東京都知事 青 島 幸 男 殿
(仮称)汐留A街区、B街区、
C街区開発事業の
環境影響評価書案に対する意見書
1999年1月29日
汐留駅跡地の民主的利用を求める会
幹 事 前 川 雄 司
東京都港区赤坂2ー2ー21 永田町法曹ビル2階
東京合同法律事務所内(℡03-3586-3651)
1 大気汚染-環境基準を達成できない以上、事業計画実行は許されない-
環境影響評価書案の24ページに、自動車交通量の現状が次のように書かれている。
一般国道15号(第一京浜) 約4万~6万5000台/日
海岸通り 約4万3000~7万4000台/日
昭和通り 約5万6000~6万6000台/日
こんなに多くの自動車が1日に通るのだから、排気ガスで大気が汚染されても不思議はない。
この周辺の3地点で平成8年度の測定によると、
一酸化炭素濃度は環境基準を達成しているとのことであるが、
二酸化窒素濃度はいずれも環境基準を達成していないとのことである。
そして、この評価書案によると、この事業が実行されると二酸化窒素濃度はさらに悪くなり、
工事用車両で最大0.9%増加、建設機械で最大約20.4%増加するという。また、
工事完成後も交通量の増加や地下駐車場からの排出ガスの増加により、やはり悪化するというのである。
評価書案は、建設機械の効率的な稼働、排出ガス対策型建設機械の採用、
アイドリング防止等により大気質への影響の低減を図るとしているが、
これで環境基準が達成できるとはどこにも書いていない。周辺の住民や勤労者、通行者の健康被害を考えると、
環境基準を達成できない以上、この事業計画を実行することは許されないと言うべきである。
なお、予測の基礎となる自動車の台数や建設機械の台数の設定根拠が明らかでないので、
それが少なすぎる設定になっているのではないかとの疑問がある。その点を、
普通の住民が判断できるような根拠を明らかにすべきであり、それがなされない以上、
手続きを進行させるべきではない。
2 騒音-予測の根拠が明らかでないので、手続きを進行させるべきではない-
これも、予測の基礎となる自動車の台数や建設機械の台数の設定根拠が明らかでないので、
それが少なすぎる設定になっているのではないかとの疑問がある。その点を、
普通の住民が判断できるような根拠を明らかにすべきであり、それがなされない以上、
手続きを進行させるべきではない。
3 振動-予測の根拠が明らかでないので、手続きを進行させるべきではない-
これも、予測の基礎となる自動車の台数や建設機械の台数の設定根拠が明らかでないので、
それが少なすぎる設定になっているのではないかとの疑問がある。その点を、
普通の住民が判断できるような根拠を明らかにすべきであり、それがなされない以上、
手続きを進行させるべきではない。
4 地盤沈下・地形・地質
-予測の根拠が明らかでないので、手続きを進行させるべきではない-
この地区内で、地盤の液状化の跡が発見されている。もともとここは埋立地であって、
地盤が良くない所である。そこに地上50階、地上43階、
地上41階という超高層ビルを3本も林立させるというのが今回の事業計画である。
そもそもこの地区のような地盤の所に、
このような超高層ビルを3本も林立させた例があるのかを明らかにすべきである。もし、
それがなければ類似の例を複数集めて、その検討をすべきである。
評価書案は、地下水位の低下が局所的に生じると予測しながら、それが回復するという。しかし、
その根拠は明らかでない。
その根拠を検証するには、類似の例の検討が不可欠である。
5 電波障害-対策にどの位の費用と時間がかかるのかを明らかにすべき-
その影響はきわめて広範囲に及ぶ。
その影響を解消するための適切な対策をとるのにどの位の費用と時間がかかるのか。そして、
その費用と時間は誰が負担するのか。そのことを抜きにして影響を解消できると言ってもあまり意味がない。
6 風害-類似の例を収集して検証すべき-
風洞実験の正確さを検証するためには、やはり類似の例を収集すべきである。
風洞実験の結果と実際に建築した後の計測結果を対比してみなければ、
住民が風洞実験の正確性を判断することはできない。
7 景観
作成した全ての合成写真を公開すべきである。
今回の事業は、オープンスペースが極めて少なく、しかも超高層であるので、
その圧迫感や景観破壊は著しい。人々の日常の生活や勤労の場からの合成写真を多数公開し、
住民の意見を聞くべきである。
8 史跡・文化財
汐留駅跡地は「汽笛一声、新橋を」と鉄道唱歌に歌われた旧新橋駅があったところで、
わが国の鉄道発祥の地として交通・産業・文化史上きわめて重要な場所である。
また、ここは江戸初期より幕末に至るまで仙台藩松平(伊達)家の上屋敷、播磨竜野藩脇坂家の上屋敷、
会津藩松平(保科)家の中屋敷があったところであり、調査により屋敷の基礎や瓦、
玉川上水系統の上水道の末端部分、陶器、磁器など大量の遺構、遺物が出土した。
さらに、ここは黒船来航のおりこれに備えた江川太郎左衛門の大砲習練場があったところであり、
都指定の旧跡「江川氏調練場跡」となっている。
いま、江戸・東京学が盛んであるが、江戸時代や明治時代といえども考古学の対象となってきている。
文書ではわからない、さまざまな情報を埋蔵文化財が教えてくれるからである。
武家屋敷の構造、土木技術、人々の生活、産業や流通、水道技術など、まだわかっていないことも多く、
また、明治維新・文明開化のシンボルであった鉄道開業についても、
鉄道創設の起点の正確な位置は謎とされてきたし、
なぜ汐留の地が始発駅として選ばれたのかすら諸説があって定まっていない。
ことほどさように、当時の交通、産業、文化、技術、生活の歴史を解き明かすうえで、
汐留の遺跡はきわめて貴重なものである。
また、わが国の鉄道発祥の遺跡は、日本全国を探しても、ここ一か所しかなく、
明治の旧新橋駅から現代の新幹線まで一望のもとに見わたすことのできる場所もここしかない。
江戸時代の武家屋敷跡についても江戸初期から幕末にいたるまで屋敷がえがなかったのは珍しく、
明治以降は駅用地であったため保存状態も良好とみられる。
このように、汐留の遺跡は歴史的文化財としてきわめて高い価値をもったものであり、
国民の共有財産として、また、歴史研究・歴史学習の素材として現状のまま保存することが求められている。
また、往時の駅舎や屋敷を復元し、鉄道の資料や江戸期の資料、調査で収集された遺物などを保存するなど、
歴史的・文化的な空間として整備し、経済効率一辺倒の殺伐とした都心のオアシスとして、
人々の憩いの場として活用することが求められているのである。
遺跡は一度破壊したら二度と復元することはできない。
先祖たちが地下に残した歴史的文化遺産を未来の世代に伝えることは今を生きる私たちのひとつの責務であろう。
以上のような観点からすると、指定文化財を保存すれば足りるという考え方は誤りである。
埋蔵文化財全体について全面的な学術調査を実施し、その調査を広く国民に公開し、国民の参加を保障して、
調査自体が国民の歴史研究・歴史学習の場となるようにすべきである。その調査をふまえて、遺跡の歴史的・
文化的価値について広く国民的な研究・討議を行い、保存計画を立案する。シンポジウムや公聴会を実施し、
広く国民の意見表明の機会を保障し、国民的な合意形成の場とする。
以上の保存計画をふまえて事業計画を練り直すべきである。
以上
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