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2018.07.06更新

「できることがあるのか?」

 当事務所で扱った事件についてご紹介します。
 債権者申立による破産手続き中、民事再生への変更が認められ、再生計画の認可に至った、という画期的かつ非常にまれなケースです。

 その会社(A社)は、貸金返還訴訟、仮差押え、会社分割無効訴訟を提起され、弁護士を依頼して防戦していたものの、債権者から破産まで申し立てられ、そこでも劣勢な状態。果たして今からできることがあるのか?と悩みましたが「どうせ破産なら先生方にお願いして納得して終えたい」という社長からのお言葉に一同奮い立ち、受任に至りました。

「旧経営陣の陰謀?」

 この一連の貸金返還請求や破産申立の背後には、この会社の元社長の影が色濃く存在していると思われました。本来A社は取引先のしっかりした利益率の高い会社ですが、旧経営陣時代の不透明な会計処理の結果、多額の負債にあえいでいました。旧経営陣から新経営陣へ交代がなされ、それらの負債を返済しながら会社を建て直していこうとしていた矢先、当の負債を作った元社長につながる債権者から破産を申し立てられたのです。

 この争いの本質は、不透明な会計処理のためにA社を追われた元社長が、何の反省もなく、自らの経営時代に負ったA社の巨額債務を根拠に、債権者を巻き込んで新経営陣に対し理不尽な破産をしかけてきたもの。
 これからA社を健全な会社にして行きたいという新経営陣の真面目で誠実な姿勢に感銘を受け、正義はこちらにある、という確信のもと、何とか会社を存続させ、この方々に取り戻したい、との思いで始まった本件ですが、A社の内外事情を知り尽くし資料も豊富な旧経営陣からの矢継ぎ早な攻撃に、苦しい闘いを余儀なくされました。

「万事休す?」

 我々は攻防を尽くしましたが、受任から2か月ほどで破産決定が出されてしまい、すぐに抗告。抗告審では、こちらの主張が相当程度認められ、元社長の主張する債務の成否や破産申立の意図につき問題が指摘されたものの、結論では破産を認めるものでした。最高裁まで争いましたが、結果は変わらず、破産手続きが進められることになりました。

 まさに万事休す。ただ、新経営陣も私たちも、このような理不尽な結果をこのままにしてはおけません。一か八か、破産手続きから民事再生手続きへの変更を申し立てたのです。
 民事再生手続きが開始されるには、債権者の過半数の了承を取り付けて再生計画が認可される見通しが必要です。そもそも大口債権者から破産を申し立てられ破産決定がなされている状態で、債権者の多数が民事再生に賛成することは考えられず、破産から民事再生に移行することは非常にまれです。しかも、本件では、破産申立の段階で元社長が関与する大口債権者と激しく対立していたことから、民事再生の開始決定を得ることはほぼ不可能に思われました。

「時機に適い人に恵まれる」

 しかし、破産決定後も新経営陣に共感いただいた多くの取引先とは取引が継続され、破産財団に利益を計上し続けた実績があり、民事再生による建て直しが十分に可能であると実証できていたことや、こちらに有利な認定を得た破産の抗告審の事実認定を最大限に活用し、旧経営陣の問題点や新経営陣の信頼性をアピールできる時間的余裕にも恵まれ、裁判所を始めとする関係諸機関にも、本件の本質を正しく理解いただいた結果、裁判所から管理型(管財人が会社を管理)民事再生手続きを開始する旨の決定を得ることができました。
 そして、管財人団のもと、最終的には議決権数の90パーセント以上が賛成するという圧倒的な大差で、破産決定から2年弱の時を経て、民事再生計画が認可されました。
 配当(弁済)実施後、再生手続が終結され、ついにA社は何の制約もない普通の会社に戻ることができました。破産決定が出されてから、実に2年の長い闘いでした。このようなケースは、案件を多数扱う東京地裁でも例がないとのことです。

 ここまでの道のりは、優勢と劣勢、攻撃と守備が目まぐるしく入れ替わるたいへんスリリングなものでした。何度ももうダメかと思いましたが、その都度、時機に適い人に恵まれ、良い方向を選択し続けて来た結果、大成功を収めたのだと思います。
 今、A社は新経営陣のもと、新たな一歩を踏み出すことになりました。たいへんな事件でしたが、結果として、旧経営陣の残した過去の負債を一気に清算し、分散していた株式も1つにまとまり、素晴らしい会社に生まれ変わりました。
 ここまで来られたのも、私どもと新経営陣が心を一つにして粘り強く闘い抜いたからと喜んでいます。この貴重な経験を活かし、今後も苦境に立つ多くの会社のお役に立ちたいと思います(担当弁護士は、加納、泉澤、鈴木、洪、上原、市橋の6名です。)。

弁護士 加納小百合

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投稿者: 東京合同法律事務所

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