新型コロナウイルスに伴う労働問題

①はじめに

 新型コロナウイルスの拡大により、経済活動が大幅に停滞するとともに、児童、生徒の分散登校を余儀なくされるなど、いまだに、我々の社会、経済生活に重大な影響を生じさせています。
 2020年6月現在、緊急事態宣言は解除されていますが、新型コロナウイルス拡大の第2波、第3波がくることが予想されており、ワクチン等の開発まで早くても1年~1年6ヵ月はかかると言われていることを併せ考えると、今後、少なくとも、本年秋から来年にかけては、新型コロナウイルスと共存しながら経済活動を行っていく必要があり、今のうちから対応を準備しておく必要があろうと思われます。
 労働・人事問題でお困りの方、あるいは、今後の準備に不安がある方は、お一人で悩まれずに、是非、ご相談いただければと思います。

 この間、多くご相談をいただいている事例は次のようなものがございます。ここにあげた以外の事項に関してもご相談をお受けしていますので、お気軽にご来所ください。

1 解雇、雇い止めに関する問題
2 退職勧奨、内定取り消しに関する問題
3 賃金に関する問題
4 労働環境に関する問題(時差出勤、テレワーク等を含む)
5 休業に伴う問題
6 休暇に伴う問題

相談受付

・定例法律相談のご予約について・・・→こちらからご予約下さい。

・withコロナ社会でともに生きる皆さまへの連帯メッセージ・・・→こちらからお読み頂けます。

 

③Q&A
特にご相談の多い事例について、一般的な解説を掲載しました。

【労働者側からのご相談】

 1 解雇、雇い止めされたケース

Q1-1(正社員の場合)
 会社から、コロナの影響で売上げが激減し、経営が厳しくなったので、解雇すると告げられましたが、受け容れなくてはならないのでしょうか。

A1-1
 コロナを理由とすれば、簡単に解雇できるわけではなりません。コロナ問題による業績悪化を理由とする解雇を行う場合であっても、いわゆる整理解雇の4要件(要素)を満たす必要があると考えられます。

【整理解雇の4要件の法理】
ⅰ 人員削減の必要性
ⅱ 解雇回避努力を尽くしたこと
ⅲ 人選の合理性
ⅳ 説明、協議を尽くすなど、解雇手続が相当であること

 実際には、上記4要件(要素)を満たしていない整理解雇が多いものと考えられます。
 役員報酬を減額していなかったり、希望退職を募るなどの施策を講じていなかったり、活用しうる補助金、助成金の制度を利用していないまま、解雇に踏み切っている会社もあると思われます。退職に同意する書面などに署名する前に、弁護士に相談されることをおすすめします。

Q1-2(いわゆる非正規雇用の場合)
 会社から、コロナの影響で売上げが激減し、経営が厳しくなったので、解雇すると告げられましたが、受け容れなくてはならないのでしょうか。

A1-2
(1)雇止め(期間満了)の場合
 契約期間が定まった労働契約の契約期間満了時に、契約の更新を拒絶して雇用を打ち切ることを「雇止め」といいます。
 労働契約法19条は、一定の場合には、解雇の場合と同様に、雇止めに正当な理由(客観的合理的理由と社会通念上の相当性)が必要であることを規定しており、必ずしも、自由に雇止めを行えるわけではありません。
 過去に反復して更新されたものであって、雇止めをすることが期間の定めのない労働契約を締結している労働者を解雇することと社会通念上同視できると認められる場合、または労働者が更新を期待することについて合理性があると認められる場合には、正社員の解雇の場合と同様に、雇止めに正当な理由(客観的合理的理由と社会通念上の相当性)が必要とされますので、解雇が無効とされる余地があります。
 雇い止めにあったような場合には、早期に、弁護士等にご相談されることをおすすめします。
 また、5年を超えて労働契約を反復更新している場合には、いわゆる無期転換ルール(労働契約法18条)を用いて、雇止めを回避する方法もありますので、雇止めによる期間満了の前にご相談いただくとよいと思います。

(2)期間途中の解雇の場合
 契約期間の途中で契約を打ち切られる場合は、雇止めではなく、解雇となります。
 この場合の解雇は、いわゆる正社員の整理解雇と比較しても、約束した契約期間の途中で契約を打ち切ることになるので、より厳格に解雇が規制され「やむを得ない事情」が必要とされています(労働契約法17条1項)。有期契約であるため社会通念上の相当性から言えばむしろより高度な正当性が求められます。新型コロナウィルスの拡大により経営が悪化したからといって自由に雇止めを行えるわけではありません。

2 待遇格差に関するケース

Q2(正社員と非正規社員との間での待遇の差異)
 正社員には、時差出勤やテレワークが認められているのに、いわゆる非正規の私たちには認められていません。仕方がないのでしょうか。

A2
 旧労働契約法20条や旧短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)8条は、労働契約の期間に定めがあったり、労働時間が短時間であるいわゆる非正規雇用労働者について正社員との間で不合理な労働条件の相違を設けてはならないと定めています(大企業には2020年4月、中小企業には2021年4月より短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パート・有期法)8条・9条が適用され、不合理な待遇の相違が禁止されます)。
 正社員か非正規の社員かという違いだけで待遇を変えている場合には、不合理な取り扱いとして会社に改善を求めることができると思われます。

 

【中小企業経営者、個人事業主からのご相談】

Q1(業績悪化を理由とする解雇)
 コロナ問題の影響を受け、業績が著しく悪化しています。このままでは倒産することにならざるを得ないので、何とかそのような事態を回避すべく、人員の整理をしたいと考えていますが、どのように進めたらよいでしょうか。

A1
 コロナ問題による業績悪化を理由とするものであっても、簡単に整理解雇ができるわけではなりません。コロナ問題による業績悪化を理由とする解雇を行う場合であっても、いわゆる整理解雇の4要件(要素)を満たす必要があると考えられます。

【整理解雇の4要件の法理】
ⅰ 人員削減の必要性
ⅱ 解雇回避努力を尽くしたこと
ⅲ 人選の合理性
ⅳ 説明、協議を尽くすなど、解雇手続が相当であること

 役員報酬を削減したり、希望退職者を募ったりする施策を実施したか、その他、説明や協議を尽くしたと評価できるよう慎重に手続を進めることが必要となります。
 上記4要件を満たしていると評価されるため、どのような手続を経ていくか、十分な検討と丁寧な対応が求められると考えられます。

Q2 休業補償について
 今後、コロナウイルス拡大の第2波、第3波が来た際、従業員を休職させた場合、休業手当を支払わなければならないのでしょうか。支払う場合はどの程度支払えばよいのでしょうか。

A2
 使用者の判断によって休業する場合は、「使用者の責めに帰すべき事由による」休業として、法律上、最低6割の休業手当を支払う必要があると思われます。
 他方、厚生労働省は新型コロナウイルス感染症について雇用調整助成金の制度の要件を緩和し、使用者が支払った休業手当の一部の助成を受けることが容易となっています。
「不可抗力」によって休業したと認められる場合には、使用者の責めに帰すべき事由による休業とは言えないので、使用者には法律上、休業手当を支払う義務はないということになります。
 但し、単に「コロナウイルスのせい」というだけでは不可抗力による休業とは認められない可能性があります。厚生労働省もQ&Aにおいて、「例えば、海外の取引先が新型コロナウイルス感染症を受け事業を休止したことに伴う事業の休止である場合には、当該取引先への依存の程度、他の代替手段の可能性、事業休止からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があると考えられます。」と記載しています。

Q3 従業員の労働環境
 従業員を雇っている立場からは、コロナウイルス拡大の第2波、第3波に備えて、何か対応をする必要があるのでしょうか。

A3
 雇用主としては、従業員が安全に業務に従事できるようその安全に配慮する義務がありますので、労働環境を整えるように対応する必要があると思われます。
 但し、感染リスクをゼロにすることは不可能と思われますし、雇用主の能力を超えることだと思われます。どのような対策が妥当かは、業態や規模等によっても異なってくると思われますので、弁護士等専門家に相談しながら対応を進められることをおすすめします。

(東京合同法律事務所)

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