可欠であることを国民世論に訴えかけ、国会を動かすために、あらゆる手段を尽くしてゆかねばならない。

(自由法曹団東京支部2026年特別報告集より)

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